第三話 隠し事
「そんな、コンビニ行かね?みたいに………行くけどッ!」
「よっしゃッ!決まりッ!じゃあ、早速………あ、こっからのこと、シル婆達には内緒だぜッ!!〝超人変身〟!!」
「〝獣変身〟!!」
「はい?」
ダイヤが何か叫んだ直後、ユウキも後を追った。ダイヤとユウキ、二人の体が雷が直撃したかのように光を放つ。
シルバー婆さん達に内緒とか言っといて光んなッ!!
その眩しさから顔を背け、目を腕でかばった。光が収まったの感じて顔を二人に向け直す。
ダイヤとユウキは、ダイヤでもユウキでもゲートでもロードでもなくなっていた。
ダイヤの方はゲートの子ども頭身から一変、大人の頭身の黒いロボ…?いや、黒い光沢が輝くメタリック装甲を全身に纏った人型プラモデルのような姿に成っていた。
頭部の黒いフルフェイスヘルムの目に該当する箇所は電子的な赤い光を……!放ってはいなかった。
そして、最も特筆すべきは両手の拳銃……いや、両手が拳銃そのものになっていた……!!?
「〝両手拳銃マン!!〟」
「名前ダサーッ!!見た目、イイのに……。てか、なにこれ……?」
困惑の答えを得ることはなかった。
ユウキの方は、犬ッ!?いや、狼か………狼ッ!?さっきまでユウキの居た場所に居るし、ユウキだよな……?
四足歩行でちょっと長いフサフサの毛が全身を覆っていて……撫でたい、ワシャワシャしたい…
……あれ?これって、確か……ユウキの絶滅動物図鑑のお気に入り過ぎて、図鑑が勝手に開いちゃうくらい折り目のついたページの……
「〝ニホンオオカミ〟!!」
「名前そのまんまーッ!!ってなにこれ……?」
「超人「獣変身!!」」
だから、それがなんだよって話だよ。
ユウキはそれ喋れるんだ……。
どうやら、ダイヤとユウキは日本での死後、神を名乗る爺さんと出会ってちょっとした面談をしたらしい。
「変身能力が欲しいって言ったわけじゃなくて、病気にならない強い体にしてくれって言ったらこうなった。」
ああ、切実な願いだ……。間違いなく強い体だ……。
「僕も…僕は弱い心はいらないって言ったんだ……」
うぅ……ユウキィ……。それで、本能マシマシな野生な姿に……。
ちなみに二人の変身は両手拳銃マン、ニホンオオカミ固定ではなく、それぞれ好きな姿、好きな動物に成れるそうだ。俺は………
「………。……会ってない。……てかさ、二人はケンタウロスに成れんの?」
「「ケンタウロス?」」
「そう、上半身が人で、下半身が馬の」
「超人「獣変身!!」」
そこに表れたのは、彫刻のようなムッキムキの男性とデカい馬だった。
「「「プーッハハハハハハハハ」」」
二人は以前からこの変身の能力を駆使して冒険しようと話していたそう。
そして昨日、ルートがヨシヒロだと判明して、そりゃあ、三人で行くでしょ、となって誘いに来てくれたようだ。ありがとう…。
三人それぞれ特別な能力でブイブイいわせてこー、と。ごめん…
「マジで何も貰ってないの…?」
「……すぅー…さーせん……すー」
「特訓だ!特訓!特訓するぞ!」
「冒険に出れるまで、まだまだ時間はあるしね。」
現在、七才のダイヤと五才のユウキはシルバー婆さんに冒険に出ると宣言したところ「十才までは孤児院で育ちな!!」と一蹴されたようだ。
「じゃあ、今日は、前に仕方なくこの広すぎる孤児院の敷地内を探検していた時に見つけた……ユウキ!」
「ハイ!砂場の底にあった地下通路の入り口らしき扉!」
「そこ、行ってみよう!」
それ、冒険なんじゃないのか……?シルバー婆さん怒らないか……?……敷地内だからいいのか、むしろいい練習………
「あッ!冒険の特訓!?俺を強くするじゃなくて!?」
「そうだよ。俺、冒険したいもん。もちろん、ヨシヒロは特別な能力が無いから、これから武器とかの特訓もして貰うけど……武器は何がいい?」
「そりゃあ、棒か剣だろ!!……冒険なんだから!!」
「「……………。」」
「え、氷魔法の使い手ですか?」
件の砂場への移動中、木っ端な枝じゃない、それなりに頼りになる木の枝を拾った。軽く振る。うん、いい感じの木の枝だ。
「名前……銘は……〝棒でも剣でもない〟…」
「カッケェーー!!!」
「おしゃれだ……」
評判は上々、気分はアゲアゲ。ネーミングの先生になってあげようか?
「〝獣変身・アナウサギ〟!!!」
人間サイズのウサギがブルドーザーのように砂を押す。ユウキウサギは雑巾掛けのような姿勢から足を回転させずに、デカデカしい後ろ足で踏ん張ってはズサーッ、踏ん張ってはズサーッと砂場中央から外へ砂を押し退けていく。
「モグラじゃないんだな?」
「うん……砂を掘るんぺ……じゃなくぺ……退かすだぺ……だぺら……。あのさ、ごめんけど…口に砂入るから、今、話しかけないで。」
ユウキウサギは作業の途中でひょいとウサギ顔を上げて俺とダイヤに注意して、作業に戻った。
ダイヤと目が合う。ニヤニヤしている。多分、俺もそうだろう。合図も無しに同時に口を開いた。
「「ユウキ!」」
「ウサギの目って赤いけどどう見えてるの?赤いの?」
「ウサギの耳ってどれくらい自分の意思で動かせるの?力抜くとロップイヤーになるの?」
「…………。」
「「ねえ、ユウキ!」」
その答えは……
「〝ウサギの砂かけ〟!!〝ウサギの砂かけ〟!!〝ウサギの砂かけ〟!!〝ウサギの砂かけ〟!!〝ウ~~サ~~ギ~のぉ~~~砂ぁ~~かけぇええええ〟!!!!」
ユウキ、キレた。
「痛ァッ!?ちょッ……ちょッ…痛ちょッちょッ……ちょまッ」
「あッ!ちょッ……俺じゃな痛ッ!……俺違ッ痛ッ……」
俺達にお尻を向けたユウキウサギのデカい後ろ足から放たれるは、砂かけなんてかわいらしいものではない、散弾銃だった……。
「アハハハハハ」
ユウキウサギはお尻を震わせて笑った。
「こんな感じでどうかな……?」
「ありがとう。でも、これ開けれるのか?」
大人が六人くらいすっぽり入りそうな大きさの床下収納の扉のような蓋だ。四角いマンホールの蓋のようにも見える。みっちり地面に隙間なくハマっている。見たところ取っ手にあたる部分もないし、何かを差し込む隙間もない。何よりデカい、重すぎてビクともしなそうだ。
「ユウキ、サンキュー!〝超人変身・全身磁石マン〟!!」
ドッガーンッ!!!!
蓋のような扉が吹き飛び上がり、ダイヤ、もとい全身磁石マンにガッチリと張り付いた。その勢いに全身磁石マンは少しだけよろめいたが、余裕な様子で耐えた。
バターンッ!!!
変身を解除した全身磁石マン、もといダイヤから扉のような蓋が砂の山に倒れた。
ボッ…ホワッン、サァーー
砂が映画が始まりそうな波しぶきのように舞い上がった。
「ゲッホ……ヴェッホ……ゲホゲホ…バ、バカダイヤ……」
「ゲッホ…ベッホ……ヴェッホ……ゲホゲホ…ケホ…こ、これ鉄…なんだゲッホ…」
「ゲッホ…ベッホ……エホ…ケホケホ…」
ともあれ、地下への扉は開いた。
蓋の下は地面を切って削った階段になっていた。一段一段、高さと幅が異なっている。歪だ。だが、冒険を感じる。
地下を進むと、ここを掘ったのはA型ではないことだけは分かる、歪みに歪んだ洞窟になっていた。
自然に出来た可能性は、歪んだ真っ直ぐ一本道に左右それぞれ同数ではない横穴、それらに対して設けられた扉と南京錠が否定していた。
「冒険の匂いがしてきたなぁ……!!扉の向こうにはお宝が………!!」
「でも、全部、鍵かかってるよ?」
「〝超人変身・鍵マン〟!!」
「重要人物みたい…」
「キーマンね。」
「大丈夫?オコ◯ザルにならない……?」
「それ、マ◯キーだろ!」
「「「ギャハハハハ」」」
ガチャリ
階段を降りたところから一番手前右側の扉を鍵マンが開けた。
三人とも我先にと覗き込んだその中には大量の本が乱雑に積んであった。
まだ文字に慣れていない俺でも分かるほど本の表紙、背表紙には同じ文字が多く見られた。
ココ……ココ……ココ…ココ…ココ・L・ドラド……ココ…ココ…ココ…ココ…ココ・L・ドラド…ココ…ココ……ココ・L・ドラド……
「これ…は……?」
ダイヤが本を一冊手に取って、開いた。
「……『…ココは子どもの世話をするのが得意、いや、子供の世話を焼くのが好きに見える…』……」
ダイヤはそこまで読んでそっと本を閉じて元の山に同じように積んだ。
「これってシルバーお婆ちゃんの……?」
「ああ、多分……。全部シル婆の日記だ…。ここはココに宛てた日記の部屋……」
「じゃあ、他の扉も……」
「ああ、きっと、今までの孤児達や俺らに宛てた日記だと思う……。」
「帰ろっか…」
「そうだな!なーんだ、お宝無ェのか!」
次の冒険に持ち越しだな、と言うダイヤの顔は全く残念そうなそれではなく、むしろ生き生きとした晴れやかな顔をしていた。
この顔を見れば、俺達三人の初めての冒険は大成功だった事が分かる。
扉を閉めて、南京錠をかける。
「凄ェお宝があったら、それ持ってココに告白しようと思ったんだけどなぁ…」
「冒険の目的、それだったのかよ!」
「そうだよ?」
だとしても、ここで手に入る物は全部シルバー婆さんの物じゃねェかな。
「ねー…。……。」
どこか生返事のユウキを見ると、階段とは逆の方向を見ていた。
「どうした…?」
「ねぇ、奥にさ、建物見えない?」




