62.獣姫の野望
私の名前はタイミューといいます。
獣王国の2番目の姫です。
1ヵ月以上前になりますが仕事で国内を移動しているときに右手に変な模様を付けた見知らぬ集団から命を狙われました。
みんな私を守ろうと必死になって戦ってくれました。
だけど相手の力が上回っていたので結果的に敗れ、護衛と逸れて散り散りに逃げることになりました。
それから私は空腹に耐えながらどこだかわからないところを歩いていました。
やがて大きな町が見えてきました。
よく見ると門を守護するのは人族です。
たしか人族が使うお金がないと町に入れないと聞いたことがあります。
町の外にいれば追手に捕まる可能性が高いです。
私は覚悟を決めると町の壁のほうに歩くと足に力を籠めて跳躍しました。
門を越え町の中に入ることに成功すると安堵からその場に座り込んでしまいます。
見知らぬ土地、水も食料もなく、見つかれば何をされるかわからない。
それでも訳も分からず殺されるのは嫌です。
これからのことを考えているとこちらにフードを被った人が来ます。
右手にはあの変な模様があります。
逃げようとすると反対側にも同じような人がいます。
いつの間にか囲まれていて逃げないと思ったその時、
「ちょっと待った!」
声をしたほうを見ると人族の緑髪の雌がこちらに駆けてきます。
突然の乱入者にフードたちは私よりも緑髪を倒すほうを優先したようです。
私のせいで緑髪が殺されると思ったとき、目の前では信じられないことが起きていました。
緑髪が刃物を持ったフードたちを相手に次から次へと素手で倒していったのです。
あの身体のどこにそんな力があるのか不思議でなりません。
しばらくすると緑髪の仲間がやってきてフードたちは不利だと悟ったのか逃げていきました。
「大丈夫? 怪我はない?」
「ハイ、アリガトウゴザイマス」
「耳と尻尾?」
紫髪の雌が耳と尻尾を見てきたので私は恥ずかしさから縮こまってしまう。
「! もしかして獣人族か?! なぜこんなところに」
青髪の雌が私のことを言い当てた。
どうしよう、私どうなっちゃうんだろう。
「ちょっと驚かせてどうするのよ」
「私たちはあなたの味方よ。 とりあえずはこれを着て私たちに付いてきて」
黄髪の雌が窘めて、赤髪の雌が敵対する意思がないことを告げるとフード付きのマントを私に着せました。
不安はあるけど他に行く当てもない私には選択肢はなかったのでこの人族に付いていくことにしました。
しばらくするとこぢんまりとした部屋に着くと中にはオレンジ髪の雄がいました。
オレンジ髪は私のことを2~3質問すると部屋を出ていきました。
そのあとは緑髪に椅子を勧められました。
きゅるきゅるきゅる・・・
椅子に座ると私は安堵したのか急にお腹が空腹を訴えてきたのです。
今の私はあまりの恥ずかしさに真っ赤な顔になっていると思います。
だけど誰も笑わずにいてそれどころか紫髪が食料と水を用意してくれたのです。
「これ食べる」
私は人目も憚らず目の前の食料を口に入れ、水を飲んでいた。
久しぶりの食事に満足すると緑髪が話しかけてくる。
「落ち着いた?」
私が首を縦に振ると部屋の扉が開いてオレンジ髪が入ってきたのです。
あとは皆さんも知っての通り、2度の襲撃に姉派の獣人による包囲網も人族の助力を受けて事なきを得る。
そして無事に王都まで着くことができました。
今夜、私は自分の住処である王城に戻ってきた。
暴君と化そうとしている姉を止めるために。
作戦としては陽動部隊と護衛部隊の2つに分かれて城内を攪乱させるそうです。
陽動部隊は赤髪、紫髪、青髪で護衛部隊がオレンジ髪、緑髪、黄髪です。
陽動部隊が派手に動いている間に私と護衛部隊は姉の所を目指して城内を走っている。
まずは姉の部屋を訪れたが誰もいなかった。
つぎに食堂に行ってみたがそこにもいなかった。
謁見の間にいってみるとそこには姉が妹と話をしていた。
「ア、タイミューネエサマ。 シンパイシタンデスヨ?」
「タイミュー・・・イキテタノカ」
妹が心配して声をかけたかと思うと姉は真逆の反応を示す。
「ネエサン、ハナシガアリマス」
「ザンネンダケドワタシニハナイノヨネ」
姉が手を叩くと近衛騎士たちが広間に集まってくる。
「ソコニワガイモウトタイミューヲナノルフケイモノガイル。 ソッコクシマツシロ」
私を見ると近衛騎士たちはざわついた。
「ナニヲシテイル! ハヤクシナサイ!」
近衛騎士たちは渋々命令に従い私を攻撃してくる。
「悪いがタイミュー王女殿下を殺されるわけにはいかないのでね。 邪魔させてもらうよ。 フェイ、ユール」
「「畏まりました、ご主人様」」
オレンジ髪が緑髪と黄髪に指示を出すと近衛騎士たちを相手に3人で対峙する。
足止めをしている間に私は姉と妹のところに向かう。
そこでは妹が姉に止めるよう説得していた。
「レパーリュネエサマ、ヤメテ。 メイレイヲトリケシテ」
「ウルサイ。 ワタシニサシズスルナ」
「コノママデハタイミューネエサマガ・・・」
「ジャマヲスルナ。 ピュルム」
姉は腰に差した剣を鞘から抜くと妹を袈裟切りに切ったのだ。
妹は咄嗟の出来事に反応できずに右肩から左腰にかけて深い傷を負ってその場に倒れこむ。
「ナッ?! レ・・・レパーリュ・・・ネエ・・・サ・・・マ」
「ピュルム!! ネエサン! ナンデピュルムヲキッタノ!!」
「コレモイツカハシマツスルヨテイダッタカラナ。 ソレガハヤマッタダケダ」
「ネエサン!」
私は腰の剣を抜くと姉と対峙する。
「タイミュー、オマエヲコッカハンギャクザイデシマツスル」
「ネエサン、コレイジョウノアクギョウヲユルスワケニハイカナイ」
私と姉は同時に動き出すとお互い袈裟切りでぶつかりあうと鍔迫り合いになる。
「シネ! タイミュー!!」
姉は剣に力を入れてそのまま強引に切りかかろうとするが私も負けじと剣に力を入れた。
このままでは埒が明かないとお互い距離をとる。
そこからは剣での応酬が始まった。
唐竹割りを左切り上げで対応したり、横薙ぎをバックステップで躱したり、袈裟斬りや逆袈裟斬りでの斬り合いになったり、刺突を横に回避したりと熾烈な攻防が続いている。
すでに20合以上交えているがお互い一歩も引かないし、譲らない。
このままずっと続くかと思ったが以外にも早く結末を迎えることになる。
それは戦っているうちに姉の様子が少しずつ変化していたからだ。
そうまるで何かに苦しんでいるみたいに。
私は姉の横薙ぎを受け止め弾くとお腹に剣を刺した。
姉は口から吐血ともにお腹から出血している。
暴走を止めるためとはいえ実の姉に手をかけることに心を痛め、いつの間にか私は泣いていた。
「ネエサン・・・サヨウナラ」
姉の口を見る。
ニ・・・ゲ・・・テ・・・
その直後、背中に痛みを感じたと思えばお腹にも痛みを感じる。
「エ?」
私は自分のお腹を見るとそこには刃物の先端が見えていた。
何が起こったのかわからず後ろを振り向くとそこには死んだはずの妹が剣を持って私を刺していたのだ。
「ピュ・・・ル・・・ム?」
「ソウヨ、ワタシヨ。 ピュルムヨ。 タイミューネエサマ」
「ア・・・アナタ・・・ハ・・・サッキ・・・ネ・・・ネエ・・・サン・・・ニ」
「アア、アレ? アレハワタシノカゲムシャヨ。 レパーリュネエサマモタイミューネエサマモワタシガオウイヲツグノニジャマダカラネ。 フタリマトメテショブンスルコトニシタノ」
「ソ・・・ン・・・ナ」
「サヨウナラ、タイミューネエサマ」
妹は刺した刃を引き抜くと私は口から血を吐き出していた。
お腹と背中の傷口からも止め処なく血が流れている。
そして私の意識はどんどん失っていく。
やがて私の視界は霞んでだんだんと暗くなっていった。




