↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旦那様、それは勘違いです!ー白い結婚を求められたはずですがー  作者: 清澄 セイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/74

旦那様のお母様の話

 上質な雰囲気漂うラウンジにて、しっとりとした大人なアフタヌーンティーを大旦那様と共に嗜む。初めての二人きりで緊張していたけれど、八枚目のクッキーを口に放り込む頃には、すっかり普段の調子を取り戻していた。

「そうなんです、マグシフォン領は領主である父と領民との距離が近くて、陳情形式よりも直接話し合うことが多かったです。月に一度大庭園を開放して、母が主体となってティーパーティーやバザーを催したりもしていました」

「それはなんとも、理想的な体制だ」

「国に収める税収だけで見れば、非効率的なやり方なのかもしれません。ですが私は両親を尊敬していますし、領民の皆さんと気さくに交流出来るマグシフォン領がとても好きでした」

 ブルーメルの話を聞くのも楽しいけれど、こうして故郷に思いを馳せるのもまた感慨深い。大旦那様と若旦那様はよく似ていて、口数はあまり多くないし相槌もごく簡単なものだけ。

 広大な領地を統括する領主として、荘厳な雰囲気と威厳たっぷりの佇まいは、ともすれば怖いと感じてしまう。それでも私にとっては、穏やかに話を聞いてくれる大旦那様はお優しい気質の方だと思っている。

「すみません、私ばかり口を動かして」

「いや、構わない」

 口の水分がすっかり渇いていることに気付いて、ティーカップに手を添える。甘さ控えめのすっきりとしたハーブティーは新鮮で、鼻に抜ける香りも爽やかで美味しい。

「次は大旦那様のお話を聞かせてください」

「私の?」

「はい、お願いいたします!」

 本来なら先に大旦那様から話していただくべきだったのに、つい故郷や家族のことをこれでもかとお喋りしてしまった。こうして私をお茶に誘ってくださった理由が、必ずあるはずなのに。

 大旦那様は音も立てずにカップをソーサーに置くと、何かに思いを馳せているような感慨深い表情を浮かべて、静かに口を開いた。

「私の元妻は、もう十数年前に家族を捨て間男と共にこのブルーメルを出ていった後、その男に刺されて呆気なく命を落とした」

 それは、初めて聞くヴァンドーム家の事情。そんな深いところまで知ってしまって良いのかと少し戸惑いつつ、視線を逸らさずまっすぐに正面を見つめる。

「当時の私は裏切られたことに意固地になり過ぎて、二度と妻を迎えないと決めた。領地経営や国王の補佐に忙しなくほとんど家に帰れなかった私は、オズベルトの面倒をほとんど乳母に任せきりで、数ヶ月ぶりに顔を合わせてもほんの数分という日もざらだった」

「それは……、寂しいことですね」

 高位貴族が自分の手で子育てをしないのは珍しいことではない。これだけ広大な領地と大勢の領民の生活を維持する為には、計り知れない重圧と苦労がまとわりつくだろう。私や弟のケニーも乳母との時間が多かったけれど、優しくて愛情深い彼女が大好きだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。