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この世界はゲームなのだろうか?  作者: 油人間
1章 自由
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魔法 パート2


昼ご飯を食べた後も勉強会という名の読書会は続いた。


次に読み始めた本は「魔法大全」といういかつい本だった。

この本は魔法の名前や効果、威力なんかが乗っていた。

さまざまな魔法が乗っていたが、多すぎてすべては読み切れそうになかったから初級魔法を中心に読んでいったがそれでも多い。

基本となるファイア、ウォーター、アース、ウィンド、ライト、ダークだけならいいのだが、それが派生していく。


ファイアを例にとると炎を球状に固めて温度を高めればファイアボールと呼ばれるし、

逆に炎を広げて壁状にすればファイアウォールになる。

無属性魔法と絡めて魔力をすべて炎属性に変えずに魔力の塊を作り、それを棒状にねってそれを炎属性で着火すればファイアアローになる。


初級魔法単体ではほとんど役に立たないがこのように派生させていくことでわかりやすい用途が生まれる。

さっきの例でいうとファイアは使い道が焚き火くらいしかないが、ファイアボールになると燃えやすい敵や高温に弱い敵への殺傷能力が高まるし、

ファイアウォールになると足止めや視界を遮ることに使える。

ファイアローは表面は火に強いけれど中身は火に弱い敵に刺さる。


派生というなら別にファイアだけ覚えて、ファイアボールなんて魔法の名前や効果、威力なんか覚える必要ないと思ったがそうではないらしい。

最初に読んでいた本ではそのことが書いてあり


「魔法の名前を呼ぶことによって魔法が安定し、高速で発動できる」だそうだ。

詳しいわけはわかっていないがその本の考察では


「決まった手順を繰り返すことで無意識的にできるから」といわれていた。

具体的にファイアからファイアボールに派生させるときにはまず火属性の魔力を精製し、それを体外に排出する。

次に無属性の魔力で作った手のようなもので抑え込むように操ってそれを固める。

そのさいバランスよく力を籠めれば球状になるし、ある方向からの力だけ強ければ穴が開いて魔力が漏れて暴発する。

そうして出来上がった火属性魔力の塊を相手にぶつけるだけの魔法なのだが、これくらいの手間はかかる。


それに魔力のこめ過ぎもよくない。

こめすぎれば無属性魔力で抑えきれなくなり、魔力の殻を吹き飛ばして爆発する。

当然、無属性魔力を大量に籠めれば爆発は防ぎやすくなるが、魔力の消費が激しくなるしそもそも無属性魔力を圧縮して強度を高める必要がある。

魔力の圧縮はファイアボールを作るときに無属性魔力を経由して行ったように簡単なものではない。

蛇足だがその難易度からファイアボールの強化版は中級魔法に含まれる。


魔法とはこのようにデリケートなものなのである。

ただ、名前を付けて手順を固定化すればそれを思い出すようにすれば楽になる。


それに魔法に意識を先過ぎれば隙ができる。

魔法を使うときは大体戦闘中なので魔法だけを考えることはできない。

集中できなければ魔法が失敗し……となるので「安定さ」が重要になってくるらしい。


決まった魔力を、決まった方法で使うことが定石なのだ。

賢者と呼ばれる人は初級魔法ではそんなことしないらしいが、上級魔法くらいの難易度になるとやはり詠唱するらしい。


というわけで僕はこの作業を一生懸命やっているわけだ。

だるすぎるだろ、魔法。


◆ ◆ ◆


魔法の暗記に勤しんでいる僕を妨害してきたのはあいつだった。


「お困りのようですね~~マスター。」


驚きのあまり声が漏れそうだった。


「心の声は漏れてますけどね。」


ーーチッ、何の用だ。


「いやー、魔法の勉強でお困りのマスターを助ける方法用意したんですけど、聞きます?」


聞きません。


「もうわかっているでしょう?私はマスターが話を聞いてくれそうなときにしか話しかけないって。

諦めて話を聞いてください。あ、無言ではなくなったのはポイント高いですよ。」


お前のポイントなんているか、それより方法とやらを教えろ。


「はいはい、承知いたしました。

それはずばりーー私が代わりに魔法を使うということです。」


そんなことできるのか?


「今や私とマスターは一心同体、マスターの魔力を動かすなんてちょちょいのちょいです。」


じゃあなぜ……いや、それより具体的にどうするつもりだ。


「マスターが発した声を聞いて、その魔法の詠唱を私が担うのです。

それがばれることはないでしょう。

ほかの人はマスターが発した言葉を詠唱だと思いますし、マスターの魔力が動いているので魔力が見えるウィンドさんのような人でも気づけません。」


ばれるかばれないかなんてどうでもいい、それのメリットはなんだ。


「魔法剣士になれます。

普通の人なら頭が考えられることには限界があり、どっちつかずになる中途半端な職ですがマスターは違います。

私が魔法を、マスターが剣士を担当すればよいのです。

それに私は体のことを考える必要もないので普通の魔法使いより魔法に集中できます。

それによって難易度は高いけれど、強い魔法を使えます。

魔法使いよりも強い魔法を、しかも自分の思ったタイミングで使えるのは相当アドバンテージがあると思いますがいかかですか?」


……わかった、僕は魔法に関して何をすればよい。


「正直使いたい魔法を想像してもらえれば私が勝手に読み取って使うのでしてほしいことなどないのですが……

一応魔法の名前と効果くらい覚えておいてください。

とっさのときには使いたい魔法を考えることなんてできず、知ってる魔法しか使えないと思うので使える魔法の幅を増やすためそうしてください。

今までやってきた「どの魔力をどれくらい、どのタイミングで、どのように使うのか」は覚える必要はもうないです。」


それだけでだいぶ楽になる。ありがとう。


「素直なマスターは好きですよ。それでは失礼しました。」


◆ ◆ ◆


あいつは嫌いだが役に立ってくれるというなら利用させてもらうまでだ。

魔法を使いながら戦闘することがどれほど強いのかはわからない。

しかしあと二週間はこうして過ごすしかないのだから今できることはやっておいた方がよい。


そうして強くなるんだ。




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