星形のおもちゃ
★
隣の席を眺める
あいつの姿はない…
望月はずっと休んでいる。風邪って担任は言ってたけど…もう1週間だぞ…さすがに違うよな。
原因?
確実に俺だ…あんだけ泣かせて…傷つけた。
★
「なぁ…あのさ…」
俺んとこ来たかと思いきや…真面目な顔つきの陸。
こいつも…ここんとこなんか元気なかったんだよな…
「なに?」
「あの…ヒナってさ…その夏希のこと好きなの?」
は!?
なに言ってんだこいつ…鈍感もここまでくるとさ…
「陸はなんでそう思うの?」
俺はため息まじりに聞いてみる。
「だってさ…お前…夏希がタイプって、可愛いってさ…だから俺…」
あのうるさい陸がしゅんとしてる。
やべぇ、こいつ元気ない原因俺かよ。
「いや…陸、マジごめん、俺そういう意味で言ってないから」
なんだか意味が分からないって感じの陸。
「だから、俺別に夏希のこと恋愛としてみてねぇって、夏希も俺のことそんなんじゃないし…陸が誤解してるって分かったら、夏希に怒られるよ」
「マジで?けどタイプってさ…」
「タイプはタイプ…、顔とかってんじゃなくて…素直な感じとか、甘えたりしてくんじゃん…そういうの見てて可愛いっては思うし」
「じゃあ、やっぱ好きなんじゃん」
また陸の表情が曇る。
「いや…だって、別に夏希のこと抱きしめたいとか思わねぇし、普通好きなら思うんじゃねぇの?」
「そっか…そうだよな、いやごめんな」
陸はやっと納得できたのか、笑顔を見せる。
こんだけ気にするって…夏希と付き合うのも、時間の問題だな…。
「けど、ヒナってほんと恋愛興味ねぇの?抱きしめたいとか、キスしたいとか思ったことある奴いねぇの?」
陸からの質問に…浮かんだのは渡り廊下
あいつの泣きそうな笑顔。
俺、あん時抱きしめてたんだよな。
あいつのこと…俺…。
「陸、ありがとな…俺も鈍感だわ。お前のこと言えねぇな」
陸は全く訳が分からないっていった様子だったけど。
☆
こんなにショックなんて思わなかった
広瀬くんの言ったことなんか気にしなきゃいいのに…
また彼の前で泣いてしまった。
ベッドに転がり…星形のおもちゃのスイッチを押す
けど…もうそれは光らなくて
また涙がこぼれてしまう。
☆
インターホンが鳴る。
母が出てくれるって思ったのに…
インターホンはなり続ける。
私はのろのろと階段をおり、玄関のドアをあけた。
「広瀬くん…なんで?」
★
担任から見舞いに行きたいって、望月の家を教えてもらった。
会ってもらえっか、分かんなかったけど…
ただ待ってるだけじゃ、あいつは会ってくれない気がするから。
久々に見る望月はパジャマ姿で…
顔色もなんか悪かった…
苦しくなる。
母親らしい人が、玄関にでてきた。
俺を見ても表情は変わらず、淡々とした口調で聞く。
「紗香の友だち?」
「そう…」
強ばった顔で望月も答える。
「はじめまして…俺…」
俺も慌てて挨拶しようとしたけど、
「なら、あがってもらって。母さんちょっと疲れたから、休むから」
そう言うと、そのまま部屋に入ってしまった。
!?
物が割れる音…何?いったい…
「入って…、上行くから」
望月は小さな声で言うと、俺を引っ張る。
★
望月の部屋…真っ暗だ。
目がなれるまで…彼女の姿もよく見えない。
けど、震えてんのは分かった。
たぶん…泣いてる。
俺はそのまま彼女を抱きしめた。
★
どれぐらい時間がたったんだろう…
望月は少し落ち着いたようだった
「俺謝りたくて、ほんとごめん」
……。
「お母さん…おかしいでしょ」
「え!?」
「ずっとこうなの…父親が出てってから…もうやんなっちゃうな」
俺なんて言っていいか分かんなかった。
彼女の声はどこか諦めた感じで、どこか苦し気だった。
「広瀬くんに…知られたくなかった」
「…ごめん」
「婆ちゃん…ずっとね婆ちゃんとこにいたの、けどね…ここに戻ってきちゃって…」
「うん…」
☆
頭がぐちゃぐちゃだ…
広瀬くんに何言ってんだろ…私。
大嫌いって思ったのに…
私の話を何も言わずに彼はただ聞いていた。
時々、相づちをうちながら。
優しく私の頭を撫でながら。
それはどこか懐かしくて…
あの時『きらきら』をくれた婆ちゃんに似ていた。
私…あの時もずっと泣いてたっけな…。
座る形で抱きしめられたまま…私は泣きつかれて眠りに落ちた。
★
俺の腕が重くなったかと思ったら…
彼女は寝ていた。
暗くてよく表情は見えないけど…
可愛いって思う。
俺…ほんとはこいつのこともっと知りたかった…。
もっと甘えればいいのにって思ってた。
俺は起こさないようにベッドに彼女を寝かせる。
そして鞄から取り出した。
カーテン閉まってるしちょうどいいかもな…。
☆
目を覚ますと…ベッドに寝ていた。
彼の姿はない。
夢?そう思ったけど…
私の真っ暗な世界に彩りが灯る。
ピンク、青、黄色に緑…幾つもの淡い光が、私の部屋を照らしていた。
たくさんの星形のおもちゃ
私の視界はぼんやりと霞む。
けど、それは逃げようとしてるからじゃなくて、
涙で見えなくなってたから。
彼がくれた幾つもの光は…『きらきら』になった。




