神秘の森 十二話 お留守番は危険がいっぱい
―― side you ――
兄さんは森にキノコを採りに。姉さんはお花畑にお花を摘みに行きました。
なんじゃそりゃ。
この遭難してる状況で、ソレが今必要な事なのか?
あぁマイも姉さんじゃ無くて兄さんか。いや、問題はそこじゃない。いや、それも問題だけれども。
でっかいイノシシが跋扈する様な森の中で、3人がバラバラになるとか。頭おかしいんじゃないか?
こんな状況だと何処に行くのも3人一緒だろ?
とりあえず、やる事も無いから、焚き火に薪をくべる。
野生動物は火に近寄らないって聞いた事があるしね。
まぁ、薪って言ってもでっかい枯れた葉っぱだけどね。しかしやたら煙がでるけどヤバイ煙じゃないよな?
とりあえず、やる事もないから、周りを見渡してみる。
ずっと森の中にいるけど、今何時くらいだろうか?そろそろ夜になってもおかしくないよな……
まぁ、沢山ある高い樹の枝と葉っぱが邪魔して、空はほとんど見えないんだけどね。
すると突然川下の方から、何やら不穏な影がいっぱい現れた。
『げ!まじか!』
でっかい犬だ。野犬ってやつか? もしかして狼とか? 絶滅したとか言ってた気がするけど。じゃぁやっぱり犬か?
イノシシの死体を放置してるし、血が川に流れてたし。犬って鼻が良いって言うし、もうこっちに来るのは確定だよね。
数は5匹はいそう。まぁ、まだ100m以上ありそうだし逃げれるかな。
なんか、前より視力が凄く良くなったんだよね。大自然のパワーかな? マイナスイオンとかいっぱい出てそうだしね。
周りを見て、逃げれそうな場所を探す。やっぱり樹の上かな? 樹の枝とかかなり高いな。
でも、木登りとか苦手なんだよな。まぁ頑張るしか無いんだけどね。
岩の裏とかだとバレるかな? もう血の匂いはしてないとは思うけど、代わりにフローラルな香りがしてるしな。
単純に川の上流に逃げるかな? でも、追いかけてきたら逃げ切れる気がしないしな。
助けを呼んだ方がいいのかな? でも、大声をだしたら、犬も走ってきそう。
ど・どうしよう。絶体絶命な予感しかしない。
いや、待てよ。俺も魔法が使えるんじゃね? マイごときに出来て俺が出来ない分けが無い。
ファイアーボールだったか? ウイがしつこいくらい連呼してたな。
あとなんだっけ……ウインドウ カッターだっけ? 石を切った魔法が確かそんな名前だったはず。元はガラスを切る魔法かな?
魔法を発射するイメージを膨らませる。イメージトレーニングは大事だから。
(なんか……いけそうな気がする!)
でも、魔法は最終手段だな。とりあえず、樹の上に逃げないと。安全地帯から一方的に打ち下ろす感じにしたい。
ん?自分の身体が持ち上がらない。
腕に力が全然入らない。指が痛い。日々鍛えてたはずなのに。こんな時に力が入らないとか何たる醜態。血がまだ足りないのかな……。
『げ、犬がイノシシの近くまで来てる! しかも20匹くらいいるよ!!』
早く上らねば!!
―― side my ――
『ふひぃー』
初めてのキノコ狩りは、恙無く終わったよ。筒は持ったけどね。
しゃがま無くていいのは楽だよね。
あとは手を洗いたいんだけど、川まで行かないと無理っぽい。
おっと、綺麗な花を発見。摘んでもいいかな? いいよね?
勿論香りを嗅いでみ……あんまり良い匂いじゃないな。まぁ持って帰ろう。折角の綺麗な花だしね。
キノコをモギに行って、花を摘んで帰るとか。一石二鳥ってやつかな。
用を足すと身も心も軽くなるね。主に身が。
川はどっちだっけな……別に方向音痴というわけじゃないけど、少し離れすぎたかな?心は乙女だし、離れたくなるのは仕方ないよね。まぁヤリ方を真似ようと思ってたのは今はもう良い思い出。
おっと川を発見……したら、そこは宴会場でした。
顔がやたら大きなオッサン達が4~5人、犬の群れと戯れてる。しかもアタシの食料の周りで。
え?まさか……ユウがスカートを脱がされて樹にしがみついてる!? ユウのDTがヤバい!!
これは観察、もとい、助けなきゃ!!