表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/394

95.会議は踊る?

国際会議中に帝国の皇子殿下ズィピアスの暴走により会議どころではなくなってしまった。

急遽帝国について以下のことを話し合いが行われることになった。


皇子(ズィピアス)の魅了について

皇子(ズィピアス)の今後の動向について

・帝国の処遇について


まずはズィピアスの魅了について、魔法やスキルに詳しいエルフの女長老エレンミィアを主体にして話を進める。

ズィピアスが暴走したとはいえ人を魅了する能力は脅威だ。

その脅威についてわかる範囲で問題点を洗い出す。


・魅了方法について

・魅了の上限について

・魅了の期間について


最初に相手を魅了する方法についてだが、条件次第では危険視している。

目を見ると魅了するのか、声を聞くと魅了するのか、あるいは何もしなくても魅了するのか。

見たり聞いたりするなら目や喉を潰せば済むが魔法やスキルを発動するだけなら最悪ズィピアスを殺害しないといけない。

次に魅了できる上限はどのくらいか。

先ほどの会議中で部屋にいる全員を一瞬にして魅了したのだ。

1人1人ではなく複数人同時に魅了したのは脅威である。

あとは魅了できる人数が有限なのか、無限なのかがわからないところだが。

最後に魅了による時間制限の有無について。

一度魅了されると永続的に続くのか、もしくは一定時間になると解除されて再度魅了する必要があるのかだ。

もし、前者の永続的であれば術者が死ぬか状態異常回復で回復させない限り解く方法はないらしい。

魅了については現時点の情報は以上だ。


続いてズィピアスの今後について、グラントが主体にして話を始めた。

ズィピアスの性格からすると恐らくどこかで騒動を起こす可能性が極めて高いと判断している。

それがガイアール王国なのか皇国なのかエルフの隠れ里なのかドワーフの国なのかは定かではない。

いずれにせよズィピアスを警戒しないといけないのは事実である。


そして、帝国の処遇についてだが、これは状況により大きく変わるそうだ。

現在の帝国の皇帝が息子であるズィピアスに魅了されているなら情状酌量の余地があるが、わかっていて放置ならその限りではない。

場合によっては帝国との戦争に発展するだろう。

以上で帝国の話は終わりになるのだが、ここでグラントがシフトを見て質問してきた。

「それでそなたはなぜ魅了しなかったのだ?」

シフトは自分のスキル(【ずらす】)を馬鹿正直に話すつもりはない。

言ったところで頭がおかしいと言われるだけだからだ。

「それは簡単です。 魅了に対する耐性を持つ道具をたまたま身に着けていたので僕は助かったのです」

「では魅了を解いたのはどう説明する?」

「状態異常回復のポーションを1本持っていたのでそれをユールに飲ませたのです。 彼女は回復のエキスパートなので魅了が解ければ皆さんの魅了も解くことができると信じていましたから」

実際ユールの魅了を解いて、グラントを始めとしたこの部屋の人たちの魅了を解いたのはユールの【治癒術】である。

辻褄が合ってるだけにグラントは強く言えなかった。

「そうか・・・シフト、ユール嬢、感謝する」

グラントが頭を下げると各国の首脳たちや騎士たちもそれにならって頭を下げてきた。

「ああ、僕は大したことやってないんで礼ならユールにしてくれ」

「わ、わたくしですか?! わたくしもご主人様に助けられたので何とも言えないのですが・・・」

シフトは逃げるようにユールを差し出すと本人は驚いてしどろもどろになる。

「どちらにせよ助けられたのは事実。 後で褒賞を与える故期待するがいい」

「いや、別にいらないです」

グラントはこの機にシフトを懐柔して自分に取り込もうとしているのだろう。

「まぁ、そう遠慮するな」

「グラント国王、私からも彼にお礼を送りたいわ」

「グラント、わしも礼をするぞ」

「グラント王、わしからも礼をしたい」

「グラント殿、朕も彼に直接謝辞を述べたい」

エルフの女長老エレンミィア、ドワーフの鍛冶王ラッグズ、公国の国王レクント、皇国の皇子殿下チーローが次々とシフトに礼をすると言ってきた。

グラントがシフトを懐柔できていないと判断してアピールしてきたのだ。

そこにはシフトを自分の国に招きたいという思惑が犇々と伝わってくる。

「ダ、ダメデス。 シフトサンハワタシマセン」

各国の首脳たちの言葉に慌てたタイミューがシフトをとられまいと庇うように前に出て口に(爆弾を投下)する。

その言動にルマたちは冷たい目で、グラントたちは冷やかすような目でシフトを見た。

「あら、タイミュー女王陛下、独り占めはいけないわ」

エレンミィアがシフトに近づいて腕を掴んだ。

長老とは言っているが見た目はどう見ても20代にしか見えず、その美しい顔と豊満な胸でシフトを虜にしようと色仕掛けをしてきたのだ。

これによりルマたちとタイミューから非難の眼差しを受けることになる。

そして、男性陣はグラントたち首脳陣は興味深い目で、騎士たち(特に独り身の男性)は嫉妬深い目で見ていた。

(なぜ僕がこんな仕打ちを受けないといけないんだ?)

シフトは腕に伝わる胸の感触を堪能するよりもこの場の状況に内心頭を抱えていた。

とりあえず事態を収束しないといけないので口にしようとするがそれよりも早く声がかかる。

「ご主人様、何をしているのですか?」

ルマが笑顔でシフトを見ている。

例の如くその目は笑っていない。

「ルマ、どう見ても僕は被害者なのだが・・・」

「ええ、そうですね。 ですが払いのけることはできるはずですよね?」

「いや、そうだけど・・・」

「あら、お嬢さん嫉妬してるの? 可愛いわね。 だけど醜くもあるわ」

エレンミィアは有ろう事かルマを挑発してきたのだ。

「そんなんじゃ彼に嫌われちゃうわよ?」

「ぐっ・・・ご、ご主人様~」

エレンミィアの言葉にルマが珍しく負かされて泣きついてきた。

さすがにやりすぎだと感じたシフトはエレンミィアの掴んでいる腕を払いのける。

「あら?」

「悪いが僕の仲間()を虐めるなら例え女でも容赦しないよ」

「うふふ・・・可愛い。 ますます気に入ったわ」

それだけ言うとエレンミィアはシフトに投げキッスをした。

「はっはっは、なかなか面白いものを見せてもらったぞ」

「嫁がいるのも大変だな、シフトよ」

「・・・笑い事じゃない」

グラントたちの揶揄いにシフトは口を尖らせる。

それを見ている皆から愉快そうに笑い声が聞こえてくる。

シフトが不機嫌にしていると会議室の扉が勢いよく開けられた。

1人の騎士が室内に慌てて入ってくると緊急事態を伝える。

「会議中のところ失礼します! 東の森から正体不明の軍団がここ(王都スターリイン)に向かっています!!」

一報を受けたグラントたち首脳陣は先ほどまでの朗らかさがなくなり治世者の顔になる。

「状況は?」

「はっ! 行軍速度は徒歩でここに向かっており、到着までおよそ1時間とみています」

「正体不明というがどういうことだ?」

「その軍団なのですが人間だけでなく、エルフやドワーフ、獣人などの人間種やゴブリンなどの亜人種、そして一般的な有名な魔物たちで混成されております」

「エルフですって?!」

「ドワーフだと?!」

「ジュウジンガイルノデスカ?!」

騎士から出た単語にタイミューとエレンミィア、ラッグズがそれぞれ驚いていた。

「それは真か?」

「警備部隊全員で確認しているので間違いございません」

「亜人種はゴブリンやオーク、オーガ辺りだとして、ほかの魔物はどういうのがいるのだ?」

「熊や狼、巨大蛇に翼竜など多種多様なモンスターを見かけました」

「そうか・・・わかった」

グラントはしばしその場で考えると騎士に命令する。

「伝令!! 第一騎士団、第一魔法兵団は至急王都東門に集合し陣形を整えよ! 第二・第三騎士団、第二・第三魔法兵団は王都の見回りを強化しろ!!」

「はっ!!」

伝令を受け取った騎士は足早に部屋を後にする。

グラントはシフトを見ると声をかけた。

「シフト、すまぬがそなたの手を借りたい。 この通りだ」

第一騎士団、第一魔法兵団だけでは手に負えないと判断したのだろう。

グラントはそれだけ言うと恥を忍んで頭を下げた。

「別に構わないがいいのか? 今回の襲撃者たちにはエルフやドワーフや獣人たちが混ざっているけど、生きたまま捕えろと言われても保証できないぞ?」

シフトの発言にタイミュー、エレンミィア、ラッグズが答える。

「コノクニニメイワクヲカケルノデアレバ、ヒトオモイニヤッテクダサイ」

「致し方ありません」

「戦場では必ず死傷者が出るもの。 わしらの同胞だけでもとはいかないからな」

それぞれ承諾するとシフトは頷いた。

グラント(国王陛下)、手を貸そう」

「ありがたい、助かるぞ」

「ルマたちを連れていきたいがここの守りはどうする?」

「そこは余の国王直属聖騎士団と王宮魔導師団で対処する」

「わかった。 ルマ、ベル、ローザ、フェイ、ユール、行くぞ」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトはルマたちを引き連れて王都東門へ向かうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ