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5.エリス・アメジスト Gカップ

カーネリアの宿

俺が寝泊まりしている安宿の名前だ。年季の入っている宿であり、中はお世辞にも綺麗とは言い難い。

俺は今その食堂に居るが、残念なことに客の姿はない。

確認できるのはカウンターに立っているマスターが一人。

そしてテーブルに向かい合い沈黙する冒険者が二人。もちろん俺とエリスだ。


「…………」

「……………………」

「…………………………」

「…………黙ってても何も始まらないから先程の戦いを整理してみましょう……」

「……はい」


10分ほど続いた沈黙を俺が破ると、まるでお通夜の雰囲気で反省会がスタートした。


「……で、敗因は何だと思います?」

「……アルフさんが私のGカップ胸に見とれていたからです……」


まさかの捏造で責任を俺に擦り付けてきたエリスに今まで沈黙を貫いていたマスターが反応する。


「おいおい戦犯はお前じゃないかアルフ! やっぱりお前むっつりスケベさんだったのか」

「マスターは黙っててください、空気が読めないから奥さんと娘さんに出ていかれるんですよ」

「……すみません」


急に口を挟んできたマスターを黙らせる。

ってかやっぱりGじゃないかなるほど90がGね……


「…………Gねぇ……」

「……?」


おーっとそんなことを考えている場合じゃない

煩悩を振り払い目の前の魔術師もとい捏造師に語りかける。


「本当にそれが敗因ですか」

「……」

「俺、嘘は嫌いなんです」

「……」

「エリス(Gカップ)さん、それは年上の人がすることなんですか」

「…………私が一人で突っ込んでいって速攻で闇兎ダークラビットにやられたからです……」


しょんぼりしてしまったエリスに俺は質問をする。


「Gカップ(エリス)さんは魔術師でしたよね?」

「…………あのぅ……」

「おいおい、やっぱりお前むっつりスケベだろ! 突然のセクハラに嬢ちゃん困っているじゃないか」


マスターの横槍で己の失策に気が付く。


……しまった本音と建前が逆になってしまった!

おかしいな? 煩悩が中々消えてくれない……


「あのぅ」

エリスが再び口を開く。

大丈夫だ、変態だのおっぱい魔人だの罵られる覚悟はできている。

いや、今覚悟した。


「……すみません敬語やめませんか? 距離ができたみたいで悲しいです……」

「いや、そっちかーい‼」

「??」


予想と大きく離れた言葉に思わずツッコんでしまった。


「俺達今日会ったばかりですよね……むしろ敬語を使うのが正しいのではないんですか? エリスさん年上だし……」

「そんな⁉ 私達が出会ったのは運命ですよ! これから苦楽を共にするのに他人のように会話はしたくありません!」

「なんだかプロポーズみたいだな……というか気が付いてるかい? 嬢ちゃんの方こそずっと敬語でしゃべってるぞ」


三度みたびマスターの横槍が入る。どうやら黙って俺達の話を聞くつもりはないらしい。

エリスは図星を突かれたようで顔を赤くして俯いてしまった。

確かに自分はずっと敬語だったもんな、自分の発言が自分に返ってきたエリスが

恥ずかしそうに話し出す。


「そ、そんな……プロポーズみたいだなんて……恥ずかしいです」

「いやいや、そっちかーい‼」

「???」


ずれている……何かがずれているぞ

これが天然か? 天然というやつなのか?

いや、俺の方がおかしいのか? 訳も分からず混乱してしまう。


「お熱いねぇ~若いねぇ~ヒュ~ヒュ~」


うるさい、このマスターうるさいよ!

てかずっと何の話をしているんだ俺達は……


逸れまくってしまった話題を軌道に戻す。


「あの……敬語やめるからさ……さっきの戦いのこと整理しようよ……」

「……そうですね、すみません私のせいですよね……」


「……いいや違う」

「え?」


確かにエリスが突っ込んでいったのも敗因かもしれない。

だが、大きな敗因は別の所にある。


「俺達はお互いを知らなすぎたんだ」

「お互いを?」


「そう! お互いにどんな戦闘スタイルなのか、どんなことが得意であるのか、もっと詳しいスキルの詳細とか」

「そうですよね」


そうだ、相手を知ろう。そして自分を知ってもらうんだ。

パーティーを組む相手について何も知らないままクエストに挑むなんて普通はしないのだろう。

これずっとソロで活動してきた俺達だからこそのミスなんだ。


「もっと話し合いをして、しっかりとしたパーティーになろう」

「はい!」



冒険者パーティーの夜は長くなりそうだった。

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