第七章(最終章)キラキラは、どこへ行くのか
夜は、すぐには戻りませんでした。
暗くなりすぎないように、
そっと、そっと。
まるで、
町の様子を確かめるみたいに。
広場の装置は、
動かなくなりました。
歯車は止まり、
光は消え、
ただの静かなかたまりになりました。
大人たちは、
最初は困りました。
道が暗い。
仕事が遅れる。
不安になる。
でも――
夜が来ると、
少しずつ、変わりました。
空を見上げる人が、
増えたのです。
「こんなに、星があったっけ」
「前は、
数えてたな」
だれかが、
そんなことを言いました。
空から、
キラキラが、
少しずつ、落ちてきました。
多くはありません。
派手でもありません。
でも、
それは、
ちゃんとした夜の光でした。
リオは、
丘に座っていました。
もう、
キラキラは、
はっきりとは見えません。
でも、
「落ちている」と、
わかるのです。
胸が、
ほんのり、
あたたかくなるから。
「……ルナ」
となりに、
気配がありました。
彼女は、
もう透けていません。
でも、
前より、
少し静かでした。
「わたしね」
ルナは言いました。
「ここに、
いなくなるの」
「え?」
「キラキラを返す場所が、
ほかにもあるから」
リオは、
言葉を探しました。
「また……会える?」
ルナは、
夜空を見上げました。
「夜があるかぎり」
「だれかが、
さびしさを大切にしているかぎり」
「きっと」
そのとき、
ひとつのキラキラが、
リオの肩に落ちました。
小さく、
弱く、
でも、
消えません。
「これは?」
「おくりもの」
ルナは、
やさしく笑いました。
「見えなくても、
感じられる光」
風が、
夜を運びました。
ルナの姿は、
いつのまにか、
ありません。
でも、
いなくなった感じは、
しませんでした。
リオは、
丘に残りました。
空を見上げ、
夜を待ちます。
この町では、
もう、キラキラを
集める人はいません。
でも――
だれかが泣いた夜、
だれかが大切なものを
思い出した夜、
空から、
静かに、
キラキラは落ちてきます。
それは、
使うための光ではありません。
生きていることを、
忘れないための光です。
そして、
その光は、
いつも――
心に、帰っていくのです。
おわり




