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妖怪フルスイング  作者: パプリカ伯爵
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その二 スケチンとゼン。


スケチン。彼は中学時代からのゼンの親友であり、中学野球部の元チームメイトでもある。


二人の出会いは衝撃で、中学に入っての初めての体育祭での事。

小学校から野球を初め、運動には自信があったゼンの前に彼は現れた。


一年生ながらブロック対抗リレーのアンカーとして出場した彼は、最下位でバトンを受けたにも関わらず、ものの数秒でトップに立ち逆に2位以下に一周以上差をつけたのだ。いくらアンカーが3周走るとは言え、とてつもない偉業である。


だが、それだけならタダの凄い奴としてゼンの記憶にはそれ程残らなかっただろう。

しかし彼は半周差を付けた後、あるテントの前に立ち一人の女子に向かってこう言ったのだ。


「2組の山下さん!僕と付き合って下さい!。」


レースの最中である。誰もが驚愕した。

家庭科のゴリ山ですら「何やってんだよ!早くゴールしろよ!」と言うことを忘れる程に。こんな事は大森中学始まって以来の出来事だった。


もう会場の人間はリレーの事なんて頭に無かった。この破天荒な少年の恋の行方を知りたい。皆がそう思った。2位の人が半周近くまで迫っている。


しばしの静寂の後、山下さんが口を開いた。


「私野球部に好きな人が居るんで付き合えませ「じゃあ俺がこのリレーで1位を取ったら付き合ってくれ!!」


そう言って再び走り出し、1位を取ったスケチン。


これ程まで清々しい出来レースがあったのか。ゼンは震えた。こんな奴には敵わない。あいつはアホだ。しかも底抜けの。



その後再度山下さんにお断りされ、ならばと2年から野球部に入り、経験者をごぼう抜きし瞬く間に2番ショートを手に入れ、卒業するまで52回に渡る愛の告白を山下さんにし続けた、それがゼンの知るスケチンと言う男なのである。


そんな「俺より絶対に後に彼女が出来そうな奴ランキング1位(ゼン調べ)」を三連覇中の彼に彼女が出来た。しかも自分の知らない女の子。ゼンの心には到底受け入れられない事実だった。


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