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キラキラの落ちてくる町  作者: 波浪


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第二章 キラキラで動く町

翌朝、町はいつもより少し明るく見えました。


太陽のせいではありません。

道ばたのランプや、時計台の歯車、

パン屋のかまどまで――

すべてが、ほんのり光っていたのです。


「これ、ぜんぶキラキラだよ」


ルナは、リオのとなりを歩きながら言いました。

小さなびんを胸に抱え、大切そうに。


「この町はね、

キラキラで動いてるの」


リオは足を止めました。


「え? 風とか、水とかじゃないの?」


ルナは、くすっと笑いました。


「むかしは、そうだったんだって。

でも今はね、

キラキラのほうが、よく言うことを聞くの」


二人は、町の中心にある広場へ向かいました。

そこには大きな装置がありました。


歯車とパイプと、

ガラスの箱がいくつも重なった、不思議な機械。


ガラスの中で、

たくさんのキラキラが、ゆっくり回っています。


「これが、町の心ぞう」


「心ぞう……?」


「うん。

これが止まるとね、

夜が来なくなるの」


リオには、よくわかりませんでした。

夜が来ないなんて、

いいことのようにも思えたからです。


でも、ルナの顔は少しだけ曇っていました。


「夜が来ないと、

キラキラは落ちてこない」


「落ちてこないと、どうなるの?」


ルナは、びんをぎゅっと握りました。


「心が、こわれても、

光らなくなるの」


そのとき、

広場の向こうから大人たちの声が聞こえてきました。


「また子どもか」

「近づくな、危ない」

「キラキラは管理されているんだ」


黒い服を着た大人たちが、

装置のまわりを囲んでいました。


その中の一人が言いました。


「キラキラは資源だ。

あそびじゃない」


「資源……?」


リオがつぶやくと、

ルナは小さくうなずきました。


「役に立つキラキラだけ、

集めるの」


「役に立たないのは?」


「……捨てる」


リオは、胸の奥がちくりとしました。


昨夜、

自分の指に触れて消えたキラキラを思い出したのです。


「あれも……捨てられるの?」


ルナは、少しだけ笑いました。


でも、その笑顔は、

今にもほどけてしまいそうでした。


「だから、ひろってるの。

捨てられる前に」


そのとき、

広場のはずれで、ひとりの男の人が座り込みました。


肩を震わせ、

声をこらえて泣いています。


――ぽとり。


空から、キラキラが一粒、落ちました。


リオは、はっとしました。


昼なのに。

明るいのに。


「見えた?」


ルナがささやきます。


「……うん」


「やっぱり。

リオは、まだ“見える側”だ」


ルナは走り出し、

落ちてくるキラキラを、そっとびんに入れました。


でもその瞬間、

大人のひとりが叫びました。


「やめろ!

それは回収対象だ!」


ルナは立ち止まり、

リオの手を強く握りました。


「ねえ、リオ」


「なに?」


「キラキラを守るの、

手伝ってくれる?」


リオは、少し考えました。


町の装置。

捨てられる光。

夜にしか見えないもの。


そして、

胸に残る、あのあたたかさ。


「……うん」


リオが答えた瞬間、

びんの中のキラキラが、

今まででいちばん強く輝きました。


それは、

ふたりの心が、はじめて同じ方向を向いた光でした。

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