008:未知同士の接触
そして……そうだ。 気が付けば。 目覚めたらここにいた。
記憶通りなら、そのはずだ。
ストラ「……! 虎龍……!<ヴン>」
手を構えて、空中にコンソールとモニターを展開する。
現実世界のフラクトロンはVRのみならず完全なARも生み出した。
現実空間に仮想でありながら操作可能なコンソールと、高解像度のモニターを映し出す。
更は触覚を制御して触れたと認識も出来る。
地上、海底、宇宙でも。
フラクトロンさえあれば、不自由なく操作ができる。
そしてゲームの中でのこれも、同じ機能があるのだ。
ストラ「遅い……よし出た」
急いでいるからか、表示を遅く感じ焦る。
焦り初めの前に表示されたのだから、ただの気のせいだ。
ストラ「ログイン情報……モニターの位置が変わっている? さっきの影きょ<ピピッ>ん?」
通信が入ったという表示が出てきた。 相手は……
虎龍「<ヴン>あー、ストラ。 聞こえる?」
新しいモニターに彼女の顔が表示され、声がした。 無事だった……よかった。
困ったような声だが、何かあったのだろうか?
虎龍「ケガは無いし……うん、無事」
ストラ「良かった……今どこに居るんだ? 見た感じ……」
一瞬画面が暗いから、夜かと思ったが。
よく見ると、画面が青みがかって……虎龍の顔が歪んでいるように見える。
空気の淀み……違う、これは……
ストラ「……水の中、か?」
虎龍「当たり。 気が付いたら、水の……うん、海の中やね。
体に来る圧力からして、かなーり深い所」
ストラ「問題は?」
虎龍「ない。 ……ねえ、どういう事? 転送は……終わったん?」
答えようとして、思考を纏めてみる。
・気が付けばこの場所にいた。 彼女も同様だという。
・現在位置は不明。 少なくとも王国内ではない。
ストラ「……ログでは、転送は……完了している」
直近のシステムログを表示させると。 エラーは一切無し。
滞りなく、すべての作業が完了したことになっている。
なら、何故あたしたちはこんな所にいる?
先ほどの船の異常は? あの光は?
何故船の中にいない? 船は<ピクッ>今…………………………
虎龍「……なあ、ちょっといい?」
ストラ「……すまない」
虎龍「ううん。 別に……それより」
謝られてしまうが、違う。 直ぐに訂正する……近い。
ストラ「……敵だ。 後で」
虎龍「! 気を付けて」
そこは長い付き合い。 何故とか、大丈夫とか、はない。
最低限の会話だけして、通信カット。 モニター、コンソール消去。
?「動くな」
いいタイミングで、後ろから声が聞こえた。
地上に突然、人間が現れた。
報告を受け、丁度監視の任務にいた俺達にお呼びがかかる。
A「いた……なんだありゃ?」
B「金髪……小娘だ。 衣装は……随分風通しの良い格好してやがる」
C「迷い人か? ついてるな」
他の三人が、目標を遠目にみつけてにやついている。
迷い人。 時々、この場所に迷い込んでくる……獲物だ。
不運なことに、この場所に迷い込んだんだ……今回も、恐らく観光か。
B「今回は俺から先だ。 前約束したよな?」
A「あーはいはい。 お譲りしますよ……壊すなよ?」
C「俺まで回せよ? 先々月なんざ、逃がしちまうから……」
B「あの時は、ちゃんと殺したろ? 死ぬまでやれるだけやれたんだから結果オーライだろ」
A「俺は屍姦は好みじゃねぇんだよ。 俺に回る前に死にやがるし散々だぜ」
ここへ迷い込んだ者は、例外なく……殺される。
それが女性なら最悪だ。 殺される前に…………
A「んで。 新人君はいらねーと」
D「ああ……報告にいく。 それで、いいんだろう?」
この3人が迷い人を見つけた時は、俺は離脱する。
そして報告……いつも通りだ。
助ける? 残念だが………………不可能だ。
A「<パチパチ>おりこうおりこう……っと。 それでいいんだ。
余計な事しなきゃ、俺達は優しいからな?」
C「この間の新人ウザかったなぁ……国の誇りがグヂグヂよぉ」
B「そんなだから、事故っちまうんだよなぁ……おお怖い怖い」
ニタニタと。 ゲラゲラと。
面白おかしそうに、連中は汚らしい思い出を語り合う。
ここの連中はみなそうなのだ。 人殺しも、強姦も、一切の良心の呵責がない。
それに疑問を持てば……まして、邪魔しようものなら。
数日中に、事故で命を落とす。 そう処理される。
例え、後ろから撃たれていようが。
例え、複数人に刃物でめった刺しになっていようが。
ここでは、事故になる。 そうなってしまう………………狂ってる!
だが、ここに居る以外の全員もそうなのだ。
助けも呼べなきゃ、協力者もいない。
敵しか居ない。 逆らえば……死ぬ。
真逆、ここまで酷いだなんて想像すらしていなかった……!!
B「よし……じゃあいくか? 音を立てるな……?」
1番目となるそいつが先頭となり、少女に近づいていく。
自分を含めた他は、後から付いていく。
D「……おかしくないか?」
A「何がだよ?」
D「あの服を見ろ。 どう考えてもこの辺……向こう側でも、あの格好は寒すぎる」
……近づくと、目標の少女の詳細が見えてくる。
かなり若いし身長も低い……子供のようだ。
金髪をツインテー……ツーサイドアップか……だな。 やけに髪は長い。
黒いインナーに白いアウターを羽織っている。 ……薄すぎるだろ……
見たことの無い意匠だが出来がいい……本当に迷い人か?
……いや、何だ? 何かがおかしい……何だ、この違和感は?
B「ほー珍しいな。 今回はガキだぜ……しかも美人だ。 ……こりゃいいや」
D「おい、こど……ガキまでやっちまうのか?」
B「ああ? ガキだからいいんだよ」
A「不味いな……俺達の番には死んでるんじゃねぇか?」
C「こいつ、ガキ犯して殺しまくって捕まってるしなぁ……」
B「うっせぇ。 ちゃんと『輪姦して』やるから安心しろって。
それか、俺が最後でも良いぜ? そうすりゃ手加減もいらない……」
吐き気がしそうだ。 こいつらは、相手が子供だろうが構わない。
嬲り殺しにするつもりだ。
何とか……どうする? しかし……どうやって?
しかし、ここで正体が……しかし捨て置くなんて……くそ……
B「お、そろそろだ……さーて、ハンティングの始まりだぁ」
どうしようも……ないのか?