第一章 キラキラは、夜にしか見えません
リオは、町でいちばん静かな子どもでした。
笑わないわけではありません。
泣かないわけでもありません。
ただ、どちらも長くは続かないのです。
夜になると、
リオはいつも丘の上に座っていました。
空を見上げるためです。
「また、落ちてる……」
星でも雪でもない、
小さな光の粒が、
ゆっくり、ゆっくりと空から降ってきました。
それが、キラキラ。
町の大人たちは、もう見えません。
見えなくなったのか、
見ないことにしたのかは、誰にもわかりません。
キラキラは、
子どもと、少しさびしい人にしか、
見えないのです。
ひとつ、指に触れると、
胸の奥があたたかくなりました。
なつかしい気持ち。
思い出せないはずの、
だれかの声。
「ひとりで触ると、消えちゃうよ」
後ろから、やさしい声がしました。
振り返ると、
月の光みたいな髪をした女の子が立っていました。
手には、小さなびん。
中で、キラキラが眠っています。
「君は、だれ?」
「ルナ。キラキラひろい」
ルナは、びんを振って、
光を揺らしました。
「集めないとね。
この町、すぐに暗くなっちゃうから」
「暗いのは、だめなの?」
リオが聞くと、
ルナは少し考えてから答えました。
「暗いのは、こわくないよ。
でもね、
暗いままなのは、さびしいの」
そのとき、
丘の下で、何かが音を立てて壊れました。
――また、キラキラが増える音。
リオは、その音が
だれかの心が割れる音だと、
まだ知りませんでした。




