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とある作家の場合:バズらない夜に思うこと

作者:Sora
2025年6月、私はひとつの小説を書き始めた。画面に文字を打ち込む手は少し震え、同時に胸は高鳴っていた。作品を投稿すると、PVやいいね、コメントが絶えず変化し、数字は私の創作意欲を揺さぶった。一瞬の歓喜に胸を躍らせ、落胆に心を凍らせる。そのすべてが、私にとって新鮮で、刺激的な経験だった。しかし、書き進めるうちに、私はふと立ち止まった。なぜ私はこれを書いているのか、何を描きたいのか。本当に伝えたいものは何なのか。数字の波の中で、自分の声はかき消されてしまいそうだった。

私は作品の完成を急ぐよりも、静かに考える時間を選んだ。過去の文豪の小説を読み返し、彼らがどのように人間や社会、時代を見つめていたのかを思い巡らす。森鴎外の社会性への深い洞察、谷崎潤一郎の官能と人間心理の描写、そして夏目漱石の文明批評。彼らの言葉や視点は、私の中に小さな灯をともすように響いた。

創作の迷路の中で、私は何度も自問した。「私が本当に書きたいものは何か。誰に向けて、何を語りたいのか」――答えは簡単には出なかった。それでも、迷い、悩む時間そのものが、私にとって創作の一部であることに気づいた。数字に左右されるだけでなく、自分の思考や感情と向き合うこと。それが、小説を書くという行為の本質に近づく道なのだと。

こうして私は、再びペンを手に取る。まだ完成形は見えない。迷いと学びを抱えたまま歩む創作の旅路は、数字の波の向こうにある、私自身の物語へと続いていくのだと思う。
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