壊れた世界で旅する少女
ザクッ......ザクッ......
あたり1面真っ白な雪景色の中、少女が1人でポツンと歩いている。時刻は12時。お昼だというのに日差しなんてものは無く、夜のように暗いのに月も出ていない。彼女はこの白と黒の世界をただひたすらに歩いていた。
「もう少し...もう少し...もう見えてきてもいいはずなんだけどなぁ」
20xx年、地球が自転をやめた。
これにより、地球の運動は公転のみになり、同じ場所に留まれば太陽が顔を出すのは1年の半分。もとより、自転していた頃も1年の半分なのだが、この世界では半年に1度氷河期が訪れるのだ。よって人類は羊飼いのように世界をグルグル周るか、クマのように冬眠するかの2択になった。
そして、世界の人口は激減。比例するように人間の居住地は減り、今こうして彼女が歩いている場所も、もとは人々が住んでいた場所なのだ。
地下帝国が建設されていて、権力を持つ者はそこに住んでいるなんて噂もあるが、庶民である彼女には無関係の話だった。
「それにしても寒いなぁ、こんなに着込んでるのに...」
何枚ものコートを重ね着しているような見た目の彼女は、ポケットからデバイスを取り出して、気温を測る。そこには-81℃の記載があり、氷河期の厳しさを表していた。
「マイナス81℃かぁ。まずいなぁ、中期に入りかけてる......なんでこんな所から反応があるのよ...」
彼女は焦りと怒りを含んだまま、ザクザクと真っ白な地面に足跡をつけていく。
焦りの原因は、彼女のいる場所が氷河期の中期に入りかけていることにある。中期に入ってしまえば人間は冬眠に入らなければ、待っているのは凍死だ。
そして、怒りの原因は彼女の属する団体にあった。
その団体は、この壊れた世界の謎を解明することを目的に結成されており、所属する人数はほんの数人で、超小規模の探偵グループのようなものだった。
そのグループのリーダー曰く
「自転が自然に止まることはありえない。これは、暗部組織の陰謀に違いない」
とのことだったが、彼女は神様か何かのイタズラだろうとリーダーの言ってることを全く信じていないのだった。そして、今回の異変の調査を任される。その内容は、‟氷河期の中期に差し掛かっている地に開いた穴を調べてこい”というとんでもないものだったのだ。他の人に何とかして押し付けたいところだったが、すべて出払っており、あまり者には不幸が降り注いだのだった。
「戻ったら報酬をたんまりもらわなきゃ......」
愚痴をこぼしながらも、歩みを進める彼女はたどり着いた。
その‟穴”は月明かりのない漆黒の夜空に溶け込んでおり、遠くからは視認できなかったのだ。彼女は近づくにつれて大きくなる異質感を頼りにそれを見つけ出すと、調べ始める。
「見つけたのはいいけど......何これ? ブラックホール? 調査って何を記録すれば…」
彼女はブツブツと独り言を言いながら、真っ黒なもやもやとしたワープホールのようなものを光で照らしている。すると、その得体の知れないゲートはどんどん小さくなり、やがて消滅してしまった。
あっさりと調査対象が消滅してしまい、茫然としている少女は視線と肩を落とした。
「えぇ…」
‟挫折した際にしか見えない景色がある”そんな言葉があるように、彼女の視界にありえないものが映った。
黒か白しかないはずの世界に、赤が存在していたのだ。その‟赤”が気になり、周辺を照らすとその部分だけ盛り上がっていることに気付く。察しのいい少女はうすうす感づきながらも、雪が積もり凍っている部分を取り除いた。姿を現したのは、死体だった。
「こんなところにアイスマン…? 15か16の男の子ってところかなぁ。ゲッ…片腕無いじゃん…こういうの苦手なんだけどなぁ…手ぶらで帰ったら報酬減らされそうだし、さっきのブラックホールと関係ありそうだし……連れて帰るかぁ…」
彼女がポケットからソリのようなものを取り出すと、みるみる巨大化する。そして、死体を乗せると、引きずりながら来た道を戻っていくのだった。
彼女はまだ知らない、この出会いが世界の謎を解くカギとなることを。
そして、ここから彼女たちの物語が加速するのであった。
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