6.こんなのわかるわけがない
大陸最大のダンジョン『デスホール』地下???階───
・・・ピチョン・・・ピチョン・・・ピチョン・・・
水が水面に落ちる音が響き渡る。
「・・・ん・・・んん・・・」
少しずつ意識が覚醒する。
「・・・こ・・・こ・・・は・・・」
身体をゆっくりと起こす。
(僕は生きている?)
それを確認するように手を動かしたり、足を動かす。
地面を見て適当な小石を掴む。
感触が・・・ある。
生きてる・・・生きてる!!
「・・・は・・・ははは・・・僕は・・・僕は生きてるぞ・・・」
シフトは生きてることに素直に喜んだ。
しばらく喜びを噛み締めた。
落ち着いたところでなぜ生き残ったのか考え始めた。
自分に一体何が起きたのか。
あの高さから落ちれば即死は免れない。
(だけど僕は生きている・・・何故?)
わからないのでステータスを確認することにした。
シフトの目の前に半透明な板が出現する。
名前 :シフト
年齢 :11歳
レベル:1
生命力:8/20
魔力 :200/300
体力 :3/15
腕力 :10〔+1〕
走力 :10〔+1〕
知力 :10〔±0〕
器用 :10〔±0〕
耐久力:15〔+2〕
幸運 :777〔±0〕
装備 :武器 ナイフ〔腕力+1〕
鎧 普通の服〔耐久力+1〕、革の胸当て〔耐久力+1〕
盾 なし
兜 なし
小手 なし
靴 革靴〔走力+1〕
装飾 なし
状態 :正常
称号 :なし
職業 :元勇者一行の荷物持ち
スキル:★【ずらす】 レベル1:【即死】 レベル2:【???】
耐性 :毒無効、麻痺無効、病気無効
ん?
んんん??
んんんんん???
な、なんじゃこりゃ?????????
スキル:★【ずらす】 レベル1:【即死】
え? なに? れべるいちそくし? なにそれおいしいの?
わらかない・・・だれかせつめいプリーズ。
途方に暮れたその時、
死の概念をずらす
獲得条件:自分が即死するような体験をする
効果 :【即死】(対象:自分以外)、【即死回避】(対象:自分)
【即死】のところに吹き出しが現れ詳細が表示された。
あれ? なんで表示されたんだ?
今まで表示されたことなんてなかったのに・・・
疑問に思っていると手に持った小石が原因だった。
この石どこかで見たような・・・
確かスキルに授与されたときに見た[鑑定石]に似てるよな。
試しに石に対して鑑定と念じてみた。
[鑑定石]
品質:Sランク。
効果:この世界のありとあらゆる物を鑑定できる。
なん・・・だと・・・
この石、間違いない[鑑定石]だ。
それも最高ランクのS!
シフトは興奮しながらもこの辺りにまだ同じ物がないか[鑑定石]を使って調べた。
すると同じSランクの[鑑定石]がそこらへんにたくさんあったので小石サイズを10個ほど服のポケットにいれた。
興奮も落ち着いたところで改めて自分のスキル【ずらす】のレベル1の獲得条件を見る。
そこには文章の一部に『自分が即死するような体験をする』と書かれている。
遅効性の毒やヴォーガスたちの嬲るような攻撃は即死とは判定されなかったという訳か。
もし即効性で命を落とす毒ならあるいはヴォーガスたちの攻撃が即死なら・・・
もっと早くにスキル【ずらす】の効果が発揮されていたのだ。
(・・・こんなのわかるわけないだろ・・・僕に死ねといってるのと同義なんだから・・・)
憂鬱な・・・そして理不尽な気持ちになる。
(・・・だけど、逆に考えると誰にもこの秘密が伝わってないのは僥倖だな・・・)
シフトは頬を叩くと気持ちを切り替えた。
「とりあえずここから出ることを最優先事項にしよう」
シフトはまずは上り階段を見つけるところから始めるのであった。