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kirakira☆girl  作者: aotohana
7/7

おにぎり


病室に入る前…私はいつも立ち止まってしまう。

なんだか少し憂鬱で…どこか怖い。


心を落ち着かせるように、静かに息を吐くと、私は笑顔を作る。



「お母さん、具合どう?」


本を読んでいた母が私に気づき顔をあげた。


「平気よ…ありがとう、紗香」


そう言って母は笑った。久々に向けられた笑顔がすごく嬉しい。今回の薬は副作用もそれほどなく、落ち着いてきている。






「なぁ、なんかあった?」


「別に、何にもないよ」


隣の奴との短い会話。けど、声の感じがいつもより柔らかい。つらそうな顔…泣き顔…最近そんな顔ばかりだったから、どこかほっとする。




「広瀬、立花が呼んでる」


宮木に声をかけられ、廊下側を見ると怖い顔で夏希が手招きしてる。



「何?中入ってきてもよかったのに…」


うわぁ…なんかすっげ嫌な予感する…



「昨日のあれ、何?マコすごくショック受けてあの後、泣いちゃったんだからね」


夏希は俺をにらみつける。



「何ってさ…いや、まんまだけど…」


少しはマコへの牽制もなかったと言えば、正直嘘になる。けど、マコへ気持ちはない。



「ヒナさ…望月さんとは絶対付き合えないよ、彼氏いるもん。マコはさ…最初会った時からヒナのこと好きだったんだよ」



……。



「マコがさ…言われたわけじゃないからよく分かんねぇけど、俺のことマジで好きだったとしても…俺ん中では『友達』なんだよな…気持ちは嬉しいけどさ…」



「好きにはなれない?」


小さくため息をつくと、夏希が改めて聞いてくる。



「なれない。なろうと思ってなれるもんじゃねぇしな。それに、そんなさ…気持ち変えられるもんじゃなくて…お前だって陸が気づくまでずっと想ってただろ?」




「私は…そうだけどさ…でも…」



「とりあえず、そういうことだから。じゃあな」


夏希はまだ納得できない様子だったが、変わらないもんはどうしたって変わらないわけで…






席に戻ると、望月と宮木は笑い合っていた。


「あ、戻ってきた。立花怖い顔してたけど、お前なんかしたの?」


宮木がそんなこと言うから、望月は心配そうに俺を見る。



「いや、別になんもねぇよ」


言えるわけねぇしな…



「そっか…。あ…望月、俺そこ案内しようか?」



「え?でも…宮木くん迷惑じゃない?」


宮木からの誘いに驚いた様子の望月。


「いや、全然…」


宮木が笑うと、つられて彼女も笑った。


チャイムが鳴り…慌てて宮木は席に戻る。



全然話が見えねぇんだけど…こいつも嬉しそうだしさ。何?宮木…もしかしてお前もそういうことか?






広瀬くんを呼びに来た宮木くん…そのまま話しかけられた。


「そういや、前にもらったドロップうまかった」



彼の言葉に私は舞い上がってしまう。

喜んでもらえてよかった…誰かと大違いの反応。


「広瀬くんは…あんまだったみたいなんだけどね」



「広瀬?あぁ…あいつ甘いの苦手だからな…」


苦手?そうだったんだ…私気づかずにあげちゃってた。それに、こんぺいとうにゼリーまで…。


……。


「あのさ…広瀬くんの好きな物って、宮木くん分かる?」


「広瀬の好きなもん?食いもんで?ん…なんだろな…俺、最近つるむようになったからさ」


きらきらは前にうざいって言われたし…

この間助けてくれたお礼…分からないんだ。


「あいつは甘いもん以外はなんでも食うな。大食いだし。あ…そういや…最近あいつ、おにぎりしょっちゅう食ってるわ」



「おに…ぎり?」


なんか意外なもの…


「あぁ、駅の裏側…国道沿いに歩いてって、橋渡ったとこの信号…」


なんだか道が全然浮かんでこない…

こっちに来てから、学校と家、病院の往復だけだったからな…。


私の反応がないことに、宮木くんは気づく。



「そういや望月、高校になって引っ越してきたんだもんな。そこ、おにぎりの種類が半端なくて、広瀬は全部制覇する気でさ。唐揚げとか、ハンバーグ、ウインナーとか入ってんだ…なんでもあり。」



「へぇ、すごいね…」


なんだか、面白そうなお店…。





それから2日後…知らない道を宮木くんと並んで歩く。駅の裏ってこんなに静かなんだ…人もまばらだ。



「望月はなんでこっちに引っ越してきたの?転勤とか?」



……。なんて言えばいいのかな…迷う。



「家庭の事情で…」


「あ…悪い、変なこと聞いたな、俺」


「ううん」



……。


「家庭の事情って言えば、俺んち小さい頃両親離婚してんだよな、父親の顔俺覚えてねぇし…」



「宮木くんも?」


思わず驚きで声を出してしまう。


「あ…望月もか…ちょっとそうかなって思った…悪い」


「ううん」


「あ…ここ、この細い道入ってくから」


周りは田んぼだ…案内してもらわなかったら分からない場所に入っていく。






駅からはずれたとこにあるけど、新しくてお洒落な内装の店だった。一瞬ケーキとか出てきそうな感じ…でも、ガラスケースに並んでるのおにぎりで、なんか斬新。



結局おにぎりを2つ買うことにした。


きんぴらと無難に鮭…。

お母さん和食好きだったから…


食べれるといいな。

また笑顔見たい。



広瀬くんのお礼は明日の朝、登校前に買うことにした。明日は母親の退院の日…だからお昼頃から登校する。





駅のホーム…ベンチに座り電車を待つ。


「あの…今日ありがとね」


「たいしたことしてないって」


そう言って彼は笑う。宮木くんの雰囲気は柔らかい…言葉も表情も。だからかなんか安心する。

私が話すのを待ってくれたり…沈黙があると話しかけてくれてるのが、分かった。






なんかな…


望月と宮木…どっか一緒に行く約束してっし…



「なぁ…宮木とどっか行くの?」


「あ…うん、そう」



いや…俺そんなん聞きたいんじゃなくてさ…

もっとさ…



違う。俺前に、これでこいつのこと傷つけて泣かせてんだよな。勝手にイラついてさ…もうあんなことはしたくない。



「なんか、楽しそうだな…よかったな」


俺は笑った。






隣を向くと…窓の外がいつもよりはっきり見える。


今日は雲全然ねぇな…すっげ青天。

あいつ…もうすぐ来んのかな。

用事で午後から来るって担任は言ってたけど…用事ってなんか気になんだよな…。


午前の授業が終了する頃、彼女は登校してきた。


「はよっ」


「…おはよ」


「ってもう午後だけどな…」


あ…絶対なんかあったな…こいつ。

また何にも言わねぇし…耳は今会話したから聞こえてるか。



「お前なんかあったろ…暗すぎだし」


……。


「別に…なにもな…」


「なくねぇよな」


望月の言葉を俺は遮る。


「お前ムリばっかすっからな…」


……。



「広瀬くん、そうだこれあげる」



机に置かれたのは見覚えのある袋…

それは最近俺がはまっている店のやつで…



「これくれんの?なんで?」


「助けてくれたお礼。私…広瀬くん甘いの苦手って知らなくて…、このお店、宮木くんが教えてくれたの」



あ…そっか、こないだの一緒にって、これ買うのにってことか。

なんだ…俺すっげバカじゃん。そっか…。



「望月…飯食ってから来た?」


「食べてないけど…?」


「じゃ…一緒に食わね?」


「……うん。けど陸くんたちはいいの?」


「あぁ、別にあいつら付き合ってるし、たまには2人でもいいんじゃね」



「……うん」






今日は屋上まだ誰もいない…。

だから…すごく緊張してしまう。


広瀬くん、私と食べて楽しいのかな…

ちらっと、彼の様子を見たんだけど。


「なに?」


「あ…ううん、人いないね今日」


「そうだな、けど静かでいいよな」


コンクリートの段差に彼はどかっと座る。


気まずい…少し離れたとこに私は座り、コーヒー牛乳にストローをさす。


彼は私があげたおにぎりを食べ始める。

唐揚げとカレーチーズ…


「なに?見られてっと食べずらいんだけど」


「ごめん…あの…おいしい?」


彼が喜んでくれているか心配になる。


「これ?あぁ、すっげうまい」


無邪気に笑う広瀬くん。


「そっか、よかった…」


教えてくれた宮木くんのおかげだ。よかった。






「なぁ、お前が元気ないの俺気になんだけど、やっぱ聞くのってまずい?」



ほんとは触れられたくないことってあるだろうから、聞かない方がいいかって思った。



けどさ…歩みよらないと何も変わんねぇ気がすんだよな。こいつのこと俺知らないまま。



「……お母さん、今日退院したんだ」


退院?入院してたことすら知らなかったな、俺。


「母親どっか悪かったのか?」


「ん…なんなんだろね、気持ちが少し不安定なんだ。前に広瀬くんがうちに来てくれた時も…感情的で」


それっきり、望月は黙ってしまった。

あの時、確かに初めて見た彼女の母親には、どこか近寄りがたい雰囲気があった。


近くにいるはずなのに、会話もしてるのに…感情はなくてどこか遠くにいるように感じた。


物が割れる音もした…

暗い部屋で震えていた彼女の姿を思い出す。

どんな気持ちで望月はあの家にいるんだろう。




「なぁ、望月…一人で泣くなよ」


「泣かないよ」



顔をあげ、俺を見る。

何度かつらそうな顔や泣き顔も見たことあるけど…こういう時のこいつの無理に笑った顔を見るとたまらなくなる。


「俺にできることあればいいんだけどな…」


自分で言ってむなしくなる。何もわかんねぇのに踏み込まれるのってやっぱ嫌だよな…。偽善…

けど…望月が見せたのは意外な表情で



「うん…いつも助けてもらってるよ、私」


今度はふわふわな顔で笑った。


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