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この世界はゲームなのだろうか?  作者: 油人間
0章 はじまりのはじまり
2/17

現実?ゲーム?

少し走って、体力の限界がきて速度が落ちてくる。

そうしているうちにまたあいつが「ブーン」と冷酷な音を鳴らして近づいてくる。


それを繰り返しているうちにどこか体がおかしくなっていることに気づいた。

なんだ?走り過ぎたのか。ーーそうだよな。ずっと引きこもっていた僕が急にこんな動けるわけないよな


そう諦めるような気持ちがなだれ込んでくるが、このままではいけないと本能がうったえかけてくる。

とにかく思考をよい方向に転換しないと、そう考えて自分を奮い立たたせるために考え始める。

こんな意味の分からないところで死んでたまるか。僕にはまだやるべきことが……あれ?


物語の登場人物のような、どこか中二病じみた発言をしながら気づいてしまった。

なんでこんな必死になって生きているんだ?もういいんじゃないか?だって……


覆い隠すことに失敗したネガティブな思いが一つ浮き出してくると、止まらず、とめどなくあふれだし始めた。


そんな思考をしていると心と連動するように体が思い通りに動かなくなり、世界がグルグル回転し始めた。

そんな状態で走ると当然のごとくこけた。

体が命令を聞かないため起き上がることことができず倒れ込んでいると、あの死神が近づいてくる音がする。


死が急速に迫ってきたからか、逆に頭は冷や水をかけられたように冷静になった。


なんだ?毒なのか?確かに蜂のような見た目をしているし、体験する感じ麻痺毒か……あははっ。

乾いた笑いがこぼれだす。毒の影響で回らない頭でもわかる。


ーー詰んだな。


◆ ◆ ◆

こうして現在に戻ってきた。


いや、戻ってきてしまったというべきか。


もう蜂が目の前に迫ってきて、どうしようもない。


そんな時、カツッ、カツッと硬い地面を歩く音が複数聞こえた気がした。


違う、これは幻聴じゃない

そこまで理解すると反射でこういった。


「ーー助けてーー」

痺れる舌を動かし、軋む肺で空気を送り出しながらできる限り大声で言ったつもりだ。


その声が届いたのだろうか。

カツッ、カツッという音の中でカッ、カッと走り出す音が聞こえた。

そして蜂の後ろに影が現れ、切り裂いてくれた。

それを見届けると、とっくに限界を迎えていた僕は、スッと本日二回目の失神を味わった。


◆ ◆ ◆


「ーーッてください。マスター起きてください。」


僕は初めて機会音声にご主人様扱いされて起きる経験をした。


「おはようございますマスター。私はあなたのサポーターをつとめさせていただく者です。まあ、ものではないんですけどね。」


妙に人間味あふれる変なやつだ。

というかこの状況はなんなんだ。こんなわけのわからない自己紹介を唐突に聞かされてどうしろと?

もっと説明が欲しい。


「かしこまりました。

改めて自己紹介させていただきます。私はAI25です。本製品をご購入なさったお客様をサポートさせていただく人工知能でございます。そして……」


待て、なぜ自然と僕の思考を読み取って返答しているんだ?


「それはマスターがかぶっているヘッドセットから脳の電気信号を読み取っているからです。」


ヘッドセットをかぶっている。ということはこの場所はゲームの中?


「ふざけるな!」

思わず声が出たが、もう抑えられない。あの手を貫かれる感覚や、死が目の前に迫ってくる感覚が噓?そんなわけないだろ!!……まあいいそれならこの危険地帯から逃げることができる。ログアウトさせてくれ。


「申し訳ございません。現在ログアウトできません。」


は?なんで


「マスターがこのゲームにログインしたときに脳を調節させていただきました。

ほら、最初意識が覚醒したとき調子がおかしかったでしょう?

あれはこのゲームは「幻子」を中心にあらゆることが現実と異なっているため、その差を埋めさせていただくために脳を少しいじる必要があったのです。

そうすることによってゲームにリアリティを持たせより楽しむ……予定だったのですが、人によってその影響度が異なっていたようです。

マスターはこの改変の影響を大きく受けていたため調子が異常なほどおかしくなり、現実感が高まり過ぎたのです。

本来はあれほど現実感が高めるものではなかったのですが、今はマスターが体験した通りです。

それがログアウトできない理由につながってくるのですが、

まずログアウトするということはこのゲームから消えること言い換えれば「体の機能をすべて失ってさらに体を消し去る」ということです。

つまり「死」とほぼ同じなのです。

現実感が異様に高まった今では体がなくなることが本当であると脳が勘違いして生きるために必要なことをやめてしまうのです。

例えば心臓が血液循環をやめてしまうといえばわかりやすいかもしれませんね。


馬鹿なこと言うなよ……。え?体の機能を失えば死ぬということはもしかして


「はい、ご想像通りこのゲーム内で死ねば現実でも死ぬということです。」


こいつの言っていることがわからないし、わかりたくもない。

こんなゲームや本で起こるようなことが現実で起こるのか?

待て、焦るなそもそも脳が勘違いして死ぬってなんだでまかせじゃないのか?

そんなバカげた現象あるはずがない。


「いえ、ブレイン・ロック現象というものがあり。実際に死刑囚で行われた実験では出血していると勘違いさせられただけの被験者が……」


うるさい!!とりあえずログアウトの方法を教えろ!!こんな死と隣り合わせ合わせの世界で生きていく?無理だあんな化け物がいるところだぞ?だいたい「かもしれない」だろ?

僕は可能性があるならそっちにかける。


「かもしれないといったのは前例がないからです。今の状況ではほぼ間違いなくマスターは……」


そんなことは聞いていないだよ!!早くログアウトの方法を教えろ!!


「私の立場からそんなことはできません。私がサポートするので開発者たちからの援護を待ちましょう。ログアウトの方法は私しか知らないのであきらめてください。それに……」


こいつを人間味があるなんて言ったバカは誰だよ?

ははっ、全くわかってない。あんな出来事があって逃げない人間なんていないに決まってるわからないわけがない……もういい僕に二度と話しかけないでくれ。不愉快だ。一人にさせてくれ。


「ーーかしこまりました。」


あいつが話さなくなってからしばらくたったが、

あいつの言った言葉をいくら忘れようとしても頭から離れられない。

しつこい油汚れかよ……はぁ。

とりあえず寝ようと思って目を閉じ、じっとする。

寝られる気はしなかったが、寝て起きればこの悪い夢から醒めることができるかもしれない思ったら、猛烈に寝たくなった。


もう何もわからない。ぐらりぐらりと不規則に瞼に映る暗闇は揺れている。

ハンモックのように心地よい揺れではなく、海で漂流しているときの不安をあおる揺れだ。

黒一色で何もみえないなか揺れだけを感じる。


それでも眠気は近づいてきて朝に近くなるくらいで眠る。


そうやって僕は無理矢理意識を落として目覚めの時を待った。






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