74.合成魔法
皆さんこんにちは、ご主人様ことシフト様の奴隷が1人、ルマです。
私たちはご主人様の目的のためにガイアール王国の極南デューゼレル辺境伯領を目指しています。
今は日が落ちたので草原で野宿しています。
就寝までの時間、私は上級者向け魔術書を見て悩んでいるところです。
それは以前ご主人様が私には【魔法師】以外にもスキルがあると言われたから。
その名も【合成魔法】。
私も初耳のスキルだけど持っているらしい。
と言うのもご主人様が持つ特別な[鑑定石]でユールを除く私たちは隠れスキルがあることを知ることになりました。
これによりベルは【錬金術】、【錬成術】、【料理】を、ローザは【鍛冶】、【武具錬成】、【火魔法】を、フェイは【暗殺術】、【闇魔法】をそれぞれ取得に成功している。
みんな自分のステータスには表示されていなかった魔法やスキル。
半信半疑だった私たちに一番最初に認識して確認できたのがフェイの【闇魔法】です。
もともと【風魔法】を独学で覚えていたので、すぐに【闇魔法】を覚えました。
そのあと【闇魔法】を応用して【暗殺術】の取得に成功している。
次にベルが平原で覚えた【料理】と【錬金術】です。
ベルは最初はたどたどしく料理をしていましたが1ヵ月もすると料理人顔負けになるほど料理上手になっていました。
見た目も味もどんどん良くなっていき、進歩というよりはむしろ進化と言ってもいいほど。
ミルバークの町にいる錬金術師の師事のもと【錬成術】も身に着けてもいます。
最後にローザがミルバークの町にいる鍛冶師の師事で【鍛冶】、【武具錬成】を身に着けました。
また、何度も練習してようやく【火魔法】を覚えることにも成功しています。
ご主人様の[鑑定石]で調べた通り見えていない能力が次々に明るみになっていく。
そんな中私だけがスキルを未だに習得できていない。
『そもそも【合成魔法】って何?』という考えから始まっている。
魔法と魔法を合成する、これはわかる。
だけど魔法と魔法をかけ合わせた結果、何になるのかがわからない。
魔法はイメージ力が全てだ。
魔法の基礎中の基礎であると同時に最終的な結論ともいえる。
それほどイメージ力は大事なものです。
今日も私は魔術書を開くとしおりを挟んだところから続きを読み始める。
ご主人様から頂いたこの魔術書もすでに10回以上読み直しています。
書いてあることは基本的な魔法のイメージ力に理論と普通の人が見ると細々としたことが延々と綴られていた。
毎回違う切り口から読んでいるがスキル獲得には至らない。
どうしたものかと考えているとご主人様が2つのカップを持ってやってきます。
「ご主人様」
「ルマ、邪魔しちゃったかな?」
「いえ、そんなことはありません」
私は本にしおりを挟んで本を閉じ、居住まいを正すとご主人様に微笑みました。
「そう? よかったら一緒にお茶でもどう?」
「喜んで」
ご主人様からお茶の入ったカップを受け取ると私はお茶を一口飲む。
冷たいお茶が私の身体に潤いを与えます。
「ご主人様、とても美味しいです」
「そう? 良かった。 ところでその本は・・・」
「これはご主人様から頂いた魔術書です」
「ルマ・・・ごめん、余計なプレッシャーを与えてしまったね」
ご主人様は私に頭を下げる。
「ご、ご主人様、奴隷にそのようなことは・・・」
「わかっているよ。 人前ではダメだけどね。 ルマに良かれと思って与えたものが逆に悩み苦しむことになるなんて僕は望んでいない」
「ご主人様・・・」
「僕の持ってる[鑑定石]でルマの【合成魔法】について詳しく調べてみようか?」
ご主人様の提案に私は首を横に振る。
「ご主人様、それでは真に身に着けたとは言えません。 ベルもローザもフェイもきっかけはもらってもその後に自力で得ています。 私だけズルなど・・・」
「・・・そうか、余計なことを言った」
「大丈夫です。 絶対にご主人様の期待に応えて見せますから」
そう、みんなができたのだ、私だってできるはず。
心の中で自分に言い聞かせていると突然ご主人様にハグされました。
「ルマ、あまり根を詰めないで。 それから頑張ってね」
「・・・は、はい♡」
返事をするとご主人様は私から離れようとして・・・
(あ・・・)
私は後ろ髪を引かれる思いでついご主人様の服の袖を掴んでいました。
「ルマ?」
「ご、ごめんなさい」
「いいよ。 もう少しこうしてようか」
それだけ言うとご主人様は再度ハグしてくれました。
(ああ、幸せ。 神様、この時間が永遠に続きますように・・・)
私は幸せを噛みしめながらご主人様の背中に手を回すのでした。
翌日、食事を終えるとフェイがご主人様に声を掛けました。
「ねえねえご主人様、この前ルヴァイで買った桃を取り出してくれないかな」
「桃? いいよ」
ご主人様は空間から人数分の桃を取り出すとフェイに渡した。
「ありがとう、ご主人様。 大好き♪」
そういうと、あろうことかフェイは素早くご主人様の頬にキスをしたのです。
目の前の出来事に私の頭の中は真っ白になり、続いて私の心を黒い何かが染めていきます。
「フェイ」
「え? ひゃ、ル、ルマちゃん? そ、そんなに怒らないでよ」
「怒ってません」
この時の私は多分目が据わっていて頬を膨らませていたのでしょう。
みんなから引かれていました。
(またやってしまった・・・)
フェイもご主人様の嫁なのに、私は自分を抑えきれず、独占欲を剥き出しにしていました。
「ごめんって、ほら桃食べて機嫌を直して」
フェイは桃をみんなに配っていく。
私は受け取った桃を一口齧る。
甘い。
口の中に甘さと適度な水分が広がる。
私は口内にある桃を咀嚼してから嚥下する。
「甘くて美味しい」
「でしょ? ベルちゃんが見つけたんだよ。 えっへん」
「フェイ、自分の手柄にしない。 ベルの鑑定があるからこそ、こうして美味しい食べ物が手に入るんだ」
「はーーーい」
フェイは舌を出してウィンクした。
ベルは食べ終えた後に足元の土を掘り返している。
「ベルちゃん、何してるの?」
「ここに桃の種を埋めておけばいつかは桃の木になるかな?」
「ははは・・・そんな簡単にならないよ」
「むぅ・・・フェイの意地悪」
ベルは掘った穴に桃の種を埋めると土をかけて元に戻した。
「これでよし」
「面白そうだから僕もやってみようかな」
「それならわたしも」
「わたくしも植えてみますわ」
「え? みんなやるの? それならぼくもやる」
「折角ですから私もベルを見習おうかしら」
私たちは育った時のことを考えて5~6メートルほど間隔をずらして種を植える。
(ここの土壌を【土魔法】で改良して、【水魔法】で適度な水をあげれば立派な木が育ったりして)
土をかぶせると私は何気なく【水魔法】と【土魔法】を同時に放出して魔力を籠めていた。
そして頭の中で立派に育った桃の木を想像していた。
(育つといいわね・・・)
すると私の足元から芽が出てきたのだ。
「え?」
それは劇的な変化だった。
芽が育ち幹になり枝を出す。
成長は止まらず、すくすくと育っていく。
「ふぇ?!」
「ルマ? 何をした?」
ベルとフェイがびっくりして声をかけてきた。
それに気づいたご主人様とローザとユールも何事かと私を見る。
そこには先ほどまでなかったはずの木があることに驚いていた。
枝のあちこちに花が咲き、そして桃色の実をつけている。
「これはまた立派な木ですわね」
「どれ穫ってみるか」
ローザが人数分の桃の実を収穫するとみんなに渡す。
各々が口に入れて食べると、
「「「「「「美味しい!!」」」」」」
先ほど食べた桃と同じ、いやそれ以上に美味しい。
驚いていると突然私の頭の中に声が響いたのです。
≪確認しました。 スキル【合成魔法】レベル1解放 初級を取得しました≫
私は目を見開いていました。
(え? 今何が起きたの?)
私は恐る恐るステータスを開く。
スキル欄を見ると、
名前 :ルマ
スキル:★【魔法師〔【火魔法】 レベル4:特級、【水魔法】 レベル4:特級、【風魔法】 レベル4:特級、【土魔法】 レベル3:上級〕】 レベル3:上級
A【合成魔法】 レベル1:初級
今までなかった【合成魔法】がそこに表示されていた。
私は桃の実を落とすと両手で口を塞ぐ。
「ルマ?」
「ご主人様、私・・・ついに【合成魔法】を覚えました」
私の言葉にご主人様だけでなくベルたちも驚いた。
「おめでとう、ルマ」
「ルマ、頑張った」
「よかったな、ルマ」
「ルマちゃん、おめでとう」
「おめでとうですわ、ルマさん」
ご主人様たちの祝福の声に私も応える。
「ご主人様、みんな・・・ありがとう!!」
それからご主人様たちが植えた桃の種も【合成魔法】で木に育てた。
どの桃の木も立派に育ち、実をつけている。
私たちは育った桃の実を全部収穫した。
思わぬ出来事が起きたが、私たちは予定通りデューゼレル辺境伯領へと向かうことになった。
私は立派に育った桃の木に近づく。
(ありがとう)
私は桃の木に手で触れると心の中で感謝した。




