その2:てんさい聖女様、魔法陣を書き換える。
瑠璃ちゃんが魔法陣を書き直すまでにかかった時間、30分。
その間になんか鎧を着て剣を持った人が増えたりしたので、その人らをまとめて床に押し付けたりしてた。
時々、なんか空中でパチパチしてたり、離れたところの床がグニャっと溶けたりしてたけど、気のせいだという事にしておいた。
「はい完了!」
汗をかいてるわけでもないのに袖でおでこを拭うふりしてから、瑠璃ちゃんがにっこり笑顔になった。
「どう書き換えたの?」
周りにも教えてやるつもりで、聞いてみた。
「ふっふっふ、天才なワタクシはこの陣に三つの機能を詰め込みました。
一つめ、対象者保護機能付きで私たちを元居た場所に返します。
二つめ、帰還確認機能が付きました。
三つめ、自壊機能が付きました。動作終了後、一時間でこの魔法陣は爆発するのです!」
「無事に送り返した後、魔法陣が壊れるってことであってる?」
「あってる」
にこやか、じゃなくて『ニタァ』と表現したほうがいい笑顔が返ってきました。
「そして、おまけにお仕置き機能!」
「ナニソレ」
「自壊する時に使うエネルギーは、真空エネルギーです!」
なんかすごいドヤ顔されたんだけど。
「は?私文系なんだから、親切に説明して?」
「えっとねー、空間そのものを『なかった事』にすると、その時に出てくるエネルギー」
「なんかすごいやつ?」
「だいたいそんなもんだと思って良いよー」
瑠璃ちゃんは大雑把な私に合わせてくれました。
「それでこいつらのお仕置きになるの?すごいエネルギーで即死したら、お仕置きされたことも分からないじゃん?」
「なるなる。即死しない程度のパワーに抑えたから、爆風と破片で怪我する。あ、でも、連鎖反応で空間が崩壊するリスクは排除して無いから、ここの世界そのものが無くなるかも?」
世界が無くなる、てことはこの部屋も無くなるんだよね?
つまり、それって。
「それ、即死と変わらないじゃん?」
わけが分からないうちにこの場所と一緒に消えちゃうなら、そういうことなんでは?
「遅延反応は仕込んでおいたから大丈夫ー、判ってから消えることになるよ」
それはだいじょばないのでは?
「連鎖反応は止めないんだ?」
「起きるかどうかわからんし。起きてこの世界がつぶれたところで、あたし困らんし?」
わ~お。
大人しそうな顔をしてるけど、瑠璃ちゃんって過激なんだよね……
「それにさ、たぶん、召喚とかってそれ自体が危ない行為だったんだよ。だから、連鎖反応が起きても今さらなんだよね」
「え、あたしらが来るのもヤバかったの?」
「うん、めっちゃヤバい。人間三人分の質量と情報を移動させるのって、けっこうエネルギーが必要なはずなんだよね。そのエネルギー源どうしてるのかなと思ったら、今から使うのと同じ事やってた」
「良く分かんないんで簡単に言って?」
「超巨大エネルギー源を、爆発寸前の状態でテキトーかまして使って召喚してた」
……何となくヤバそうな気はするけど。
「そうだねー、すごいでっかい安物モバイルバッテリーを、パンパンに膨れ上がった状態できっちり充電して、それをお手玉してると思ってくれればいいよー」
「え、いつ爆発炎上するか分からんじゃん」
「そゆこと。使った後の始末もまずいし、早く逃げたほうがいいわ。ここ、いつ爆発するかわかんないよ」
「わ~お。じゃ、帰ろう帰ろう」
「はいよー。あ、周りの連中どうする?」
「こうする」
私が何か言うよりも先に、黙って私のサポートしててくれたサトーが指パッチンした。
「何したの?」
「あいつら、床に接着した」
「どうやって?!」
見た感じ、何も変わってないんですが。
「皮膚と、服と、床石のそれぞれの分子の距離をうんと近づけてやっただけだよ」
「ん?それでくっつくの?」
「原子レベルでものすごく近づけてやれば?」
「あんたの説明が分からん」
「不思議パワーでくっつけました」
雑な説明をありがとう、サトー。
「よくそんな使い方出来るね?」
と、これは瑠璃ちゃん。
「二人も同じだと思うけど、なんとなく使い方が分かるんだよねー」
「あ、やっぱり。この能力だけお持ち帰りしたいよね」
「できないのかな」
「どーだろ?」
「とりあえず、帰ってみればわかるんじゃない?」
それもそうだね。
というわけで、三人の意見が一致したので、帰りました。
天災も天才も、読みは「てんさい」。




