浦島太郎
浦島太郎は最後に
おじいさんにはなれました
私は子供の合唱を聞き
すっかり彼になるのです
立ち止まっていた青春
粉々にされた心で
鬱々と顔を伏せて暮らせば
もうモラトリアムはなくなり
理不尽に罵倒した教師に
反論しなかった自分は
倫理的に勝ってるなんて
まさしく「ルサンチマン」そのもの
心細さにスマホ取り
ネットの海に沈んでも
触れ合ってるようでぶつかり合って
話さえ交わせない
「月日の経つも夢のうち」
たしかに輝かしかった
中学時代の栄光は
時に重荷になっていく
宝であっていまわしきもの
心細さに何を取ろう?
中途半端な玉手箱
気づけば老いて
また老いて
何も成せない無力を知って
輝かしい夢
昔の自分
万能感に基づいた
人生設計
冷静な自分
現実に即す堅実な未来
たった一度の失敗で
すべてはふいになりました
「道に行き逢う人々は」
同窓生の監視の目
倦怠感が支配する体で
逃れられない地元から
追い出されたのは
竜宮城
普通の生活という名の
心壊れた今では
ひたすら「繰り返す」人生が
すべて虚しく思えてきます
まるで哲学やってるみたい
「お暇乞いもそこそこに」
するつもりもなくヒマもなく
追い出された手に玉手箱
虚しい生を引き伸ばし
虚しく過ぎる時間の呪い
「心細さに蓋取れば」
それも太郎の選択のうち
何もできない人間に
与えられない選択肢
残酷なのは時の流れで
たちまち失う若ささえ