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プロローグ

初めに言っておこう。

おれは別に自分の人生が不幸だとか、ダメダメだとか思ったことは基本無い。


気づけば28歳。

職業は無職……所謂ヒキニートって奴ではある。

でも、働いたことが無いわけでは無い。

就職はした事無いけど、バイトだって立派な仕事だとおれは思ってる。

高校時代から8年間、ずっと働いたおれの唯一の"社会経験"だ。


まあ、28歳男の履歴書では評価されることの無い8年間だけど……。


彼女だって、それなりに途切れずに居た、なんなら女性経験だって多い方だと思う。

友達だって、小さい頃から沢山居たし、学校の同学年の人たちとは殆どの人と話したことがあるくらい社交的でもあった。


まあ、今は男女問わず知人すら居ないのだが……。


高校時代、どちらかと言うとワルの立ち位置だったと思う。イキってタバコを吸ってみたり、毎晩無免で車や原付を乗り回してみたり、やりたい放題だった。


まあ、ヤンキーや不良って言えるほど突き抜けてワルを出来てた訳では無いけど…。


振り返ってみると、余りにも「中途半端」な人間だったと認めざるを得ない。

そこに追い討ちをかけるように襲いかかる、おれの1番の短所があった。


"自分は少し特別だ"

…と思い込んで生きてしまった事だ。

なんなら現在進行形でそう思って生きている。


まず見た目だ。それなりに端正な顔立ちをしてる。

昔だったら、街中で声を大にして「どうもーーーイケメンでーーす」と叫べたくらい自信があった。


それもそうだ、産まれた時から会う人皆に

「綺麗な顔をしているね」と声をかけられ、

思春期になれば女の子達から「ホント顔はいいよね」と言われ、今も良く言われる。

挙句の果てには、小学生の時、とある芸能事務所のスカウトの人に声をかけられる始末。


これが勘違いの始まりだ。


自分は、芸能人レベルで顔がいいと認識してしまった。実際は、普通に良いくらいなのに。

それにカマをかけて、何も努力をしない人生を送った。憧れた職業も特別なものだらけだった。

アイドル、バンドマン、モデル、お笑い芸人、スポーツ選手。

どれも、周りの人が遅くても中学時代には捨てる夢を何時までも持っていた。努力も何もしないのに、本気でなれると信じて。


好きな人が出来た時も、他人から見ればもうその想いは叶う事ないと相手の態度で悟れるくらい拒否られても気づけないくらい、自分は何にでもなれると信じていた。


28歳


やっと、少し夢から覚めてきた。


この期に及んで、まだ「少し」と付けてしまうくらいには勘違いお気楽ボーイ(いや、もうおじさんか?)なのだから救いようがない。


そんな男が何故、ここまで自虐的に自分を語っているかと言うと、特に何かがあった訳では無く、元の性格にあるだろう。


本質は自分に自信の無いネガティブタイプなのだ。


仕事を上手くやって評価される自信が無く、慣れたバイト先にしがみついた8年間。


友人達から本当に友人だと思ってもらえてるのか自信が持てず、一定のラインから踏み込むことが出来ずに"親友"が作れなかった学生時代。


女の子と付き合えば、いつか捨てられるかもと怖気付き、それを隠すために見栄を張ってモラハラ気質な言動を繰り返してみたり、相手の気持ちに漬け込み付き合わないで欲を満たしてみたり、ヒモのような事をしてみたりもした。


学生という、何とも心地よい縛りを人並みに嫌って、ワルぶって見ても実際のところ、肝が小さいから喧嘩もできず、犯罪に手を染める事も出来なかった。これはハッキリと言えるけど「しなかった」のでは無く出来なかったのだ。


こんなゴミのような人生をどうやって"乗り切って"来たかと言うと、すべては「ピエロ」つまりお道化だった。とにかく馬鹿を演じてきたのだ。


さて、何度も言うがおれはもう28歳だ。


勿論とっくの昔にワルぶるのは辞めた。


友人は、深い関係が作れなかったのだから、連絡すれば飯くらいは行けても敢えて言う、勿論居ない。


彼女も居ない。28歳の無職に寄ってくるのは、少し危なそうな雰囲気に憧れる未成年くらいだ。

勿論、小心者のおれは、そんな危ない橋は渡れない。


だいぶ遅いが、路頭に迷ってるという事に今気づいたのだ。


時刻は昼の12時を過ぎた頃、おれは珍しく外出をした。

昔から太陽が苦手で、大人になってからは基本的には深夜にしか外に出ない俺が何故この時間に外に出たか。


特に理由は無い。


臨時収入があり、ほんの少しだけお金に余裕があったからかもしれない。

いつもより体調が優れていたのかもしれない。

今の人生に焦りを感じ、部屋に居るのが落ち着かなかったのかもしれない。


理由を作ろうと思えば幾らでもある。

でも本当に何となく外に出ていた。


いつもの様に車に乗って、テキトーに走らせ、部屋にいる時より短い間隔でタバコを吸う。


この時間は嫌いじゃない。


特に目的地も無いからグルグルと地元を走っていたが、日が出てる時間というだけでいつもと違う景色に見えるのがなんだか可笑しい。


好きな音楽を流して、ただただ車を走らせた。


何時間経ったか、そろそろ知っているドライブルートも無くなってきて、集中力も切れてきた頃だ。

信号待ちをしてる間、ぼーっと道の脇を見ていると、妙に目を奪われる存在が立っていた。


「何してんだろ、あの人」


柄にもなく、ポツリと独り言を垂れ少し気恥しさを感じて視線を前に戻そうとした時、その"存在"と目が合った。


…………?


なんと言えばいいか、不思議な人だった。

特に特徴がある訳でも無く、言ってしまえば普通の人。モブと表現してもいいだろう。


でも、不思議だ。


そいつから何となく目線を外せずに居ると、後ろからクラクションを鳴らされた。いつの間にか青になってたらしい。


ブレーキから足を離し、進み始めはしたものの、またその"存在"に視線をやってみると、そいつは確実におれに向かって口を動かした。


なんと言っていたのか?何となく口の動き的に、「おかえり」的な事を言ってるような動きだった。


おかえりと聞けば、普通ただいまだよな。

でも、何となく違うような気がして、おれは帰宅路に着いた。


家に帰れと言われたような気がしたのかな。

分からないけど、家に帰った。


家に着き部屋に入ると、ドッと疲れが出てきてそのままベッドに入った。

何だか、心臓が少し変な気がする。


ドクン、ドクン、と脈打つ音が少しずつ大きくなり、たまにドックンとリズムを崩す。


動悸と言うのだろうか。


その音が何だか心地よくて、それまでの人生ずっと眠くても寝付けなかったおれが、人生で初めてそのまま眠りについた。



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