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68.サンドワーム 〔無双劇7〕〔※残酷描写有り〕

砂漠に踏み込んでから3日後───

シフトたちは今日も南東に向けて歩いている。

日中の温度は50度、夜間の温度は-40度と温度差が激しく過酷な環境の中、シフトたちは只々歩く。

スノウ・ベアーのコートとスノウ・ウルフの靴が無ければ今頃は暑さに耐え切れず引き返していただろう。

黙々と歩いているとシフトは違和感を感じた。

何かがおかしい。

足を止めるとルマたちは何事かとシフトのほうを見る。

「どうしたんだい? ご主人様」

ローザがシフトに問いかける。

しかしそれには答えず周りを見回し、上空を見上げた。

太陽が燦燦と輝いている。

そしてあることに気づいた。

それは先ほどまで明るい灰みの黄色の砂だったのにいつの間にか血のように赤に染まった砂を歩いていることに。

「! 気をつけろ!! 何かが潜んでいるぞ!!!」

シフトの言葉にルマたちは急いで戦闘態勢をとる。

しばらくするとシフトたちの目の前の砂から何かが勢いよく姿を現した。

それは全長5メートル以上ある細長い蛇で口中に歯の生えたモンスター・・・サンドワームだ。

それも1匹だけでなくシフトたちを囲むように3匹同時に砂から出てきた。

「これは・・・サンドワームか! ご主人様、あいつの弱点は火です!!」

ローザは傭兵時代に戦った経験から弱点をみんなに伝えると剣を構えると魔石に魔力を流して火を纏わせる。

「ありがとう、ローザ。 みんな、ナイフ(魔法武器)の魔石に魔力を流して火を纏わせて戦うよ。 ルマは【火魔法】で応戦して。 チーム分けは僕とユール、ルマとフェイ、ベルとローザだ」

「「「「畏まりました、ご主人様」」」」

それぞれがチームに分かれてサンドワームに特攻する。

サンドワームもただ黙っているだけではなく、それぞれがその巨体を生かして突進したり、口を開けて呑み込もうとしたり、あるいは身体を垂直にするとそのまま倒れてくる。

シフトたちは攻撃を回避すると火を纏わせた武器で各々が攻撃を開始する。

すれ違いざまにナイフで切り裂くように攻撃すると同時に切り裂いた場所に火が燃え移った。

サンドワームは悲鳴の代わりにその巨体を砂の上でゴロゴロさせる。

シフトたちからしたら暴れまわっているように見えた。

鎮火したサンドワームは怒り狂い口を開けながら突進してくる。

シフトは跳躍するとサンドワームの身体に乗り、その身体に思い切り力を籠めた拳で殴った。

あまりの激痛にサンドワームの身体はくの字に折れ曲がってそのあと倒れた。

サンドワームは先ほどまでの勢いがなく身体が痙攣し続けている。

今の一撃で絶命していないところを見ると大した生命力だ。

シフトとユールは今がチャンスだとばかりにナイフでサンドワームを突いて突いて突きまくった。

ナイフで突かれた場所には次々と火が燃え移っていく。

抵抗できないサンドワームは最後には身体全体が火に包まれてそのまま焼死することとなった。

サンドワームの1匹を倒したシフトはベルとローザを見る。

ローザはサンドワームの胴体を剣で真一文字に横薙ぎしながら尻尾のほうまで走っていく。

切り口からは盛大に出血し、後を追うようなかたちで着火する。

ローザの反対側ではベルが接近して刺してはすぐに離れるヒットアンドアウェーで攻撃していた。

やがてサンドワームは出血多量と全身火傷により砂地に沈んだ。

ベルとローザによる連携攻撃の勝利である。

お互いに手を叩きあい健闘を称えあう。

ルマとフェイを見るととんでもないことになっていた。

そこには身体が()()()になったサンドワームが縦横無尽に移動してフェイを追っている。

残りの部分は傷口から大量に出血しているが襲うことはなくその場でじたばたしていた。

シフトとユールはルマのところに急いで向かう。

「ルマ! 何があった!!」

「ご主人様・・・それが・・・」

ルマはバツが悪そうにフェイを見る。

それでなんとなく察してしまった。

「ああ・・・もしかしてフェイが【風魔法】で胴体をぶった斬った?」

ルマは恥ずかしそうにしながら首を縦に振った。

フェイがサンドワームを見てルマに提案したのが事の発端である。

『ねぇねぇ、あのサンドワームを半分にしてから倒したほうが楽じゃない?』

ルマが答える前にフェイがサンドワームに対して【風魔法】を使ってしまった。

フェイの【風魔法】による風の刃はサンドワームを見事に頭と胴体が泣き別れるのに成功したが・・・

身体の2/3を失ったサンドワームが怒り狂いフェイを襲ったのだ。

それも身体が軽くなった分、速度も格段に上がっている。

そして現在フェイは逆鱗に触れたサンドワームに追いかけられていた。

「「「「・・・」」」」

シフトとユールだけでなく合流したベルとローザもフェイの短慮な行動に言葉が出てこなかった。

そうこうしているうちにフェイがこちらに気づく。

「ちょっ?! みんな何呑気に見てるの?! 助けてよ~」

呆れてものが言えないが助けない訳にもいかない。

シフトは【空間収納】から斧を取り出し担ぐとフェイのほうに走っていく。

「ご、ご主人様! 助けてぇ!!」

フェイはシフトのほうに進路を変えて走ってくる。

サンドワームも負けじとその後を追う。

「フェイ! 全速力で走ってこい!!」

「わ、わかった!」

フェイは全速力で走るとシフトとの距離は縮みサンドワームとの差が開いていく。

シフトは交差するようにフェイとすれ違うとさらに加速しサンドワームに突っ込みながら力任せに斧を振り下ろした。

サンドワームはその攻撃をもろに受けると砂地に叩きつけられた。

シフトは斧を持ち上げると刃が食い込んでいるのかサンドワームごと持ち上がり再び砂地へと叩きつける。

砂地に叩きつけられる度にサンドワームの動きがだんだん悪くなっていく。

10回を優に超える叩きつけにサンドワームも抵抗する力を失ったのか大人しくなると、シフトは斧を引き抜き止めに火を放つ。

サンドワームはその場で火に炙られた鰹節の削りのようにうねうね動いてやがて止まった。

シフトは焼け焦げたサンドワームを持ってルマたちのほうに戻るとフェイが抱き着いてきた。

「ご主人様、ありがとう。 ぼく死ぬかと思ったよ」

シフトはフェイを引き剥がすと脳天に軽くチョップを入れる。

「いたっ!!」

「フェイ!! ルマに迷惑かけてどうする!!」

「ごめんなさい・・・」

「僕にとってはフェイは大事な仲間()なんだ。 あんまり心配させないでくれ」

そういうと今度はシフトがフェイを抱く。

「あ・・・うん」

フェイは普段とは違うシフトの行動に驚きと同時に大切にされていると実感をした。

「おほん」

そこに冷や水を浴びせた人物がいる。

ルマだ。

シフトとフェイの抱擁を見て嫉妬してしまったのだ。

よく見るとベルとローザとユールはルマが怖いのか少し離れていた。

シフトはフェイから離れる。

「えっと・・・ごめんね、ルマちゃん」

「・・・別にフェイが無事で良かったです」

ルマは大人気なく拗ねているのは理解しているのだが感情が抑えられないようだ。

シフトはやれやれと思いながらサンドワームの死体を回収しようとしたとき異変を感じる。

地中にまだ何かいるのだ。

「みんな、気をつけろ!! まだ何かいるぞ!!」

ルマたちは先ほどまでの雰囲気はどこへやら、周りを警戒するとサンドワームが次々と地中から現れる。

どうやら同族(サンドワーム)の血に誘われてやってきたらしい。

サンドワームたちはシフトを見るや否や敵として襲ってきた。

シフトは襲い掛かってくるサンドワームの側面に近づき次々と殴ったり蹴ったりして地面に鎮めるとルマたちが止めを刺していく。

やっていることはゴブリン大軍団と戦った時と同じことをしている。

倒されたサンドワームの死体を集め、シフトは空間にしまっていく。

落ち着いたと思ったのもつかの間、追い打ちをかけるようにサンドワームたちが地中から現れシフトたちに牙をむく。

「え?! また?!」

フェイが呆れた声を上げる。

それはそうだろう、今倒したばかりなのに『また来たよ』ってノリで地中から姿を現すのだ。

フェイだけでなくルマたちもうんざりしている。

「ほら、僕がさっきみたいに弱らせるから止めをよろしくね」

シフトはサンドワームの群れに突進する。

これを皮切りに砂漠を超えるまでの間シフトたちとサンドワームたちの激闘が今ここに始まったのだ。


今までサンドワームを間引く者がいなかったのかここはサンドワームたちの楽園になっていた。

砂漠だけあって食料はないので共食いになるがそれでも繁殖のほうが圧倒的に多いので減るどころか増えていったのだ。

そんなサンドワームたちは昼夜問わず四六時中シフトたちに襲い掛かっていく。

食事中だろうが就寝中だろうがお構いなしだ。

あるときはサンドワームたちの襲撃が止まずに1日中足止めを食らう。

またあるときは【次元遮断】で結界を張ったうえで寝て起きるとサンドワームの群れに囲まれている。

終いには全長20メートル以上はあるこの砂漠の主ではないかとおもわれるほど立派なサンドワームが雑魚(一般サイズ)を大量に引き連れて襲い掛かってきた。

さすがにこれはやってられないと判断したシフトは奥の手の【即死】を開放して、主をはじめとしたサンドワームを文字通り【即死】させていった。

こうして砂漠の旅は続いていく。


2ヵ月後───

砂漠を超えるころにはシフトの【空間収納】には(ボス)を始めとした大量のサンドワームの死体が収納されていた。

なぜパーナップ辺境伯領とデューゼレル辺境伯領との乗合馬車がないのかシフトたちはようやく理解した。

こんな危険な(サンドワームがいる)ところを通る馬鹿はいないのだと。


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