やきもち
ハルさん視点です。
ミオの笑い声と、圭君の大きな声が聞こえます……
2人で何かを楽しそうに話しているみたいですね。
「ただいまですー」
「あ、ハルさん! おかえりなさい」
「おかえりなさい、ハル姉さん」
私が帰って来たことに気付いてくれた2人は、笑顔で迎えてくれました。
さっきは何の話をしていたんでしょうか?
ミオはとても楽しそうに笑っていたみたいですし、圭君が大きな声を出すなんて、珍しい気がしますが……
でも聞くのも変ですよね?
30分もあったんですから、色んな話をしてますよね……
あ、時間の件はミオに確認しておかないと……
「ミオ、送ってもらった上に30分なんて……本当によかったんですか? お返ししますよ」
「問題ありません。ハル姉さん達の付き合い記念のお祝い金だと思っておいて下さいね」
「えっと……ありがとうございます」
こういう事がさらっと言えてしまうのが、ミオの凄いところですよね。
10日を30分にしてもらったというのに、私にお返しをさせる気は全くないみたいです。
「では、私はそろそろ失礼しますね。ハル姉さんの無事も確認できましたから。次からは、もう少しマシな連絡をして下さいよ。あと、無理をしないこと!」
「はい、本当にありがとうございました」
「ありがとうございました、ミオさん」
「いえいえ。これからも、お二人で楽しく過ごして下さいね」
ミオは圭君に笑いかけています。
圭君とミオは、本当にとても仲がいいように見えますね。
仲がいいのはいい事の筈なのに、何故か少し胸が苦しいです……
何でしょうか? この感情は……
ミオはまた空間を歪めています。
忙しい中変な連絡で呼び出してしまって、本当に申し訳なかったです。
今度何かで埋め合わせをしましょう。
「ところでハル姉さん。さっきの事ですが……」
私がそんな事を考えていると、ミオは私の方へ近づいてきて、
「そういう感情は"やきもち"って言うんですよ」
と、私の耳元で教えてくれました。
「ではでは〜」
私にそれだけ言うと、ミオは帰っていきました。
これは……ミオは心を読んでいたみたいですね。
だから、さっきの私の疑問を解決してくれたんでしょう。
やきもち……やきもちですか……
「ハルさん?」
「え?」
「大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
ちょっと悩んでいたら、圭君に心配されてしまいました。
こういう優しい圭君を見れると、本当に思い出してもらえた事を嬉しく思いますね。
「あの、さっきミオさんが、30分経ったからハルさんが帰ってくるって言ってたんですが、こんなにピッタリで帰って来れるものなんですか? ハルさん、無理してませんか?」
ミオはそんな事も言っていたんですね。
これはちゃんと説明しないといけませんね。
圭君に世界ごとで時間の流れが違うことを説明すると、圭君はかなり驚いて、深刻な顔をしてしまいました。
「圭君? どうしました?」
「あ、いえ……会社への報告って、10日もかかるんだなと思いまして……大変ですね」
「本当ならもっとかかってましたよ。ですが今回はミオが先に話を通してくれていたみたいで、大分スムーズに終わることが出来ました」
「そうなんですね」
「ただ、各部所に報告に行く度に、その……か、彼氏ができたのかーと、茶化されて……」
本当に大変でした。
ミオには感謝していますが、ああいう人をからかったりするところは、直して欲しいものですね。
「あの、ハルさん。ミオさんってどういう人なんですか?」
「えっ? う~ん、どういう……すごく優しい良い子ですよ。いつも皆の事ばかり考えて、誰より1番仕事してますし……」
「そうなんですか」
「会社で言えば、営業成績No.1って感じです」
「すごいですね」
「はい。凄い子ですよ」
何でしょう?
圭君はやけにミオの事を気にしているような気がしますね……
「そういえば、ハル姉さんって呼んでましたけど?」
「あの姉さんっていうのは、先輩ってくらいの意味です。でも私もミオのことは、後輩っていうよりは妹だと思ってますけどね」
私達は世界は違えど、同じ仕事をする同士ですからね。
その関係は家族にも近いものがあります。
「あと、あの世界がぐにゃってなって移動してるのは、違う世界へ行ってるんですか?」
「そうです。ちなみに私には使えない力です」
「あ、だから送るんでってミオさんが言ってたんですね」
「そうですね……」
「ハルさんとミオさんでは、使える力も違うんですね」
「うーんと、ミオには使えない力なんて多分無いですよ。凄い子ですからね。私に出来ることはミオは全部できます。ミオに出来る事は私に出来ない事の方が多いですが……」
「あ、そうなんですね。色んな力があるんですね」
「ミオは力も誰より強いですし、コントロールも上手いので、とっても頼りになる優しい子ですよ……」
本当にミオの事ばかりですね……
何か……
「あの? ハルさん?」
「……はい、なんですか?」
「いえ、どことなく機嫌が悪そうだなと思って……」
「……そんなこと無いですよ」
「いえ、そんなことあります。なにか思ってることがあるなら教えて頂けませんか?」
「…………」
「ハルさん?」
やっと私の事を考えてくれたみたいです……
この感情……これが……
「……やきもちっていうそうです」
「え?」
「さっきミオが言ってました。圭君とミオが仲良く話してたり、圭君がミオの事ばかり知りたがったりした時に、私があまり嬉しいと思えないのは、やきもちだそうなので……」
「ハルさん!」
「はい?」
「すごい可愛いですねっ!」
「わわっ!」
圭急に圭君に抱き締められてしまいました。
「あ、あの……?」
「やきもちをやいて頂き、ありがとうございます」
「え、え~っと……」
まぁ、なんというか、暖かいですね。
外は寒いですし、もう少しだけこのままでいてもらいしょうか。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




