竜骨の谷 二十一話 亀の怨返し
加筆しました。
オチも変えました。
―― side you ――
アーズがドワーフ達に水浴びを勧めていた。
ドワーフ達は全身返り血で真っ……緑だった。 そんな状態でずっとあの洞窟の中にいたんだし、その前から結構臭ってたし、一言言いたくもなるよな。
「流石のワシらも、コレだけ血だらけなんじゃ……水浴びくらいするわい。 じゃがその前に少し休ませてくれ。」
鎧を脱いで身軽になったドワーフ達は、ドデっと岩の上に寝っころがった。
ドワーフ達の顔が血だらけで分かりにくかったけど、かなり疲れているようだ。 まぁ、アレだけゴブリンを殺したんだし疲れもするか……。
「しかしまぁ、大穴に魔素を全部持っていかれたわい。」
そしてカメを一瞥して言った。
「そのカメは……竜宮の亀じゃろ。」
ふーん、竜骨の谷のカメだからかな?
背中に乗って連れて行かれた先が、あのエルフ族の長の場所なら、あんまり行きたくねぇな。
しかも甲羅がトゲトゲしてて背中に乗りたくねぇ。
顔を見合わせるドワーフ達。
「そいつの血を分けてくれんか?」
「血を?」
「あぁ、そいつの生き血は魔素の回復力が凄まじぃんじゃよ。」
「無駄にビンビンになるがの!」 ガハハハと笑うドワーフ達。 ナニがだよ?! それからなんでマイがガクガクしてるんだ?
「特に脳髄には魔素が溜まっておってな。 魔素の上級回復薬にも使われるくらいじゃ。」
「高濃度の魔素を持ってるくせに魔法は使わんしのぅ。 溜まってしかたあるまいて。」 ガハハハと笑うドワーフ達。 笑うとこじゃないだろ?
「そうなのじゃ! まだそのカメの頭から凄い魔素が感じられるのじゃ! マイ様を襲ったカメに違いないのじゃ!」
「あれ? カメは逃げ出したんじゃないのか? 襲われてたのか?」
「あの荒ぶる魔素はかなり危険だったのじゃ!」 両手を広げてウネウネさせるアイル。
「ワッチも襲われるかと思ったのじゃ!」 ぶるぶる震えるマイン。
「よっぽどカメの頭に血が上っておったんじゃろうな。 マイがカメを抑えたおかげで助かったのう。」
「「マイ様には感謝するのじゃ!」」
そ、そんな危険な状態だったのか……。
マイの顔が引きつっている。 本人もそこまで危険な状況だとは思ってなかったようだな。
ていうか、魔素って見える物なのか?
「しかし魔素の回復薬としては、血も脳髄も鮮度が悪くなると台無しじゃがな。」
「魔素がドンドン抜けとるしな!」
「なら、首と血を、そこの大きめの魚二匹と塩と交換でどうだ?」
イヌ耳のねぇちゃん、ピエスが交渉してきた。 さっき無料でくれるって言ってたような……。
「塩は構わんが、魚はワシらのじゃないからのう。」
「俺は別に構わんが……」
「ならば交渉成立じゃな。」
ドワーフ達はそう言うと、マイの出してた草の葉っぱを拾って、ごっつい手で器用に小さなカップを5つ作った。
「これに血を入れてくれんか。」
ピエスがカメの首に短剣を刺した。 その傷口から流れてきた青い液体を、草の葉のコップに注いでいく。
それをドワーフ達は酒でも呷るように一気に飲み干した。
「こりゃ効くわいっ!!」
なんか一気に元気になったドワーフ達。 そんなに一瞬で効くものなのか?
でも待てよ。魔素が増えるって事は、魔法が使えるって事だよな? オレにもワンチャンあるんじゃないか?
「オレにも分けてくれよ」
「やめておけ。子供の女子には強すぎるぞい。」
「オレも魔法が使いたいんだよ!」
顔を見合わせるドワーフ達。
「ならば指に付けたのをひと舐めしてみるがいいじゃろう。」
そんなにキツイのか? う~ん、ちょっと怖いな。先にマイに舐めさせてみるか――
「マイもちょっと貰ってみろよ」
「ア、アタシはいらないかナー。魔素とか不足したことないし。」
なんか挙動不審な動きになったんだが……。
仕方ない……ウイに……。
「ウイ……」
「あ、ボクは魔法とか興味ないかな。」
「…………」
仕方ない。オレはカメの首に滴ってる青い血を指に付ける。
ていうか、血が青とか……毒じゃねぇだろうな。
ペロッ
―― side my ――
「マイもちょっと貰ってみろよ」
「ア、アタシはいらないかナー。魔素とか不足したことないし。」
なんでアタシのがこれ以上、元気にならないといけないのよ!
それでなくても、いつ暴走するかとビクビクしてるのに。
「ウイ……」
「あ、ボクは魔法とか興味ないかな。」
指にカメの血を付けて舐めるユウ。 よくそんな青い血を舐めれるわね。
ペロッ
ドサッ
舐めたと思ったら、ユウが倒れ……掛けたのをウイ兄が受け止めて、そのままマントの上に寝かしたわ。
「だから言わんこっちゃない。」
ドワーフ達は『やっぱりこうなるか』って顔をしてるわね。
「気を失ってるだけじゃろう。 すぐに起きるわい。」
でも、ひと舐めで気を失うなんて、どんだけ強力なのよ。
「マイもウイもそのカメの肉は止めといた方がよさそうだな。 こっちの魚で我慢しておけ。」
アーズが獲ってきた魚を指差して勧めてくれた。
「アタシは遠慮なく魚を貰うわ。」
「ボクもそうするよ。」
「ワッチはマイ様の仇をとるのじゃ!」
「アチキもマイ様の仇をとるのじゃ!」
いや、アタシは死んでないし。 そもそもそのカメは悪くないし……。 でも言えない。
ていうか、あのユウを見ていて、それでもチャレンジするなんて……。食べたことがありそうだったし大丈夫なのかな?
「敵討ちは任せたわ。」
「「分かったのじゃ!!」」
§ § § § § § § § § § § § § §
「「マイしゃまー」」
右腕にはマイン。 (イメージ図 ●腕● 注意:服着用の為◎ではない。)
左腕にはアイル。 (イメージ図 ○腕○ 注意:服は白と黒が逆)
また顔を真っ赤ににしたマインの顔が、アタシの顔の近くにある。 反対にはアイル。 多分アイルも真っ赤なんだよね。判らないけど。
「なんじゃ? カメの血で酔っ払ったんか?」
「こんなモンで酔えるとは羨ましいことじゃな。」
「しかし、妹が寝たら早速浮気か。 女たらしじゃのう。」
「そ、そんなんじゃないから!」
「モルッタには手を出すなよ!」
「絶対出さないから!!」
なんでアタシが女性関係で責められないといけないのよ……。
「ワシらも一杯やるか?!」
「それは、いい案じゃな! 白いトコの酒があったじゃろ。」
アタシとアーズの声が合う。
「「 先に水浴びして来いー!! 」」
「「「「「 ガハハハハハ 」」」」」
何が可笑しいのやら?




