神秘の森 八話 脅威の洗浄力
-- side you --
小川は狭かった。1メートルにも満たない川幅で、川底は20㎝もないと思う。
でも、ぱっと見は凄く澄んだ水で、余裕で飲めそうではある。
マイが手ですくって臭いを嗅いでいる。それで何が判るのやら。
「たぶん大丈夫みたい。」
マイの大丈夫など当てに出来た物じゃないけど、変な色も、臭いも、泡も無いし、大丈夫かな。
俺は直接水面に顔を付けて飲む。男はダイナミックに大胆に潔く。
『ゴクゴクゴク』
凄くおいしい!!
『ゴクゴクゴク』
6個のおいしい水も真っ青になる美味しさだ。
ウイもマイも凄く飲んでる。まぁ仕方ないよね。
「服とか洗っていいかな?」
俺は着ているベトベトの服を持って聞いてみる。
包帯を取って頭も洗いたい気分だけど、頭を洗うのはちょっと度胸がたりない。凄い血が出てたしね。
「それアタシの服だし洗って欲しいけど、流石にここじゃ狭すぎない?」
確かに、それはそう思う・・・
しかも折角見つけた水飲み場を汚したくないなぁ・・・。
「マイが洗浄魔法とか使えるんじゃない?」
ウイがまた厨ニ臭い事を言いだした。コレさえなければ良い兄なのに。
「センジョウ魔法ってなに?」
マイもよく相手をする・・・
「洗濯魔法の事だよ。」
「なるほど」
なるほど、じゃねぇよ。言い換えただけじゃないか。何に納得したのやら。
「掛け声は?」
「もう気分で良いんじゃないかな?」
ウイの何かを諦めたような返答。
ちょっと考えこんだマイが俺に剣先を向けてくる。
「え?ちょっと」
-- side my --
「掛け声は?」
「もう気分で良いんじゃないかな?」
ふむ、確かに気分は大切だよね。
目を閉じて思い出し、想像する。
イメージは元の綺麗なセーラー服。
シワ一つ無い新品。
入学当時のピカピカの状態。
槍の先をユウに向けて、あとは気合を込めて解き放つ!
「え?ちょっと」
「TOP ATTACK アリエ●ル!!」
その瞬間、槍の先から放たれた良い感じのフローラルな香りの風がユウにそよぐ。それはもう繊維の隅々まで。
風が当たると同時に、服に付いた汚れが、『ボタボタ』と落ちていく。
「「「おぉ」」」
3人の声がハモる。
そこには汚れ一つ、傷一つ無いピカピカで新品のユウが立っていた。
「洗濯魔法ってススギも乾燥もいらないんだね」
ウイ兄の素直な感想をいただきました。
頭の包帯も綺麗になってる。
「包帯も取っても良いんじゃない?」
ユウの頭の包帯を取ろうとするウイ兄。
「じ、自分で取れるから!」
なぜか嫌がるユウ。そして自分で包帯を解いていく。
流れる長い髪。腰の辺りまである。髪の毛に付いてた血液も綺麗さっぱりピッカピカ。キューティクルも最高の状態みたい。
?長い髪?
あぁ、ピンク髪のカツラか。
「でも自分じゃ頭の傷を確認できないよね?」
カツラ越しに頭の傷を確認しようとするウイ兄。
「大丈夫みたいだね。傷どころか、どこに怪我してたかわからない。」
まぁカツラ越しだしね。
「ウイ兄、ユウのその髪はカツラだよ」
親切に教えてあげる。っていうか、弟がそんな長いピンクの髪だと変だと思うよね?
「え、コレは地毛だよ。ホラ」
と、ユウの髪の毛をグワっと掴むと引っ張る。
「イテテテテ。やめろ!」
いやいやそんなはずは無い。ということで、アタシも引っ張ってみる。
「イテテテテテ。やめろって!!」
「そ、そんな・・・Hなピンク色の髪とかリアルだと超笑える!」
「お前もピンクの髪だろ!しかも淫靡なピンク!そうだ淫靡ンクと名づけよう!!」
ユウが最低なネーミングセンスを発揮した。まじで最低。
険悪なムードになるアタシとユウ。
「二人ともやめなよ。髪の色は二人とも同じ色だよ。」
二人でウイ兄をみる。
「髪の色のことは、とりあえず保留にしようか。」
「そ、そうね」
一瞬で和解してしまった。
ウイ兄の黒い髪が羨ましいと思う時がこようとは・・・。