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kirakira☆girl  作者: aotohana
1/7

drop


びーだま

ドロップ

ラムネのびん…


木漏れ日

水面

しゃぼんだま。



『きらきら』は、幸せをくれる。






隣の席の奴はまた、空をぼんやり眺めている。

望月紗香…

初めて一緒のクラスになったけど、

話したことはない。


俺も別に話すこともねぇし

こいつも俺に話しかけたりしない。




今…雲の切れ間から太陽の光だけが見える。

きらきらだ…。


きれい…。きれいなのに…なんでこんな気持ちになるんだろ。






クラス替えから1ヶ月が過ぎた…


「ヒナ、ついてないよな、高2になってすぐ望月と席となりなんてさ…」



帰り道…陸が俺に同情する。陸は1年時彼女と一緒のクラスだった。



「なんかあいつあんの?」


「いや…話かけてもたいてい無視されるし、なんかツンとしてんの。人を下に見てるっつーかさ、ガキの俺らの話なんてつまんねぇんじゃねぇの」



なんかすげぇ分かる気がする。

興味のなさそうな目、どうでもいいって感じ。





「広瀬、立花が呼んでる」


宮木に声をかけられた。

宮木晴…『晴』とかいて…"はる"

初めて一緒のクラスになって、最近つるむようになった。口数があんま多くなくて…静かな奴。


バカで単純ですっげ落ち着きのない陸とは、正反対のタイプだな。


けど…晴のつくる雰囲気はそれはそれで、居心地がいい。



廊下側に視線を移すと、立花夏希が顔をのぞかせた。夏希は陸の幼なじみだ。陸を通して俺もわりと仲良くなった。


「ねぇ、今日みんなで遊ばない?マコも呼ぶから」


「あ…悪い、今日宮木たちと帰っから」


「ねぇ、ヒナじゃあ、夜メールしていい?」


彼女の大きな瞳が揺れる。

こういう風に甘えてくる、夏希を正直可愛いって思う。すっげ女の子って感じがする。守ってやりたくなるって感じ。


「あぁ…いいよ」


陸…早く気づけばいいのに…。







男子の冷やかしの声が聞こえて、視線を移動させる。教室…入り口のドアんとこ、広瀬くんと…3組の立花さん。


立花さんは…美少女で有名だ。名前を覚えるのが苦手な私でも彼女のことは知っている。


栗色のサラサラな髪、長い手足に色白の肌…大きな瞳が彼を見つめている。


彼女もきらきらだ。





マジかよ…


今日あたんのに、教科書忘れた。

……。


「なぁ、望月」


しょうがなくあいつに話しかけてみる。


隣の奴はまるで俺がいないかのようにノートと黒板を交互に見ながらペンを動かしていた。

返事はない…。


シカトかよ。


「なぁ、呼んでんだから返事ぐらいしろよ」


こっちを見ようともしない。


頭にきて、俺はペンを動かしている腕をつかんだ。


!?


何?


なんだ?こいつ…つかんだ腕震えてる。

彼女は驚いた瞳で俺を見る。


「何?」


何?じゃねぇし…話かけんなってことか。

こいつマジ性格悪い。

話すことがめんどくさくなった。


「いや、別に…」


俺は望月の手を離した。




駅のホーム


あいつはイヤホンをつけベンチに座ってる。

すかしたかんじ。


腰までありそうなふわふわな髪は、人が行き交うホームの中…どこか目立っていた。



けど…なんか、様子変じゃね?



「広瀬…どした?」


宮木は気づいていない。立ち止まった俺に、不思議そうに声をかける。


別に関係ねぇし…


踏切の音がなり、電車がやって来る。

あいつだって、あれに乗るはずなのに、動こうとはしない。



「おい、行くぞ」


俺たちは電車の方へ向かって歩きだそうとするけど


……。


「宮木…すぐ行くから、先乗ってて」


なんなんだよ、マジでさ…。




なぜか、望月の前にいる俺。


「お前なんか具合悪い?」



「平気…たいしたことないから」



望月は俺の方も見ずに淡々と答える。



拒否…また「話しかけんな」…か。

まぁ、別にどうでもいいけど、お前なんてさ。





駅のホーム…まだ時間がある。ベンチに座り、イヤホンをつけるとまぶたを閉じる。


現実との遮断。

心地よい音楽が私の耳に流れる。

嫌なことは見ない。


でも…


ふっと浮かんできてしまった、両親の顔…そして先程まで心地よかった音楽に変わり、怒鳴り声が聞こえたような気がした。


あわてて目を開ける。

現実だ…。


キリッ…おなかを守るように押さえた。

胃がいたい…


さらに前かがみになった。




突然私の視界に、見たことのある制服のズボン。

上を向くと…なぜか広瀬日向が立っていた。



「お前なんか具合悪い?」



『平気…たいしたことないから』


私は早く立ち去って欲しくて、いつもの口調で言う。


彼からため息がもれた。


「めんどくせぇ奴…」


そっちが勝手に話かけてきたんじゃない…



「…これ、開けてないから…。さっき買ったやつ…」


広瀬くんは、鞄からペットボトルをとりだすと、ベンチに置き、そのまま行ってしまった。



……。


電車が発車し、再び静まり帰ったホーム。

私はペットボトルに手を伸ばす…


それは、光をわずかに反射して…

きらきらしていた。


再び私は目をとじる。

ひんやりしたペットボトルを頬にあてながら…。







「広瀬くん、これ」


隣の奴から机に置かれたのは、缶に入ったドロップ。


ドロップ?

つか、初めてこいつに話しかけられた…かも。



「これ何?俺にくれんの?」


「昨日の水のお礼」


俺、甘いもんあんま食えねぇんだけど…

彼女の中で俺への会話は終了したのか、もう視線は窓の外だ。



ほんと、なんつーか変な奴。

俺は懐かしさがただようドロップ缶をあけて、出そうとする。


振りすぎたのか、大量にでてきて、手からドロップがこぼれ落ちた。


緑に黄色、そして桃色。


「あ…悪い」


一応もらったやつだから、落として罰が悪い。


さっきまで空を見ていたはずなのに…彼女の瞳はいつのまにか俺を見ている。


「なにやってんの?」


そして吹き出した。


「なぁ、俺こんなに食えねぇから、お前も食う?」


大きくなった、彼女の瞳がまた俺を見る。

そして…


たくさんのドロップ…

俺の手のひらから桃色のドロップを1つとると、口に入れた。



「おいしい…、ね」


最後に見せたのは、ふわふわな笑顔だった。




カシャカシャ音がなる


電車の中…


俺は橙のドロップを口に入れた。


甘い…。







隣の席の広瀬くん。

短い黒髪をいつもたててる。

迷いがなく思ったことを口にする彼を…こわいって思う。私の守るものをどこか壊されそうで…話したくなかった。



なのに…





お礼は一応した方がいいって思って

大好きなドロップをあげることにした。


彼の反応は…いまいちだったけど…

なんか…手のひらいっぱいにドロップで…

面白かった。



高校に入って、こっちに来てからはあんま人と関わらないようにしてた。


世界が曇るの嫌だから。

きらきらの世界にいたいから。



婆ちゃん…待っててね、

もうすぐ会いに行くから。




きらきらだった…はずなのに…

私の世界がまた曇っていく。

色はちゃんとある…けど、ぼんやりかすんでいる。


!?


腕をいきなりつかまれた。


こわい…


力強い…


勝手に身体が拒否をしていた。






いつからだろう…緊張したり、焦ったりすると突然耳が聞こえなくなるようになったのは。視界がかすむこともある。


病院で調べたけど、異常はないらしい。


婆ちゃんが言うには…今私がいる世界から逃げようとしているからなんだって。



『逃げてもいいんだ』って婆ちゃんはよく言った。


でも、私は逃げたくないのに…意味がよく分かんなかった。





泣きながらお母さんは私にこう言うの…


「紗香はお父さんにそっくりねって」


お母さんはお父さんのこと嫌いじゃない

じゃあ似ている私って…


私、いったいいつまで愚痴を聞き続ければいいの?


お父さんの怒鳴り声…心臓が毎回とまりそうになる。こわい人…。いつも力で私やお母さんを捕まえようとするから。



私…どこに逃げればいいの?






夏希からもらったジュースを飲んでたら、

隣から視線を感じた。



「なに?気持ち悪りぃんだけど」


「ねぇ、そのジュースどこで買ったの?」


は?


「知らねぇし」


「そっか…」


望月との会話はそれだけ。

なんだか、よく分かんねぇ。






放課後、駅前のファーストフード店。

陸と夏希、マコと俺で腹を満たしていた。


陸と俺は一気にハンバーガーを胃袋に入れていく。

そんな俺たちを、夏希たちは呆れて見ている。


ズズズーッ

俺のストローから音がなった。



「ねぇ、ヒナ私の飲む?まだ口つけてないし」


夏希が自分の飲み物をくれようとした。




「夏希、これ何頼んだの?」


「サイダーだけど…」


サイダー?


あ…そういや…


「あのさ、こないだ俺にくれたアレ、あのサイダーってどこで売ってんの?」


「なに?ヒナ気に入ったの?」


「ん…いや…まぁ」


「あれね、商店街のお米屋さんで売ってるの、一応限定だよ」


あ…あそこの無愛想なおやじがやってっとこか。


「何ヒナ買いに行くの?」



「いや…別に買わねぇし…ただ…聞いてみただけ」




突然、私の目の前にキレイなびんが置かれた。グリーンがかった淡いブルー。


「やる」


そのまま、隣の席の彼は…宮木くんの方へ行ってしまった。


欲しかったびん…きらきらだ。

優しい色…。


知らないって言ってたのに…なんで?


黒板の近く…宮木くんと話す広瀬くんは、何事もなかったかのように笑ってる。




なんで俺こんなん買ってんだろうな…


ビニール袋にはサイダーのびんが2本入っていた。


帰り道は、まだ暑くて…俺は1本をあけた。

揺られたせいか…しゅわっと泡がこぼれた。


甘い…


俺、やっぱりサイダーあんま好きじゃない。




興味がなさそうなクールな瞳に、今だけ俺がいる。

何でもないふりして渡した。

宮木と話ながら、ふと…あいつを見る。


ヤバイ…。俺は慌ててて目をそらした。


不思議そうに、俺のさっきまでの視線をたどっていく宮木…


「あれ、望月…笑ってる?」


……。





「ありがと」


席に戻ると、隣から低いトーンの声が聞こえた。

あぁ…サイダーのことか。

言った後、彼女はすぐそっぽを向く。



「別に」


俺も一言だけ。


それだけ…。




次の日…


「広瀬くん、あげる」


小さなビンにつまった…こんぺいとう?

いったい何?



「これ、俺にくれんの?」


「そう、びんのお礼」



「びんってなんだよ」


俺は吹き出す。ドロップの次はこんぺいとうって。


「あのびん、すごくキレイだから」


まただ…ふわふわっと、こいつは笑う。


サイダーじゃなくて、望月はどうやら、そのびんが欲しかったらしい。


「びん集めてんの?」


大きな瞳が俺をみて揺れる。こんな表情も初めてみる。なんか壊れそうだ…



「…きらきら集めてんの」


は?

何きらきらって?




『きらきら』のことを広瀬くんに教えた。


誰にも教えたことなかったのに…


なんで教えちゃったんだろ。


!?


何かが割れる音、泣き叫ぶ声…

私は慌ててて音楽のボリュームをあげる。


何も聞こえない…私の世界。





「おい…なんかお前顔色悪いぞ」


……。


少しずつ、話できるようになったと思ったら、またこれだよ。


返事すらしねぇし。


マジで汗でてきてんじゃん、冷汗っていうんだっけ…。


「先生、こいつ具合悪そうだけど…保健室連れてっていい?」


しょうがなく…俺は担任に伝えた。

立ち上がった俺に、反応し、望月はびくっとする。


俺を見あげた望月は…泣いていた。

あ…やべぇ…


慌てて俺は手で、望月を目隠しする。

そのまま、ざわつく教室から連れ出した。





泣いてるの他の奴等にバレてないといいけどな…



保健室、先生がいてくれて、任せてすぐに俺は出てきた。


手にはあいつの涙の感触…。


鼓動がはやくなる…なんだよ、これ…。





教室に戻ったら冷やかしが待っていた。

そんなんじゃねぇし、ただ隣だから気づいただけだって。


めんどくせぇな。


休み時間になっても、からかわれた。

なぜなら、陸と夏希がやってきたからだ。


「ねぇ、いつのまに仲良くなったの?」


2人同時だった、さすが幼なじみ。


別に仲良くねぇし…


「ヒナはああいうタイプが好きだったの?ショック」


夏希が面白がって言う。

タイプって、別にそんなんじゃないし、俺が可愛いって思うのは夏希みたいなタイプで…


「え~、俺はあんな冷めてる気の強そうな女…嫌だな…それなら、まだ夏希の方がいいかも」


陸がノー天気なことを言う。

この鈍感野郎…ちらっと夏希をみると頬をピンク色に染めていた。


やっぱこういうの…可愛いよな。


「でも、マコはほんとショックかもよ」


夏希が意味深なことを言った。





なんで涙なんて出たんだろう。

泣き顔なんて見られたくなかったのに…。


瞼に彼の感触が残ってて…なんだか恥ずかしくなる。


広瀬くんってよく分からない。





「なぁ、これ何?」


俺の机の上に、小さな丸いゼリーが3個置かれた。



「こないだの、お礼」


いつもの淡々とした口調だ。


ドロップ、こんぺいとうの次は…ゼリーって…。


「なんで、お前いつも変なのくれんの?」


珍しく俺の発言に反応を示す。


「変じゃないよ…『きらきら』だから…」



意味わかんねぇな…だから何きらきらって?


「前にも言ってたけど、『きらきら』って何?」


「…きらきらしているものって、なんか好きなの。

こないだのびんも綺麗だったから…」


俺は机の上に置かれたゼリーを見る。

「なぁ、これも『きらきら』なの?」


小さくうなずく…。

なんとなく、分かった。


ドロップもこんぺいとうも『きらきら』なんだ。


「じゃあさ、あれは?」


俺は教室の上の方…蛍光灯を指差す。


「あれは…ピカピカじゃないかな…」


やっぱよく分かんねぇ。俺はなんか笑ってしまった。望月紗香…ほんと変なやつ。






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