犬耳少女と、寝床。
「ふむ。では名前も決まったことだしな。俺は寝るぞ」
「あ、はい。お休みなさいませです」
「トイレの場所は覚えたか?夜中に俺を起こすなよ」
「それはペットというか子どもですよっ!」
「同じようなものだろう?」
「さらっと酷いこと言ってますよ!?」
「ではな」
◇
「……」
「……すぅ」
「……」
「あの、すいませんですよ?」
「……」
「あの」
「……ん。なんだ、まだ寝出して5分とたっていなぞ」
「いやそれはそうなんですけど、ってか寝付きいいのですよ、じゃなくてその」
「なんだ」
「わたし、どこで眠ればいいのですか?」
「そういえば寝床を確保していなかったか……」
「はいなのです」
「うむう……」
「……どきどき」
「面倒だ、ここで寝ろ」
「……え、えぇぇー!!っぐはぁっ」
「うるさいぞ」
「はい、すいません……ハードカバーの本はないと思うのです……」
◇
「あの、ほんとにここでよろしいのですか?」
「仕方ないだろう、俺はもう布団からでたくはないぞ」
「では、失礼して……ごそごそ……あ~、暖かいのですよ~」
「明日からはちゃんと寝床を用意してやろう。今日はもう、寝る」
「はい、なのです」
「……すぅ」
◇
「あの、ご主人様?」
「ご主人様?」
「ホントに寝てますか?」
「ほんとにほんとに寝ちゃってます?」
「あの、仮にも年頃の少女が同じ布団にいるのですよ……?」
「……」
「なんという寝付きのよさですか。身構えてたわたしが馬鹿みたいなのです……」
「はぁ、……ご主人様、あったかい……」
◇
ぎゅう
「はうぁ!」
「どど、どうしましょう、これは、抱きつき返すべきなのですか?」
「ああ、でもそんな」
「あわわわ、近いのです」
「って、ん?こ、れ、は」
ぎゅうぅぅ!
「はぁうぁぁ!!」
「く、苦しい、苦しいのです!」
「ギブっ!ご主人様、ギブなのですよ!!ギブギブぐはっ……」
「……むにゃ……黙れ」
「はい、すいま、せ、ん……」
「……」
「……すぅ」
◇
「あははは、ご主人様ー!」
「はははチカー、待て待てー。はっはっは」
「うふふふ捕まりませんよ~!」
「この~。はははは」
「……むにゃ……にへら……」
「……ううむぅ……」
◇
「あははは、ご主人様ー!」
「はははチカー、待て待てー。はっはっは」
「うふふふ捕まりませんよ~!」
「ほう、言うではないか」
ぴたり
「あははは、は?」
「ここからは、本気で行くぞ?」
「ぎゃーあぁぁあ!ご主人様の目が狩人の目なのですーー!!」
「ふははは、遅い、遅いぞ!」
「ぎにゃぁぁああ!!」
「……う、うぅぅん、うぁぁああ……!」
「……ふ、ふははは……!」
◇
「……はっ!」
がばっ
「……夢ですか。良かった……」
「はっ!わたしは、重大なことに気づいてしまいまったのです……」
「オチが、無いのですよっ」
「……まぁ、いっか、です」
ぱたん
「……すぅ」