プロローグ:彼女の声は
真っ白な部屋…ここはどこだ?隣にいるのは…何これかわいい。天使?
…と思ったらすやすや眠る山倉でした。
病院の一室。俺はベッドの上で目が覚めた。あぶねぇ。この小説天国行ったことでバトルもんにシフトするかと思った…俺はラブコメがいいです。ええ
「起きたか、とーくん。」
この声は…
「母さん。わりぃな仕事ほっぽり出してきちまったのか?」
「いんや。有休だ。昨日これなかったしな。」
「昨日?」
「ああ。お前が轢かれたのは昨日だ。」
「マジか…」
一日寝てたのか…やべぇな。
「その子の母親に金はうちが出すと言われたが断っておいた。とーくんもその子の家にお金を払ってもらうのも罪悪感がわくだろう?」
「…ん、まぁ、な。…やっぱ気づいてたか」
「うちの息子がヒーロー気取りの中二病でやったことだから気にしないでほしい、と言っておいた。」
「あんたは半分配慮ができてないよな。」
「よせやい。照れちゃうだろう?」
「うん。悪口だったんだけど。」
相変わらずうちの母さんはわからない。俺は山倉の寝顔を見ながらそう考える。こいつにも心配をかけてしまった。でも彼女が轢かれて、剣道が二度とできないなんてなったら、きっと彼女は笑わなくなる。俺も、笑えない。母さんは俺の状態を淡々と話してくれた。
「…奇跡だそうだ。トラックにはねられ気絶したにもかかわらず、青あざが三か所できただけらしい。」
「…入院はしなくていいのか?」
「いや、三日…正確には明日一日は入院だ。」
「検査入院?」
「まあそんなとこだな。」
母さんはそろそろ帰る、と言って帰って行こうとした。十九時なので山倉も連れて帰って貰おうと山倉を起こすと、俺の顔を見た途端、彼女は大泣きしてしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!山岸君のばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐふぅ」
泣きながら俺に抱きつく彼女。いててててててっ!あざっ!あざ触ってるぅぅぅ!
「心配したっ!私なんかを助けるために山岸君がずっと起きなくなったらどうしようって!」
「…ごめんな。」
「…でも」
「でも?」
「…ありがとう。」
消え入りそうなはずのその声は、なぜか俺の耳にははっきりと正確に聞こえた。