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夢じゃないとしたら、おれは何なのだろう。


赤ん坊になってるって事は理解できるけど、それは何故なのか。

まさか、死んだのか?

でも、そんな記憶おれにはない。


パパやママは今頃何をしてるんだろう。

少しの壁を感じて居たとは言え、兄弟も含め家族仲はかなり良い方だった。

勿論おれ自身も家族を愛していた。


いや、今はそんな事を考えるよりも、今のこの現状を考えるべきか。


死んだと仮定して思い当たる事は……………

いや、無い。珍しく昼間に出かけたくらいで、それ以外に特殊なことは無かったし、日中に出かけること自体珍しいだけで、していない訳では無かった。


まずは、今の生活に順応していくしかないのか。


それからおれは、とにかくこの家から得れる情報をできるだけ集めるためにぐずりまくった。

ぐずれば"新しい"父と母のどちらかが抱き抱えてあやしてくれる。その時に見える風景で色々と察するしかない。


そんな生活を続けて、気づけば自分で寝返りが打てるくらいの月日が経過した。

天才のぼくちゃんは、もう親の会話を聞き取れるくらい言葉を覚えてしまった。

まだ喋れる言葉は、言えてるのか言えてないのか分からない「パパママ」だけではあるけど、赤ちゃんってこんな感じなのかと、少し感慨深い気持ちになる。父の名前はユウ、母の名前はマイだって事が分かった。本名かは分からん、あだ名かも知れない。でも何だか日本人チックな名前だな。


あとはおれの名前だ。どうやらシエルと名付けられたみたいだ。

最初、両親に「シーちゃん」と呼ばれた時は、正直終わった…と思ったが、愛称だったみたいだ。


ここまでで分かったことがいくつかある。


まずは、この家の状況だ。

かなりの貧乏だ。

家に電気は無い、てことは勿論テレビもねえ車もねえって訳だが。

なんとびっくりガスコンロも有りません〜

どうやらかなり田舎の村っぽいのだが、これがまた田舎も田舎。辺りは古ぼけた小屋と畑しか無い。


それに皆の服装も酷いものだった。

いや、歴史好きだったおれからすると少しくるものがあるが、それでもやはり酷かった。


なんと言うか、所謂中世ヨーロッパの時代に一般的に着られてたような服だ。

お洒落をするという概念すら無さそう。


たまに、母がおれを抱き抱えながら、庭で父の"鍛錬"を見せてくれて居たのだが、これがなんの鍛錬かと言うと、剣を振るう鍛錬だ。


……まさかとは思うが、本当に中世ヨーロッパなのか?

よくよく考えてみれば、両親の顔立ち的に日本人では無いのは確かだし、喋る言葉も違う。中世のヨーロッパって考えれば、電気も無く車もないってのも……

でも、だとしたら父と母の髪色は何だ?

この時代に髪の毛を庶民が紫色に染めるなんてことあるか?分からんな。

でもなー、どう見たって中世ヨーロッパの時代なんだよなー。まさか、その時代に生まれ変わった?


いや、ありえないな。それじゃあまるでタイムスリップだ。もっと、現実的な説を唱えるとしたら。


おれが死んだ後、世界の文明が壊れた。


昔聞いたことがある、何処かのお偉いさんの言葉だ。

「第三次世界大戦で、どんな武器が使われるか分からないが、第四次世界大戦が起きたら、石とこん棒で戦っているだろう。」


恐らくそれだ。核か何かを使いすぎたせいで文明が滅んだ。そして何世代にも渡って人間がまた構築していって、今の時代まで来た。


そう考えれば、まだ腑に落ちる。


なんてことをぐるぐる考えていた時に、夕食についた両親の会話が耳に入ってきた。今までのおれの仮説が無駄だった。


「おれが家を空ける間、シエルを頼んだぞ。」


「えぇ、頑張って来てね。でも、本当に大丈夫なの?」


「心配ないよ、今回はね。」


ん?今回は?


「それでも、私は不安よ。もしかしたら、あなたと交友関係があったゴブリンも居るかもしれないし。」


……………は?


「あぁ…。それでも、ゴブリンの族長からの依頼だ。暴走化したゴブリン達を討伐して欲しいと。」


ゴブリン…討伐…


「無事に帰ってきてください。シエルと帰りを待っています。」


「ああ。」


2人は食器を片付けるのも忘れて、2人で寝室に行った。


……全く、盛りやがって。


って、そんな事はいい。

ゴブリンだと?まさかね。だってそんなの…。


…………………………。


1番最初に考えて、真っ先に捨てた考えだ。

そんな…そんなよくある創作物のような展開ある訳…。


そうだ、少し試してみよう。


ガタンッ


大きな落下音は、寝室にまで聞こえたのだろう。

"誤って"落ちたのだろうと、慌てて駆け寄って来た両親は、お互い半裸だった。


わざとオーバーに泣きわめくおれ。

ぶつけて痛い部分を刺激されたら、お手本のように泣きじゃくった。


「シエル、すぐ治すからね。」


「待てよ、マイ。まだ1歳にもなってないのに。」


「大丈夫よ、ユウ。」


「行くわ…………、"メーテル"」


マイがそう呟くと、おれの身体は癒しの風に包まれ、あっという間に痛みが無くなった。


ここは、剣と魔法のファンタジー世界


どうやらおれは、異世界転生をしたらしい。

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