004:FIVR「エンドレスファンタジア」
フラクトロンによって実現したFIVR。
それまでのVR・ARでは出来なかった、五感を仮想世界に送る技術はゲーム方面にも波及した。
幾つかの例を挙げると、
・シューティングゲーム
実戦さながらの討ち合いが人気。
大会など、最大級のイベントならば数百万人規模の戦闘が起こる。
(一時期は戦闘が異常にリアル過ぎて敬遠されかけたものの、企業努力にて盛り返す)
・レースゲーム
陸海空の乗り物、生き物で多様なステージを走破して順位を競い合う。
(操縦はゲームにより簡単操作から、本物さながらのリアルなものまで幅広い)
・音楽ゲーム
世界の壁を越え、誰とでも音楽で遊び合える。
(月に数回、企業個人問わずゲーム内でイベントが行われている)
と、紹介しきれないほどに多種多様なゲームが生まれた。
ARを使った現実でのゲームもあるものの、人気をさらうのはやはりFIVRのゲーム。
五感をもって、ゲームの世界に飛び込むタイトルだった。
特にフラクトロンによって再現される、ある機能がFIVRをゲームの王者に押し上げている。
時間の加速。
企業秘密とされるこの恐るべき機能は、現実世界と仮想世界の時間を切り離した。
安全とされる最大は実世界の1時間をVR世界では一週間まで引き延ばす。
(通常一日一回の制限があるものの、終末医療などで制限を解除する例もある)
技術の正体や、安全性への問題などが叫ばれたのも最初のこと。
24時間という絶対的かつ、人類最大の財産を増やせるという事実の前に、それらの声はかき消される。
仕事の締め切りが残り一日であっても。
宿題の締め切りが明日なのを思い出したのが夜であっても。
遊びたいゲームをとことん遊び尽くしたいと思ったならば!
仮想世界の時間を加速して、一週間の自分だけの時間を得ることが出来る。
万人に時間の自由が与えられる仮想世界が。
現実の何倍も遊ぶことの出来るFIVRゲームが。
ゲーム界の王者として君臨するのも当然と言えた。
ストラ……並平普がプレイするゲームも、そんなFIVRのゲームの1つ……ではなかった。
そのゲーム『エンドレスファンタジア』は、FIVRの1つではあるものの、幾つかの特徴があった。
1.一般流通していない
2.ゲーム本体にはゲームデーターは存在せず、「他のゲームを集め現実さながらに再現」する
3.フラクトロンの制限を遙かに超えた時間加速が可能
最初の1つを除き、明らかに異常なゲームだった。
彼は偶然このゲームを見つけ、それをプレイした……してしまった。
もしこの特徴を最初に知っていれば真偽を怪しむか、しかるべき場所への報告か。
いずれにせよ、プレイする事などなかっただろう。
だがこのゲームの仕様を理解したのは、彼がゲームに取り込まれた後。
エンドレスファンタジアが取り込んだ15のゲーム世界を彼女が体験し終えた後の事だった。
4.一度ログインすると再現したすべてのゲームをクリアするまで現実に戻れない。
5.このゲームはすべてを再現する。 生も死も、誕生さえもなにもかも。
6.死ぬ事は出来ない。 ゲーム終了までどんな死に方をしても理由を付け蘇生され続行する。
彼はゲームが再現した世界を体験し、大本のゲーム同様にエンディングを迎えるしかない。
例えどんなに過酷であろうとも。
例えどんな体験をしようとも。
エンドレスファンタジアがかき集めた15の世界……
それは所謂、世間では18禁ゲームやエロゲーと呼ばれるそれらから生まれた世界。
しかも、いずれも
・あまりにも過激すぎて発禁
・残酷または非人道的すぎて発売停止
・思いつく限りの性的、非性的問わない内容を詰め込んだため制作しきれず、発売中止
・生命への侮辱が過ぎるため……
・倫理的に問題……
・差別的……
・殺……
・
・間違いなく精神にダメージを負う危険があるためVR化を禁止。
などと、問題があるゲームばかり。
それをあろうことか現実同様に、何もかもすべてが完全に再現された死の許されない世界に。
彼は……彼女として。
少女、ストラ・ツァラトゥストラとして叩き堕とされることになった。
5.このゲームはすべてを再現する。 生も死も、誕生さえもなにもかも。
6.死ぬ事は出来ない。 ゲーム終了までどんな死に方をしても理由を付け蘇生され続行する。
7.プレイヤーは、現実同様に女性としての「すべての生体機能」が再現される。