僕と世界と君と。
僕は人を愛すだろう。
僕は世界を愛すだろう。
僕は命あるかぎり歌うだろう。
生命の歌を、世界の歌を。
僕はこの世界の美しさを、暖かさを見ることができる。
伝えることができる。
空を舞う、鳥たちの夢。
さえずる、鳥たちや風、自然の歌。
見て、聞いて、そして、感じることができる。
この体いっぱいに。
命あるかぎり灯し続けるだろう。
人々を見守りながら。
誰かは突き放されたと嘆くだろう。
誰かはなんて有り難いのだろうと皮肉を口にするだろう。
誰かは自由だと叫ぶだろう。
僕はただそこにあるだけ。
何もしない。
その人の感じ方は、その人にしか変えられない。
その人の幸せは、その人にしかわからない。
僕は自分が幸せであると、歌うだけ。
命あるかぎり命の灯火を灯すだけ。
何もしないよ。
だけど、決して見放さないよ。
何もしないよ。
だけど、隣にいるよ。
君は大切な存在だよ。
僕もそうだよ。
そう、微笑むだけ。
そう、歌うだけ。
僕を偽善者と罵るなら、それでもいい。
それで君が幸せならね。
僕は、何もしないよ。
僕は、何もしないよ。
ただ歌うだけ。
ただ見守るだけ。
ただ愛するだけ。
人を、命を、自然を、世界を、宇宙を、全てを。
ほんの少し光が見えてきた。
もう、朝だね。
僕は、君におはようと言うだろう。
僕は、世界におはようと言うだろう。
僕は、全てにおはようと言うだろう。
僕は自由だからね。
お昼に近づいてきた。
日差しは柔らかくなり、空気は暖かくなってくる。
僕は、君にこんにちはと言うだろう。
僕は、世界にこんにちはと言うだろう。
僕は、全てにこんにちはと言うだろう。
僕は、幸せだからね。
夕方になれば空はもう紫色だ。
夕焼けは美しくて、日の入りもまた、光で僕らをつつみこんでくれるだろう。
僕は、君にこんばんはと言うだろう。
僕は、世界にこんばんはと言うだろう。
僕は、全てにこんばんはと言うだろう。
僕は、生きているからね。
辺りが暗くなって、光が地上を照らしだしたね。
星の光が見づらいけど、冷え込んできて、やがて君は眠気に襲われるだろう。
僕は、君におやすみと言うだろう。
僕は、世界におやすみと言うだろう。
僕は、全てにおやすみと言うだろう。
そうやって繰り返し繰り返し何もしないけれど、決して見放すことなく君のそばにいるよ。
世界は、きっと君が思うより大きいだろう。
宇宙は、きっと君が思うより簡単な摂理を僕らに与えてくれているだろう。
全ては、きっと君が思うよりずっと優しいだろう。
そして僕は、どこにでもいるありふれた存在で、同時にどこにもいない、たった一つの存在なんだ。
そばにいるけど、きっと見えないよ。
見えないけど、きっと見えるよ。
僕はどこにでもいるよ。
そこら辺の石ころに、そこら辺の空気に、そこら辺の塵の一つに。
今日も笑って君に挨拶をするだろう。
明日も笑って世界に挨拶をするだろう。
ずっとずっと先も笑って全てに挨拶をするだろう。
難しい事はね、実は簡単な事なんだよ、と笑いながら。