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この世界はゲームなのだろうか?  作者: 油人間
0章 はじまりのはじまり
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プロローグ

ありふれた人生とさえ言えない人生だった。

十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人というだろ?まさにその通りだった。


始めはうまくいっていた。

私立の有名小学校に入学し、そのままエスカレーター式に高校まで上がっていった。


最初の大きな失敗は大学受験だった。

「親に文句を言われない程度」の大学を選んだつもりだったが、落ちた。

本命の大学に受かっていないだけでなく、滑り止めの大学も一つしか受かっていなかった。


浪人するような覚悟もなく、なんとなくでその大学に入ったのがはじまりだったのだろうか?

それともそれよりも前から腐っていたのだろうか?

もうわからないし、どうだっていい。

わかっていることは「目を背けたり、忘れたりすることによって逃げ続ける」ダメ人間が一人誕生しただけだった。


大学もいくことがなぜかつらくなって自分の部屋に引きこもるようになった。

そして暇を持て余してゲームをするが、やりこんでプロゲーマーになったりするわけではなく、ただ時間を食いつぶすだけだった。

そうしてあらゆるものを捨て、失って誕生したのがこの僕、空野 水斗だ。

さてなぜ僕がこのような自己語りをしているかというと、もう先がない命だからだ。


周囲には僕のことを刺したにっくき蜂?がブーンブーンと不愉快な羽音を奏でている。

思い返せば逃げ続けた人生だった。

そして最後には逃げることにさえ失敗するそんな情けない男だった。


こんな奴が自分だなんて認めたくない。

僕はもっと……こう……なんだ。

思いつかないくらいにさびついているがなりたい自分があったはずだ。


死にさえしなければこの後悔を生かすこともできるのにもう何もできないだろう。

今胸の中にあるのはただ一つだ。

「あぁ、生きたいなぁ……」

どうしてこんなことになってしまったんだっけ……?


◆ ◆ ◆


きっかけはそう、なんかのゲームをクリアして次のゲームを探しているときだった。

「思った通りに世界が動く、そんなところを求めていませんか?」

そんな胡散臭いキャッチフレーズが目に入った。


とりあえずみてみるか

とそんな適当な気持ちでそのゲームの説明文を開いた。


そこに書いてあったのをざっくりいうと

・ 現実そっくりのVRMMOです

・ その世界には不思議な物質があって、その人が思った通りになります

・ ダンジョンを攻略することが目標です

・ ダンジョンの奥には願いを叶える聖女という存在がいます

こんな感じだった。


馬鹿げてる、そう思いながら僕が惹かれたのは「現実そっくりのVRMMO」という部分だった。

前はレトロゲームをやっていたため、最新のゲームをやりたい気分だったのだ。


マイナーゲームかつ新作だったみたいで評判はわからなかったが500円と安い値段だったため「まあいっか」と購入した。


そしてVRヘッドセットをつけてそのゲームを起動してみるとやはり500円相当で、

真っ黒な背景の前にどでかく「MAKE YOUR CHOICE」と白い文字が浮かび上がっていた。


どこか普段と違う感覚の中、どうすればいいのだろうかと戸惑っていたところどこからか声が聞こえてきて

「本製品をお買い上げありがとうございます。

あなたのサポートを担当させていただく、AIでございます。

これからあなた様には……」


そんなアナウンスを聞いていると、

急にノイズが入って声が聞こえなくなったと同時に意識がなくなってきて……


◆ ◆ ◆


真夏に放置された三角コーナーから漂ってくるような腐臭によって意識を覚醒させられた。

「ーーっ!!」


酷く気分が悪い、徹夜をして眠っているときに無理やり起こされたみたいだ。

とにかく気分が悪い。とりあえずこの臭いの原因を取り除いたら寝よう。


そう思って目を開けるとぼんやりとした薄暗い回廊が視界に入った。

よく見てみると汚れた灰色で石造りのレンガが組み合わさってできていたが、見覚えはなかった。

(なんだここ、気味が悪い。)


周囲を見回して見えるものは、ボロボロのレンガと、すべてを吸い込むような暗闇だけだった。

とりあえず記憶をあさろうとすると


「ーーーーッン」

遠くから獣の声が聞こえた。

動物園などで聞いた声とは違った。

生と死を争う場所で生き残り続けたものが発する身の危険を感じる声だった。


まずい

本能に身を任せて、長い間運動と縁がなかった体を無理やり動かし、

あの声の持ち主から離れることだけを考えて逃げた。


速く走る、それだけのためにがむしゃらに走った。


脳は混乱し続けていてまともに働いてくれはしない。

体感ではしばらく、実際には少し走ると少しの理性を取り戻すことができ、

体の悲鳴を聞き取ってへたりこんだ。


また、そのおかげ?で頭が覚醒し直前にゲームを起動していたことを思い出したが

冗談じゃない、これがゲーム?そんなわけないだろ。頭じゃなくて体が「ここは現実だ」といっている


少しの間座って休憩したあと、とりあえず人を探すために歩き始めた。


僕は誰かこの不思議な状況を説明してほしいし、何よりあの咆哮から感じ取った野生のようなものからから離れて人の温かみに触れたかった。


そして、歩きながら何が起こっているのか整理することにした。

そのために必要な情報を手に入れるために注意深く見てみると、恐ろしいほど何の情報も得られなかった。


とにかく何か状況を変える手がかりのようなものをてにいれるために凍り付いた脳を無理やり回転させる。

こんな場所に心当たりはないし、誰かに連れ去られた?いったい何のために僕を狙った?


あふれ出る疑問に答えを考えているとふいに「ブーン」といいう蚊が鳴らすような音が聞こえた。


ちっ、虫か。鬱陶しいし潰すか

そう思い音の方向を見ると頭から足まで50㎝ほどはありそうな蜂が5mほど先にいた。

「は?」

思わず間抜けな声を出していると、蜂は自転車くらいの速度で近づいてきていた。

「おい、ちょっと待てよ」

口には出したが、人間ではない蜂はまってくれずそのまま目の前にきて尻尾の針を突き出すような動きをした。


それを見た瞬間払いのけるためにとっさに手を出したが、そのせいで直径5cmはありそうな針が手のひらを貫いた。


「っいったああ」

と叫びながら後ろに倒れるとその拍子で針は抜けたが、

ウマバエに開けられたような生理的嫌悪を催す穴がぽっかりと開いた。


痛みにあえいでいる間にも蜂は「カチカチ」と口を笑うように鳴らしながら近づいてきていた。


逃げなきゃ

その一心でとりあえず蜂から離れる方向に走りだしたのであった。










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