再確認
圭君視点です。
朝、6時に目覚ましの音で目が覚めた。
体を起こし、少し伸びをして、昨日の事を思い出す。
大丈夫、僕はハルさんを忘れたりなんてしていない。
ベランダの戸はまだ開けなくていい。
ハルさんはお昼頃に来てくれるって言ってたから。
身支度を整えて、簡単な朝御飯を作って食べた。
昼御飯はハルさんも来てくれるし、キャベツをたくさん使おう。
今から作っておこうかな……
そういえば土地神様……
ハルさんに繋がる事だからだろうけど、僕は土地神様の事も忘れていた。
ちゃんと挨拶に行っておきたいな。
昼御飯用にキャベツを丸ごと使ったトマトのスープを煮込んでおき、勉強を始める。
昨日あんなに色んな事があったのに普通に勉強出来るって、ちょっとおかしいのかも知れない。
でも、感じていた違和感が全て解決した事で、頭もスッキリしていて、落ち着いて勉強が出来た。
かなりの時間が経って、もうそろそろお昼になる。
ベランダの戸を開けておこう。
昼御飯を温め直していると、白く美しい鳥が1羽、ベランダから部屋に入ってきた。
前に来てくれていたのはそんなに前でもないのに、凄く懐かしい感じがした。
鳥は少し光ってから人の姿となり、
「おはようございます。お邪魔しますね」
と、僕に笑いかけながら挨拶をしてくれた。
「ハルさん! あぁ……ハルさんだ」
「け、圭君?」
「あ、すみません……来てくれるって分かってたんですけど、やっぱり嬉しくて……」
その笑顔を見れた事で、何か感極まって少し涙が出てしまった。
「その……ちゃんと言えてませんでしたが、本当にご迷惑をお掛けして、申し訳ございませんでした」
「いえ……今があるので、大丈夫です。でも、もう絶対に記憶を消したりとかはしないで下さい。それと、ハルさんは結構頑固みたいなので、もう少し僕の話も聞いて下さいね」
「は、はい…」
「あと、困ってる事とか何かあれば、すぐに相談して下さい。解決できるかは分かりませんが、ハルさんが何を悩んでいるのかをちゃんと知りたいです」
「はい」
「それから……」
「圭君、一旦落ち着いて下さい。私はここにちゃんといますから」
「あ、すみません……」
ハルさんに色々言ってまった……
鬱陶しい男だとか、思われてないかな……?
「昨日の圭君はあんなに冷静だったのに……」
「本当にすみません……」
やっぱり思われた……
付き合い始めてすぐに、こんなに色々言われたら嫌だよな……と、僕が反省していると、
「ふふっ」
と、ハルさんは楽しそうに笑った。
「あの、ハルさん?」
「昨日の圭君があまりにも冷静でしたので、少し心配だったんです。圭君は物事を受け入れるのが早すぎますからね」
「えっと……」
「本当は嫌なのに、無理に受け入れてくれてたりしないかとか、言いたい事が本当はあったのに、私のせいで言えなくなってしまっていないかとか……結構心配してたんですよ?」
物事を受け入れるのが早すぎるっていうのは、前にも言われた事がある。
それをハルさんは心配してくれていたのか……
「昨日は驚きの連続でしたからね。驚き過ぎて、逆に冷静になれていたんだと思います」
「そうなんですね、本当に良かったです。圭君はちゃんと言いたい事を言ってくれる人ですもんね」
「もちろんです。だから、ハルさんもちゃんと言って下さいね」
「はい、ありがとうございます」
良かった。
ハルさんに引かれた訳じゃなかったみたいだ。
「じゃあ、御飯にしましょうか」
「はい! 圭君の御飯、何だかとても久しぶりな気がしますね」
「そうですね。僕もです」
キャベツのサラダにキャベツを丸ごと使ったトマトスープ、結構じっくり煮込んだし、美味しく出来ているだろう。
キャベツをたくさん送ってくれた、母さん達に感謝だ。
「おぉ~! 本当に凄く美味しいです! ありがとうございます!」
「良かったです、本当に……」
僕の料理を美味しそうに食べてくれるハルさん……
またこの姿が見られるなんて……
「昨日は私が泣きすぎてしまいましたからね。今日は圭君の番ですね」
「……そうですね」
また涙が出てきてしまって恥ずかしい……
こんな恥ずかしいところはあまり見られたくないし、何か話題を変えて……
「あ、あの、土地神様はお元気ですか?」
「え? あぁ、そうですね。ちゃんと挨拶に行きましょうか。私と圭君がお、お……お付き合いを始めたって……」
「そうですね」
ハルさんは顔を真っ赤にしながらそう言ってくれた。
可愛い……この様子は何度見ても飽きないな……
「きょ、今日、これから会いに行きますか?」
「土地神様のご迷惑にならないなら、是非」
「大丈夫だと思いますよ。私もちゃんと謝罪とお礼を言いにいきたいので、丁度いいですね」
「謝罪?」
「色々と、ご迷惑おかけしてしまいましたからね」
土地神様は僕の気持ちに気付いて下さっていて、何度も悩みを聞いてくれていた。
それならきっと、ハルさんの気持ちにも気付いていて、何か言ってくれたりしていたんだろう。
本当僕はずっと支えてもらっていた。
土地神様への感謝を込めて、いつもよりいい焼きトウモロコシを作ろう!
これは気合いを入れて作らないといけないな。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




