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プロローグ
「このことは誰にも言ってはいけないよ」
母は、こう口にした。顔がこわばっている。これは今まで何回も言われてきたことだ。私が生きてきた15年間、数え切れないくらい。
「分かってる」
私はいつもこう答える。そうすると、心なしか母は決まって安心したような顔になるからだ。
でも、実際分かってなんかいない。表面上はこう言っても、なんで、なんでと問いかけたくなる気持ちが頭をもたげる。私はその気持ちを押し返す。
数日、それか何週間か経つだろうか、しばらくすると、母はまた同じことを問いかける。私は決まって答える。首にかけたペンダントを、右手でぎゅっと握りしめながら。
「分かってる」