草原の宿 十六話 魔法の練習
-- side you --
宿の門、というか城の門、というか勝手口から出た場所にきた。
ショボい看板[アーズ作]が3つあるとこだ。
「どっちいこっか?」
このマイの言葉が計画性の有無を示してるな。
「あのキノコを採るなら、最初の場所がいいのかな?」
「あぁ、あの川のある場所か。じゃぁこのまま真っ直ぐかな。」
「そうなるかな、この門の正面から来た気がするし。」
「あの川がどう流れてるか聞いとけばよかったな。」
「うーん、あの地図の様子からして、聞いても分からないかもね。」
「それもそうかもな・・・」
「とりあえず、行ってみよっか。他に何か見つかるかもしれないしね。」
「了解」「そうしよっか」
そう、結局のところ、俺達に目的など無いのだ。
適当にいって、何か見つけて、何か持って帰る。その中に、目的のキノコがあればいいな、程度の行動なんだよな。
「その岩なんだろ?」
「あ、その岩ね。アタシも気になってた。」
「昨日来た時も気になってたけど、城が目立つからスルーしちゃったね。」
それは、大きな岩だった。ただ、どう見ても人工的に削られた真っ黒い岩。多分高さ4メートルくらい。
「3メートルくらいかな。あっちにも、あっちにもあるね。」
・・・自分の身長が縮んだのを忘れていた・・・
「もしかしたら、城の周りを一周してるのかもね。」
「お守りか何かか?」
「ハハハ、かもね」
「しかし、こう広い草原だと、真っ直ぐ進むだけでも大変だねぇ。」
「たしかに、真っ直ぐ進んでるか、怪しいな。」
「この草原には何かあるのかなぁ?」
「あぁ、聞いてなかったねぇ」
草原と月、遠くに見える森の影。ただそれだけ。月は圧倒的ではあるけれど、流石に慣れてきたしな。
「あの1番手前の樹を目指していこうぜ。」
真っ直ぐ進む為の提案をしてみた。
「「どれ?」」
「あれだよ」
「あぁ、はいはい、あれね」
「あ、なんか動いた。」
「どこ?」
「そこの草むら」
「ウサギかな?」
「アタシに任せなさい。」
「火魔法はダメだよ。」
「わかってるわよ。」
「ウィンド カッターだよ。」
「ウィンド カッター!!」
ビッと指差すマイ。巻き起こる猛風。
「あれ?ハズレたんじゃない?」
「どっかいっちまったな。」
「うーん、おかしいな。」
頭を捻るマイ。
「それよりさ、ユウ。今見えたんだけど。」
「何が?」
「なんでドロワ穿いてないの?」
「ドロワってなんだよ。」
「下着よ。」
「は?なんだそれ。」
「ユウが穿いてた、白いパンツよ。」
俺は下をみる。俺としたことが飛んだケアレスミスだぜ。便所にいってズボン脱いでから穿くの忘れてるな。
通りでスースーすると思ったぜ。
「あれって、下着なのか?」
「そうね」
「取りに帰ろうか?」
心配性かウイは。
「別にいらねぇよ。もう1枚穿いてるしな。戻ったら、取りにいくよ。」
-- side my --
風の魔法って難しいわ。
見えないからイメージしにくいのよね。
ちょっと練習しようかしら。
あの草むらに当ててみよう。
「ウィンド カッター!」
うーん、イマイチ風に纏まりがないわね。
「ウィンド カッター!」
それに、ユウの短いワンピがヒラヒラと気を散らして集中できないわ。
「ウイ兄、火と風以外で、狩に使えそうなのない?」
「水属性のウォーターカッターとか、土属性のサンドショット、雷属性のライトニング、氷魔法のアイスボルトとかかな」
「氷は属性じゃないんだ。」
「氷は、『水と火』もしくは『水と風』の複合属性だね。」
「風はなんとなく分かるけど、火もなんだ?」
「理屈は知らないけど、温度調節的な感じなんじゃない?」
「ふーん」
アイスボルトつかって見よう。
「アイスボルト!」
熱っつ!
「なんだ?お湯が出てきたのか?」
「複合属性はまだ難しいかもね。」
「そ、そう見たいね。練習しとくわ。」
魔法って難しいわね。
「ウォーターカッター!」
「ぅお!行き成り使うなよ!」
「あ、ごめんごめん。」
「たく、水でビチョビチョだぜ。」
「カッター系はイメージが難しいのね。」
ユウの白いワンピが水で透けてしまった。
ワザとじゃないのに、何故か後ろめたい・・・。
「前にウインドウカッターは使えてたじゃねぇか・・・」
「あれは、ウインドウカッターとは別物だね。」
「?」
「こないだ使えた、ライトニングがいいんじゃないかな?」
「そ、そうね、あれなら問題なく使えるかも。」
「あと、土魔法は1番役立つ魔法だから使い方を覚えてもいいかもね。」
「そうなんだ、でもちょっと地味なイメージがあるわね・・・」
いろいろ魔法を使えるのは楽しいけど、使いこなすのは難しいなぁ。
「魔法の一覧みたいな本でも無いかな・・・」
「どうかな・・・帰ったら聞いてみようか。」
「あ、あそこ!ウサギ!」
「どこ!?」
「あそこ!」
ビシっと指を向ける。
「ライトニング!」
『バタッ』っと倒れるウサギ・・・ちょっと煙が出てる。
「焼けちゃった?」
「うーん、ぎりぎりいけるんじゃないかな?」
ウサギの耳を持って持ち上げるウイ兄。躊躇ないな。
何かボロボロと落ちている。小さな虫っぽい・・・
「これマイが持っててよ。」
「え。ちょっといやかな・・・」
いくら可愛いウサギとはいえ、死体はちょっと抵抗あるよね。
「収納にいれとけばいいよ。」
「収納って何?」
「収納は収納だよ」
またウイ兄の説明になってない説明が始まった。
「あぁ、もしかして、アイテムボックス的なものじゃない?」
ふむ、アイテムボックスか。
「どうやって使うの?」
「これをもって、収納するイメージだよ。」
「・・・解らないけど、やってみる・・・」
ウサギをウイ兄から受け取る。
「収納」
うお、手からウサギが消えた!
「お、ウサギが消えたな。どこいったんだ?」
「ウサギを出すイメージで取り出せるよ。」
ウサギを出すイメージってどんな感じよ・・・。そんなのイメージしたこと無いよ。
とりあえず、手の平に出すイメージで。
「うぉ、手の平に出て来た。おもしれーな。俺もできるかな?」
「ユウは女の子だから、出来ないと思うな。」
「女の子は関係ないだろ!」
むほっ、手の上で出たり、消えたりするウサギ。おもしろい。
「マイはあのドサ袋いらねぇな。」
「そうかもね、でも、これってどのくらいの収納量があるのかな?」
「さぁな、その内解るんじゃないか?」
それもそうよね。ユウに分かるわけ無いか。
あれ?という事は、槍も収納できるんじゃない?こんな邪魔な物持ち歩くの大変だしね。
「あれ?」
「どうしたの?」
「槍は収納できないのかな?」
「あぁ、その剣は出来ないかもしれないね」
「なんで?」
「さぁ?」
ウイ兄は色々知ってるのに、どこか抜けてるのよね。っていうか不思議ちゃんだわ。不思議君か。




