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犬耳少女と、ある朝のご主人様。

 


 どうもこんにちは、なのですよ。

 チカなのですよ。今回はわたしが、ご主人様を観察するのです。

 ご主人様はちょっと冷たい人なので、弱点てきなものが発見できると、わたしは少しだけ嬉しいのですよ!

 それに、ただでさえご主人様はわたしに仕事を与えなすぎなのです。わたしたちの本分は、ご奉仕なのですよ。

 ご主人様の弱点をみつけて、それを盾に仕事を譲ってもらうのです!


 ◇


 AM5:00


 ご主人様の朝は早いのですよ。

 早すぎるのです。そして寒すぎるのですよ、ぶるぶる。


 ふわぅ……わたしはまだまだ眠いのです。眠すぎるのですよ~。

 わたしには尻尾はないですが、あったらきっとあしの間に挟んで、丸くなって眠ってるですよ。

 でも今日はご主人様を観察するという使命があるのです。ここで倒れるわけにはいかないのですよ!


「ふむ、今日はスクランブルエッグの日か。楽でいい」


 ご主人様は毎朝、自分とわたしの分の朝ご飯を作ってくれるのですよ。

 最初の朝はご主人様が買って来たドッグフードが食卓に置かれていましたが、わたしはそんなものは食べないのですよ!

 犬ではありますが、犬ではないのです。ご主人様はそこらへんの浪漫がわかってないのですよ!


 朝ご飯をつくる。本来ならそれはご主人様のペットであるわたしの役目なのですが、正直ご主人様より早く起きるなんて無理なのですよ。

 だからわたしは毎朝毎朝ご主人様のつくってくれた朝食を食べるのです。ご主人様のご飯はおいしいですが、こんなことだからご主人様には犬畜生扱いをされるのでしょうか? ちゃんと働かないと、同居人ペット失格なのですよ。


 ……あれ?わたしの分の朝ご飯はないのですか?いつもは用意してあるのに、どうしたのでしょう?


「こんなものか……いただきます」


 ご主人様はいつも朝早くに起きて、ひとりでごはんを食べていたのですよ。

 なんか、すごく申し訳ないのですよ。

 今日の朝ご飯は、白ご飯にスクランブルエッグなのです。

 ご主人様の料理はおいしいですから、これだけでもよだれがでてきそうですよ。とはいえ、いつもより簡素なのです。今日は忙しいのでしょうか?


「ごちそう様でした」


 ご主人様がきちんと手を合わせます。

 ご主人様はとても礼儀正しいのです。そして食べるのも、ものすごく速いのですよ。

 と、ご主人様が移動をはじめました。

 って、お皿洗いですね。そのくらいは残しておいてくれれば、わたしがやるんですよぅ。むしろやらせてくださいです……


「さて、いくか」


 ご主人様はお皿洗いをおえると、エプロンを外しながら玄関に向かうのですよ。

 格好は濃灰のジャージ姿なのです。いつもの格好ですが、ジョギングにでもいくのでしょうか?


 ◇


 AM5:30


 ご主人様は今、近くの結構おおきな公園にきているのですよ。

 どうやらこの公園の周りをぐるぐると走るようなのですが……ご主人様は化物なのですか?

 さきほどから、“犬”の血を受け継ぎ、身体能力にはかなりの自信があるわたしの全力疾走以上のペースで、かれこれ一時間以上走り続けているのですよ?


 ぶっちゃけ、ありえないのです。流石はわたしのご主人様なのでしょうか。


 ◇


 AM6:40


 公園から家までは、ゆっくり歩いて10分くらいなのですよ。


 そしてご主人様はへとへとなのか、なんなのか、すごくゆっくり歩くのですよ。

 あ、でも行く時もゆっくり歩いてましたから、きっと性分なのですね。


 ご主人様は家に帰ってくると、すぐにお風呂場にいってしまいました。

 きっと汗がびっしょりなのでしょう。

 こんなときにそっとタオルを差し出すのがわたしの役目なのですが、残念なわたしは、今頃まだ熟睡している時間帯なのですよ。

 こんどからはもうすこし早く起きれたら……いいのですよ。


 シャァァァ……


 シャワーの音が聞こえるのです。

 わたしは犬耳がついているので、音がよくきこえるのですよ。


 ……ご主人様のシャワーシーン……


 と、と。危ない危ないですよ。なにも考えてなどいないのです。

 あやうく飼い主さんにたいしてふらちな妄想をはたらかせるところでした。顔が熱いのです。

 まったくわたしは……たいして役に立たないくせにこういうところは一人前だなんて、ご主人様にしられたらピンチなのですよ!

 ご主人様は一緒に寝たりしても、一ミリたりとも手をだしてはくださらない、潔癖なお方です。

 最悪おいだされてしまうかもなのですよ。それは困るのです。

 わたしは飼い主さんがいないと生きていけないのですから。


 ガチャ


 どうやらご主人様があがってきたようなのです。

 タオルや着替えを用意したいですが、そうするとかくれて観察の意味がないのです。がまんなのですよ。

 もっとも、ご主人様ならお風呂にはいる前に用意をすませている可能性が高いのですが。


 ◇


 AM6:55


 ご主人様は再び台所ですよ。

 運動したので二回目の朝ご飯でしょうか?


「ふぅ、できあがりっと」


 ご主人様がつくっていたのは、さっきとおなじスクランブルエッグ……ではなく、ベーコンエッグでしたよ。

 ベーコンがはいって、よりおいしそうなのです。

 そしてお味噌汁です。インスタントじゃないお味噌汁なのですよ。

 それをなぜか一人前しか作らないのです。ものすごく作りずらそうなのです。

 というか、わたしの分の朝ご飯は……?

 いえ、別にねだっているわけではないのですが、いつもは食卓に置いてあるので、ちょっと不思議に思っただけなのですよ?


 ご主人様はそれらプラス白ご飯を食卓におくと、エプロンを外して、どこからかとりだした犬笛をふきました。


 ピィーーッ!


 毎朝わたしは謎の高音で起こされるのですが、正体はこの犬笛だったようです。

 ということは、いつもならわたしはあと3分ほどで二階にある自分の部屋から降りてくるのですよ。

 わたしは寝起きはいいのです。


 ご主人様は犬笛をポケットにしまうと、リビングのソファの上にあるカバンをとっていって、そのまま玄関へ。ご主人様の格好は、いわゆる制服というやつです。

 きっとこれから学校なのですよ。


 て……? あれ?


 この朝ご飯は食べないんでしょうか? 

 食べないならわたしがたべちゃいます……よ……。


 って、これもしかしてわたしの朝ご飯ですか!


 毎朝毎朝あたたかいのに、ご主人様は家にはいないものだからずっと不思議におもってたんですが、出かける直前に作ってくれてたんですね……

 しかも自分の朝ご飯より豪華なのですよ。申し訳なさがマックスゲージなのですよ!


 ううぅ、ご主人様。ありがとうございます……


 わたしは無心でご主人様のご飯をかっくらいます。

 おいしい、おいしいのです……でもなんだかしょっぱすぎる気がするのですよぅ……


 ご主人様のことは、最初はちょっと冷たい人だとおもってましたが、とんだ勘違いだったのです。

 本当はすごく優しい人だったのですよ!

 自分が恥ずかしいのです。観察ももうやめにするのですよ。

 ご主人様の学校がどこか知らないですし。


 みなさんには申し訳ないですが、今回はこれでおわりなのですよ。


 わたしはこれから、お皿を洗って、ご主人様が掃除したお部屋を重箱のすみをつつくようにきれいにして、ご主人様が夜に洗って、すでに干されている洗濯物のしわをのばして、最後にこの家で一番ちらかっているであろうわたしの部屋を掃除しなくてはいけないのです。


 ……ほぼ全部やらなくていいようなことなのは、秘密なのです。

 わたしの部屋のいたっては、ほっといてくださいです。わたしたちは他人に奉仕するのが専業であって、自分のことはてきとーなのです。


 ◇


「ただいま」

「あ、ご主人様! おかえりなさいですよ!」

「そういえばチカ」

「なんですか?」

「なぜ今朝は俺の後をこそこそとつけていたのだ? 不審だぞ?」

「めっちゃばれてたです!」



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