連絡
圭君視点です。
ハルさんの家にお邪魔したのは、ハルさんが倒れてしまうからって話だったけど、結局は倒れずに終わった。
ハルさんが目を覚ますまでお邪魔しているつもりで、色々持って来たものは、必要なくなってしまったな。
「あの、ハルさん?」
「は、はいっ! 何ですか?」
僕が声をかけると、かなり動揺しながら返事をしてくれた。
さっきやきもちやいてくれた嬉しさのあまり、抱きしめてしまったのが、まだ影響しているんだろう。
本当に可愛いな……
「圭君?」
「あ、はい。あの、すみません。僕、これからどうしましょうか?」
「あー、そうですね……」
ハルさんとこれからどうしようかを悩んでいると、
♪♪♪♪♪
と、ハルさんの持っている携帯がなった。
「ちょっと失礼しますね」
「はい」
ハルさんは僕に一声かけてくれてから、電話に出た。
多分会社の世界からの電話なんだろうけど、異世界同士なのにあんな普通の電話みたいな感じで連絡が来るもんなんだな。
「はーい、どうしました? ……え? あぁ……今からですか? 分かりました。はい、はい……では」
なんか、今からとか聞こえたけど……
「あの、圭君……ちょっと会社の世界にもう一度行かないといけなくなりました」
「何かあったんですか? 大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。でも、ごめんなさい。帰りは明日になると思うので……」
「あ、じゃあ僕、帰りますね」
「はい。また明日、お昼くらいに圭君の家にお邪魔します」
「はい。お昼ご飯を作って、お待ちしてますね」
「ありがとうございます」
ハルさんに挨拶をして、帰ることになった……
かなり残念ではあるけど、ハルさんの仕事の用事なら仕方ない。
ハルさんの家を後にして、夜の道を歩いて帰る。
今日は本当に色んな事があったな……
ミオさんが夢に出てきて応援してくれて、母さんも僕の手紙の違和感に気づいて応援してくれた。
それに、熊谷さんも僕を応援してくれていた事が分かった。
僕は本当にたくさんの人に助けてもらっていたんだ。
今のこの幸せがあるのは、僕を助けて、応援してくれた皆のお陰だ。
そういえば、ミオさんや熊谷さんにはちゃんとお礼を言えたけど、母さんには何にも言えてない……
心配してくれてるかもしれないし、ちゃんと解決したんだって事を伝えておいた方がいいよな。
この時間、かけても大丈夫かな?
でも、朝の電話のお礼もちゃんと言いたいし……
時間も遅いし、迷惑かとも思いつつ、実家に電話をかけてみた。
♪♪♪♪♪
呼び出し音が鳴ってるけど、出ないな……
やっぱり忙しいのか? と、思っていると、
「圭? どうしたの?」
と、母さんが出てくれた。
「あ、母さん? ごめん、忙しい時に……今大丈夫?」
「珍しいわね、圭から電話なんて。朝の事、解決したの?」
「うん。だからちゃんとお礼を言っておきたくて……母さん、本当にありがとう」
「忘れていた大切な事は、ちゃんと思い出せたのね?」
「思い出せたよ。絶対に忘れたくなんてない、僕の大切な人の事を……」
人の事を忘れていたなんて、意味の分からない事を自分が言っているのは分かってる。
だから何か言われるかと思ったけど、母さんは、
「そう。それなら良かったわ。それで? その大切な人はいつ紹介してくれるのかしら?」
と、人を忘れていたという事に対しては何も言わず、ハルさんを紹介して欲しいと言い始めた。
お礼の電話のはずだったのに、違う話になってしまっている。
そんな事を言われるとは思ってなかったので、反応に困る……
「え、えっと……」
「前にも手紙に書いたけど、もうバイトも辞めて今は時間もあるんでしょ? なら一度帰って来なさいよ。珠鈴も圭が帰ってくるの楽しみにしてるのよ」
「あ、うん。とりあえず試験終わったら一度帰るよ。でも、その……紹介とかは……」
「まあ、それは無理にとは言わないわ。その子にも都合があるだろうし。でも、圭の大切な人ならちゃんと紹介して欲しいの」
「うん、分かった。一応聞いてみるよ」
「ええ、そうして。あっそろそろごめんね。じゃあ、試験頑張ってね」
「うん、ありがとう」
母さんは忙しそうに電話を切った。
忙しい時に連絡してしまって悪かったとは思いつつも、ちゃんとお礼が言えてよかった。
でも、紹介して欲しいか……
正式に恋人になれたんだし、僕だってもちろん家族にハルさんの事を紹介したい。
でも、ハルさんは普通の人とは違う存在なんだ。
そんな、家族に紹介なんて事をしてもいいんだろうか?
ハルさんは、僕の家族に会って欲しいと言ったら、どんな反応をするんだろう?
一緒に挨拶に来てくれるって、言ってくれるかな……?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




