犬耳少女と、登校。
「ごっしゅじんさまと~がっこう~♪」
「どうしたチカ。朝からそんな調子の外れた歌を歌って」
「いや~、チカは幸せだなーと思いまして。念願の学校ですからね。頑張るのです!」
「うむ、それは良い心がけだな」
「はいなのです! と言う訳でご主人様……あの、このスカーフをですね、結んで、」
「自分でやれ」
「……ですよねー」
◇
「おっはようチカちゃん!」
「工藤さん! おはようなのですよ!」
「やだなぁもう。巫女でいいよ、巫女で」
「そうですか? ではお言葉に甘えて。ミコさんっ」
「ほら千日君、これが正しい反応だよ。だから君も恥ずかしがらずにアタシのことをミコちゃん♪ と愛をこめて……」
「おはよう、工藤さん。しつこいな」
「おうふっ。これはまた手厳しい」
「まぁ人の呼び方なんぞ、個人の自由だろう。常識の範囲内で嫌がられない呼び方であれば何でもよかろう」
「えー。なんでもいいんだったらミコちゃんでもいいじゃん」
「工藤さんの方が呼び慣れているからな」
「でもアタシ、工藤って呼ばれるの嫌だなー。ほら、相手が嫌がってるよ? ここはもう、呼び方をミコちゃんに改めるしかない流れっしょ」
「……嫌なのか?」
「うん」
「……本当に?」
「う、うん……」
「もう一度だけ、聞いてやろう。
本当に、嫌なのか……?」
ゴゴゴゴゴ
「……。
すみません、嫌じゃないです千日さん」
「ならよし」
「ご主人様……教室で無駄に殺気を放つのはやめて欲しいのですよ……」
「うー、チカちゃんは名前で呼んでもらってるのにー……」
◇
「おーい、田中ー」
「ん? あぁ委員長。どうしたんだい? まさか、俺に愛の告白でも……」
「生徒会のお客さんきてるよー。なんかクリスマスイベントがどうたらこうたらって」
「あー、そのことか。ありがとねー委員長! 愛してる!」
「死ねよ屑」
「うわすげぇ直球! 俺そんな嫌われることした!?」
「だって田中、会う女子皆にそういうこといってるじゃん」
「えーそんなことな……あっ、椿さーん! すみません待たせちゃって!
お詫びに俺からキスのプレゼントを……」
ドゴンッ!! バリィン!!
「……え? 田中君? え?」
「……千日君。ちなみに今の、新技ー?」
「うむ。良く分からんが発勁的なものらしい。なんとなく教わってなんとなくやってみたら、できた」
「ご主人様は相変わらず意味わかんないのですよ。
あと、さっきの田中とか言う人、窓から落ちていきましたがここ三階ですよね? 大丈夫なんですか?」
「「あいつは大丈夫」」
そして実際田中は、何故か捻挫程度の傷で済んだらしい。無駄に悪運の強い奴だ。
◇
「しかしながらご主人様。さっき言ってた生徒会って、あれですよね? あの、学校で一番偉い人の集まり……」
「いや、そんなことはないと思うが」
「? そうなんですか?」
「漫画の読み過ぎじゃないかなーチカちゃん。実際の生徒会は、只の雑用係みたいなもんだよ。それこそ、田中みたいなやつが入れるくらいだし」
「……あ。それもそうなのですねー。
ちなみに田中さんの役職は?」
「確か、副会長だったか?」
「多分。あいつめったに表に出てこないから、皆忘れかけてると思うけどねー」
「だな」
「……なんていうか、田中さんの立ち位置が完全に理解できた気がします」
◇
「……っふー。ただいまなのですー」
「ただいま……おかえり、チカ」
「はい! ご主人様も、おかえりなさいなのです。
……なんかこれ、いいのですね。ただいまって言って、おかえりって言って。
ふふっ。私とご主人様のらぶらぶ度が、上昇した気がします!」
「さて、では俺は早速買い物に出かけてくるかな」
「あ、スルーですかっ!? スルーなんですかっ!?」
「いってきます」
「いや……うう。
いってらっしゃいなのです……」




