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目を覚ますと、そこは知らない天井………
ではあるけど、それとは別に知らない人がおれを覗き込んでいた。
………え?誰だこの人?
長い髪の毛を紫に染め上げ、大きな瞳も紫色。
かなり発色の良いカラコンを付けてるようだ。
大概、そんなカラコンを付けて浮かない日本人は居ないだろうが、この人は物凄く馴染んでる。
それに、綺麗な鼻筋、綺麗な小鼻、すこーしだらしなさを感じさせる薄い唇もこの人にとっては美しさの一つだ。日本人離れした顔立ち的に………。
あ、オマケに巨乳だ。
……どっかのハーフか?
ぜんっぜん思い出せねえ、ここはどこのラブホだ?
いつの間に女引っ掛けたのか?
くっっそ、こんないい女抱いといて覚えてないとか重罪だぞ。
ぼーっと彼女の顔を見つめてると、彼女が俺に落としていた視線を外して、どこか違う方に顔をやり声をかけた。
「〇☆△▽×」
は?なんて?
おいおい、ハーフじゃなくてマジな外国人かよ。
そんな彼女が声をかけた方から、トントンと足音が聞こえて、もう1人がおれの顔を覗き込んだ。
!?
今度は男だと……!?
まさかの3P?おれそんな趣味ないぞ?
どうなってんだマジで。
こちらもまあ嫌味なほど端正な顔立ちした「イケメン」外国人だ。
欧米の男性にありがちな極端に短い髪型に、こちらは…何色と言うべきか。
緑色?水色?とにかく中途半端な髪色。
色落ちしてきたのか?てか、外国人で派手髪に染めてるの珍しいな。
そんな奇抜なイケメンの整った顔には、無数の傷跡があった。折角の綺麗な顔が勿体ないな。
一瞬「もしかしてこれなんかの事件か?おれ攫われた?」とか考えもしたが、それは不正解だと言うことは彼らの顔を見れば分かった。
2人ともとにかく優しい眼差しでおれを"見てくれていた"
何なんだマジで。
とりあえず言葉が通じるか分かんないけど色々尋ねて見ようと思った。
悪ぃけどここ何処だ?
あれ?
おーい、もしもーし
何だこれ
「うーうあーあー」
言葉が喋れねえ。
でも、2人ともとにかく優しげな表情を浮かべて、おれがうめき声のような、喘ぎ声のような音を喉から発する度に、2人で顔を見合わせて微笑んでいた。
まあいいや、おっぱい触っちゃおーっと。
邪な考えしか持ち合わせてないおれ「28歳」が、彼女の胸に手を伸ばした時、その視界に写った自分の手が、全てを物語っていた。
子供の手だった。いや、赤ん坊の手だった。
まて、落ちつけ。なにがどうなってるんだ。
痩せた?そんな訳無いよな。でも明らかに赤ん坊の手だ。
いくらこの女の人のおっぱいがデカいからって、ここまで手から零れ落ちることは無いだろ。
おれに胸をまさぐられた彼女は、何かを察したのかおれに腕を伸ばしてきた。
そして、抱き抱えたのだ。
あれよあれよと準備を整えて、おれの頭が理解する前には、授乳が始まっていた。
あー、これ夢だわ。
目覚めてねえじゃん。
おれ赤ちゃんになる夢見てんだ、そうに違いない。
母親らしき人がおれに乳を与えて、父親らしき人がおれの頭を愛おしそうに撫でてくれた。
そうこうしてるうちに、"夢の中"なのにまた眠気が襲いおれは意識を手放した。
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目を覚ますと、まだ夢の中だった。
相変わらず大事そうに、ベビーベッド見たいな所に横になってるおれ。
そろそろこの夢も飽きてきた。
この夢は長い、とにかく長いのだ。
もう3日はこの夢の中に居る、そんな気分だ。
楽しみといえば、母親に乳を貰い、父親に頭を撫でてもらい、2人の空いた時間にあやしてもらう。
それくらいしかない。本当に何なんだこの夢。
寝返りすら打てないこの身体だと、見える景色は限られてる。親がかけてくれる言葉は一言も理解できない。
心細い。
いつもと一緒だ。
誰も居ない自分の部屋で、無駄に時間を消費する日常と。
繋ぎ止める言葉すら持ち合わせてなくて、自分の元から去ってく女の子をただ、呆然と見ることしか出来なかったあの日と。
愛してくれていた両親から感じ取ってしまった薄い小さな壁と。
気づいたら、涙が出ていた。
夢でもリアルでも、もうとっくに枯れたと思って無縁になっていた涙を、声を出しながら流した。
泣き声に気が付き、慌てて駆け寄ってきた母に抱えられ、ギュッと抱きしめられた。
その抱きしめてくれる力がいつもより強く、少しの痛みと大きな安らぎを感じられ、もっと涙が出た。
母がおれの顔を見て"こう言った"
「良かった、やっと泣いてくれた。」
また、抱きしめられさっきと同じ痛みと安らぎを感じておれは全てを理解した。
あぁ、これは夢じゃないんだなと。