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プロローグ:二人の啓。

「…啓はどうしたんだ?」

「二重人格って聞いたことあるでしょ?あれなのよ啓介は。昔の性格の『啓君』と今の性格の『啓介』。この二人。啓介の中にいるの。」

「初耳だな。」


情報屋が言う。こいつが知らないならかなり知られてないんだろう。


「啓君出てくるときは大体私に何かあった時なの。」

「じゃあ戻るときは?」

「五時間ぐらいたったら戻ったから今回も多分…」

「ここちゃん達何の話してるの?」

「な、何でもないよー啓君!」


ここは飛行機の中。今回の事件で帰るのが遅れてしまったので大岡の金で飛行機に乗ってる。愛鈴は脳にも異常がなくすぐにでも退院できた。…問題は啓の方だった。


「?…ここちゃんもクリア君も変だよ?」

「な、何でもないよーホントに!」

「?」


そう…記憶喪失ではなくもう一人の啓なのだ。記憶はある。ただ性格が…


「ここちゃん…眠い…」

「そーかーよしよしおねんねしましょうねー。」

「そんなに子供じゃ…むにゃむにゃ。」


甘えん坊になってるのだ。幼児っぽくなってると言うか…まあ昔の性格ならなるんだろうが。


「クールな花宮からは想像できんぞ。」

「くーちゃんもそう思った?」

「確かにな。」


空牙さん、茜音、情報屋が口々に言う。


「…ここちゃん大好き。」

「はいはい私も大好きよー。」

「またそうやって…軽く…むにゃむにゃ。」


軽く凄い会話が聞こえるんスけど。


「はぁ…まったくこの子は…」

「こころん、お疲れだね。」

「この子は甘えん坊過ぎるとこがあるのよねー。」

「見てりゃわかるよ。」


思わずツッコんでしまった。


「お前らとりあえずそこまでだ。そろそろ着くぞ。」


大岡の言う通り飛行機はすぐ着陸態勢に入った。


着陸すると空港には愛鈴の両親が来ていた。…愛鈴は母親似らしい。茶色がかった髪、たれ目なんかがそっくりだ。


「…すいません私の監督責任です。」

「すいません…私を守ろうとしてくれて…」

「いえ、悪いのはあなたを襲った生徒たちですよ。あなたも先生も悪くありません。」

「そうですよ。生徒がそんなことで喧嘩をするなんて考えられませんもの。」

「ですが…」

「おじさん、おばさん。ここちゃんを守れなかった僕が悪いんです。」


啓の言葉に驚いたのか一瞬愛鈴の両親は目を見開いたがすぐ啓君のことを思い出したらしい。


「啓君のせいでもないよ。」

「おじさん…」

「啓君…いや啓介。」

「え?ここちゃん?」

「いい加減戻んなよ。それはあんたのもとの性格じゃないでしょ?」

「…」

「昔お医者さんが言ってたでしょ?あんたが出てくるのは押さえつけてる自分の気持ちが原因だって。」

「…うん。」

「押さえつけてる気持ちがどんなのか知らないけどさ。ちゃんと向き合ってきてよ。」

「…」


泣きながら愛鈴は続ける。


「私はっ、啓君も啓介も大好きだからさっ!」

「…うん!」


啓はそう返事すると目を閉じた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

「…よう。」

「ん。」

「やっぱりか。その気持ちであってるんだな。」

「うん。僕に有って君にないのはこれだけだよ。」

「これを貰ったらお前は出てこないのか。」

「たぶん。…だからもうあの子をあんな目に遭わせちゃだめだよ。」

「おう。じゃあな。俺。」

「じゃあね僕。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

啓が目を開けた。


「何泣いてんだよ心。しっかりしやがれ。」

「啓介お帰り。」

「…ただいま心。」


そうして彼は自分を取り戻した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「…結局さ、押さえつけてた気持ちって何だったの?」


二人っきりになった帰りのバスで私は啓介に聞いた。


「ん。ああ…お前が『好き』だって気持ちだよ。」

「ふーん…え!?」


顔が火照る。啓介の顔をうまく見れない。


「だから俺はお前のことが好きだ。お前は?」

「…えっと…」

「早く言えよ。」

「わかったわよ!私も…好きよ。」


この日から彼に言えなくなったことが一つできた。


夕日の差すバスの中で見た…


「そっか。」


その時の彼の笑顔が一番かっこよかったってことが

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