神秘の森 十話 属性魔法の使い方
-- side you --
マイが折角のステーキを炭にしやがった。お約束を裏切らない奴だ。むしろワザとやったんじゃないかと疑いたくなる。
しかし本当にマイが魔法を使えるとか、もう嫌な予感しかしない。
「直接、ファイアーの魔法は火力が高すぎたね。もうちょっとファイアーの魔法の火力を下げれないかな?ファイアーより下級の火魔法でもいいかもね。」
ウイが焦りながらファイアーを誇張してる。まぁ食料が炭になると焦りもするよね。
「でも、弱い火魔法って言われてもなぁ・・・」
マイに微調整とか器用なことを期待しても時間の無駄っぽい。
ここは俺様の頭脳を披露する時だな。
「石を焼いて、鉄板の代わりにするのはどうかな?平らな石を探してさ。」
「うまくいくかな?ちょっとやってみようか。」
ウイが大きめの石を持ってきて。地面に置いた。
「この石を平らにできない?風魔法のウィンドカッターとかで・・・」
『ウィンドウカッター!!』
見事に真っ二つになった石ができた。魔法って凄い。俺も使えないかな?
プルプルしながらウイが割れた石を固定している。魔法が当たったのかな?風魔法って見えないから注意しないとね。
「後はファイアーで石を熱して」
「ファイアー!」
赤く焼ける石。温度的にはいけそうな気がする。
「じゃぁ肉を置くね。」
俺は空かさず肉を焼けた石の上に置いた。
『ジュー』と焼ける音。良い匂いが・・・しなかった。獣臭い匂い。はっきり言って臭い。まぁ獣なんだし仕方ないよね。
ひっくり返しもう片面もちゃんと焼く。
塩とか調味料とかある訳無いし、香料になりそうな草とかもわからない。
ウェルダン状態を確認するのも石器を使う。気分はもう原始人。
レアとかミディアムとか、そんなの食べる勇気はないしね。
とりあえず誰に食わせようかな。いくらお腹が空いてても、こんな肉を最初に食べようとは思わないよね。
ふと見ると、何故か涙目のウイ。そんなにお腹が空いたのかな?
「最初の肉はお兄様にお譲りします。」
「そうよね。どうぞお兄様。ご賞味くださいませ。」
ウイが俺とマイを交互に見たあとため息を一つ。
「いただきます・・・」
泣きながら、美味しそうに食べるウイの姿を確認してから、俺もいただきました。
うん、まずい。騙された。
-- side my --
この肉不味いわ。不味すぎる。
イノシシとか豚の仲間だから美味しいのかと思ったけど、獣臭さが超ヤバイ。胃の中に落としても、息が獣の匂いになる。
血も抜けきってないからか、ネチャネチャするし口ざわりも最悪。
しかも、塩もないから味もしまりが無い。塩の偉大さを思い知ったわ。
でも、他に食料もないし、我慢してでも食べないと体力が持ちそうにないしね。
この焚き火の煙をみてヘリコプターで助けに来てくれないかな?せめて塩を持って来て欲しい。
「ユウの髪の毛、長いから纏めた方がいいんじゃない?」
いろんな意味でマズい空気の中、ウイ兄が何か言い出した。
「そうなんだ。長いし、重いし、肩凝るし、ピンクだし。切ろうかな?」
「せっかく綺麗な髪なんだし切るのは勿体ないよ。」
「綺麗な髪とか言われても嬉しくないんだけど。」
「でも確かに、森の中を歩くのには向かないよね。焚き火とかも危ないし。」
「マイ魔法で纏めてあげなよ。」
「「は?」」
なんで髪を束ねるのに魔法なんだろう?アレか魔法便利=なんでも魔法でしちゃえってことかな?
「いや、髪の毛をアレンジする魔法があるんだよ。」
「「は?」」
「本当だよ、属性魔法で、確かあったはず。」
それは面白そう。自分の頭で試す前にユウの髪で試すのもありかもね。失敗しても、切れば文句ないでしょ。
「ていうか、属性魔法なんだ?」
「勿論そうだよ」
「なんていう属性?」
「ロングヘアなら、ポニーテール属性とか、ツインテール属性かな。」
何それ、面白そう。テンション上がる。早速やってみよう。
「お団子ツインテールにな~~れ~ぇ~ぇ~」
ユウの頭に向かって唱えてみる。
「ちょ!まっ!」
うわ、キモッ・・・髪の毛がクネクネと勝手に動いてる。
あっという間に、ツインテールの出来上がり。
「うん。ユウにはツインテールがよく似合うね。」
ご満悦なウイ兄。何かやり遂げた感さえある。ウイ兄は何もしてないはずなのに。