神秘の森 二話 姉と弟
―― side you ――
「もしかして、ユウ?」
目の前の男は俺にそう尋ねてきた。
その瞬間、眩暈が襲う。そうさっきと同じ眩暈だ。
紫・青・水色・緑・黄・橙・赤
また虹の七色が視界を彩る。
そしてまた尻餅を搗きそうになる。でも力の入らない脚で踏ん張ってみる。ビクビク痙攣する脚と猛烈な眩暈、思わず頭を抱えて蹲ってしまう。
あれ?なんで忘れてたのだろうか? オレには双子がいたんだった。名前は・・・
「マイ?」
いやでも、マイは女だ。姉だ。二卵性双生児でもオレと似てはいるけれど、幾らなんでも男に間違うわけがない。
しかも変な髪の色。ピンクだな・・・でもピンクはピンクでも淫靡なピンク。
マイはオレと似ている事を気に掛けて、女の子っぽいファッションや、部屋の内装にしている。そのピンクは白っぽいピンク。
淫靡なピンクとか色のメリハリをつけるのにちょっとは使うかもしれないけど、自分の髪色にするかな?でもまぁ笑える。ププ
「やっぱりユウなんだ!でもなんでセーラー服着てんの?カツラまでつけて。ぷぷぷ」
は?意味が判らない。オレが女装なんてするわけがないだろう。まぁしかしだ、コッチも言い返そう。
「マイもなんで学ランなんか着てるんだ?オレのじゃないだろうな?ぷぷぷぷ」
笑いはちょい多めに返してやる。
「はぁ?なんでアタシが男装しないといけないのよ?」
む…自分では気がついてないのか?
「自分の格好を見てみろよ」
その言葉にマイは足元を見る。
―― side my ――
足元を見ようとしたら顎に襟が当たる。
む?
黒い服に、金色のボタンが1・2・3・4・5個……確かに学ランにも見えなくはない。
上着を脱いでじっくり見る…やっぱり学ランでした。
学ランは嫌いではないけれど、それは男子(もちろんイケメンに限る)が着るからで自分が着たいわけではない。
「はい、返す」
多分、気を失ってる間にユウが着せたに違いない。まぁ風邪をひかないように着せてくれたのかも。
ユウが自分の格好を見下ろしている。
「なんでオレがセーラー服着てんの?」
ユウの顔が赤くなっていく。恥ずかしいのか、怒ってるのか。あぁ両方かも。
そして両手で自分の胸を揉み始めた。それはもうガシッと。そして止まる……。
「なんか…オレ、急に太ったみたい…胸に脂肪がちょっとだけ付いてる。」
今にも泣き出しそうな顔になってきた。
「男がちょっと太ったくらいで泣かないでよ」
ユウは顔がアタシに似てるせいか、男らしさに妙に拘ってる。だから日頃から筋トレとかしてるし、脂肪とかはあんまり付いてない。細マッチョっていうやつ。だから気になったのかな・・・
そして自分の股間に手を持って行くユウ。いくら姉弟でも女性の目の前でそんな事するかね…呆れてしまう。
「なぁぁぁぁぁ!!」
なんだ?いきなりユウが叫びだしたと思ったら、セーラー服のスカートをまくり上げ自分のを観賞しはじめた。お下劣な奴。
「ない…」
「なにが?」
「ナニが…」
「聴いてるのはアタシなんだけど?」
ガクガク震えてるユウがこっちによって来る。そして泣き出したと思ったら抱きついてきた。
白いワイシャツにユウの涙が染み込んでくる。出来れば涙だけだと思いたい。
何がどうしたか聴きたいから両肩をもつ。
あれ?こんなにか細かったかな?
とか思ってたらユウがアタシの胸を触り始めた。何やってんのこいつ。バカじゃないの。いくら姉弟でも、やっていいことと悪いことがあるでしょうに。ドサクサに紛れてこんな事!
「おい」
「もしかして、マイ…………オレと…………」
アタシが怒ろうとユウの肩を持って離そうとする瞬間、ユウはとんでもない事をしてきた。
こ、こいつ!よりにもよってアタシの股間を揉んできやがった!!
「オゥフ」
自然と口から出てしまう変な声。それと同時にユウを突き飛ばしてやった。大げさに吹っ飛んでいく。樹に頭をぶつけたみたいだけど、あいつなら大丈夫。鍛えてるから。
しかし、今まで感じた事のない感触…自分以外に触られたから?と、自分の股間を見下ろす。
「は?」
そこにはテントを張りつつある自分の股間があった。
「え?」
疑問しか浮かばないアタシの頭では、ソレがナニなのかを確認することに躊躇いはなかった。
そして見てはいけない物を見、触ってはいけない物を触ってしまうのであった。