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4.スキルが使えない

シフトがザール辺境伯に引き取られてから約5年後───

国歴1850年、季節は日々の暑さが和らいでいく時期。

「おい、もうあれから5年も経ってるんだぞ! まだスキルを使えないのか?!」

「申し訳ございません」

シフトは今日も今日とてザールに呼び出されてスキルが使えないことを責められていた。

「だいたいスキルレベル1すら解放されないとはどういうことだ!!」

「と言われましてもどうすれば解放されるのかわからないもので」

シフトは唯々謝るしかできなかった。

ここに来た当初は「期待している」「慌てることはない」など言われたが、スキルの片鱗すら発動しないことにザールは苛ついていた。

「ふん、無能な親から生まれた子供は無能だな!!」

「・・・」

「もういい! 今日は下がれ!!」

「・・・失礼いたします」

シフトは深く礼をすると部屋を出た。

シフトは思う。

なぜ自分のスキルが発動しないのだろう。

「ステータス」と心の中で呟く。

シフトの目の前に半透明な板が出現する。

そこにはシフトの情報が色々と記述されていた。


名前 :シフト

年齢 :9歳

レベル:1

生命力:13/20

魔力 :300/300

体力 :10/15

腕力 :10〔±0〕

走力 :10〔+1〕

知力 :10〔±0〕

器用 :10〔±0〕

耐久力:15〔+1〕

幸運 :777〔±0〕

装備 :武器 なし

    鎧  使用人の服〔耐久力+1〕

    盾  なし

    兜  なし

    小手 なし

    靴  革靴〔走力+1〕

    装飾 なし

状態 :正常

称号 :なし

職業 :ヘルザード辺境伯 執事見習い

スキル:★【ずらす】 レベル1:【???】

耐性 :毒耐性(中)、麻痺耐性(中)、病気無効


5年もの間に執事長からいろんなことを教わったなぁ・・・

このステータスも執事長から教わったものだ。

そういえば魔力と幸運が異常に高いと驚いてたし。

あと意地悪な上司や同僚から毒や麻痺などで嫌がらせ受けてたからいつの間にか耐性ついてる・・・

ステータスを見てるとシフトは自分がここにいる一番の要因であるスキルの欄を見た。


スキル:★【ずらす】 レベル1:【???】


以前、執事長のステータスを見せてもらったときはこんな表記ではなかったよな。

執事長のスキルは確か・・・


スキル:★【風術師】 レベル5:究極

    D【水魔法】 レベル2:中級


だったはず。

★はスキル鑑定の儀で授与されたスキル(※ユニークスキル)を指すらしい。

スキルはレベルを5まで上げることができる。

どのスキルも最大5なのかは不明だけど。

そう考えると執事長は風術師を極めてたんだよなぁ・・・

執事長にスキルを上げるにはどうすればいいかと話を聞いたとき、


「私が最初にスキルを授与されたときはスキル欄に『★【風術師】 レベル1:初級』と書かれていましたね」

「『★【風術師】 レベル1:初級』?」

「そうです。 【風術師】から何かイメージが送られてきたのでその通りにしたら最初から魔法が使えましたよ」

「・・・そうですか・・・」

「ただスキルのレベルを上げるのに相当苦労しましたよ。 残りの属性も試しましたが【水魔法】の低レベルだけで」

「僕も魔法使えますかね?」

「それはシフト君次第でしょう。 こればかりは何とも言えません」

「魔法使ってみたいなぁ」

「それなら魔法書を持ってきますので今から試してみましょう」

「本当ですか?!」

「ええ、それでは少々お待ちください」


そのあと各属性の最下級魔法を延々とやってみたけど何一つとして覚えなかった。

執事長は【水魔法】を取得したときはやっと覚えたと思ったらランクがDで落ち込んだとも言ってたな。

ランクについても教えてもらったが、ランクはA・B・C・D・Eの5段階。

Aはレベルを最大5まで上げられるが、Eはレベル1しか覚えられない。

魔法だけでなく料理や裁縫、掃除などもスキルで覚えられると教わったので試したけどスキル覚えなかったんだよね。

他人ができて自分はできないって理不尽だなぁ・・・


そんなこんなで嘆く日々を送っていたある日のこと。

「シフト君。 旦那様がお呼びです」

執事長がシフトを呼びに来た。

またいつもの説教か・・・

憂鬱な気持ちだが顔に出さないように心掛けて執事長へ返事をする。

「わかりました」

「・・・」

「ん? 執事長?」

「・・・」

執事長は悲壮感漂う顔をしていた。

「・・・すまない」

「執事長?」

「・・・君を守れなかった。 本当にすまない・・・」

「・・・執事長・・・」

シフトはその一言で何を指すのか理解してしまった。

気持ちを切り替えてザールのところへ向かう。

扉の前で身だしなみを整えてから扉をノックする。

「ザール様、シフト参りました」

「入れ」

「失礼いたします」

部屋に入るとザールの他に客人が5名いた。

「ザール様、ご用件は何でしょうか?」

「シフト、お前は今日付でクビだ」

先ほどの執事長の一言で解っていたことだ。

シフトは一礼してそれを受け入れる。

「・・・わかりました。 今日中に荷物をまとめて屋敷から退館いたします」

「まぁ待て。 お前にはここにいる勇者一行の荷物持ちとして今後活躍できるように頼んだから」

「勇者御一行?」

シフトが客人を見ると彼らも口々に話始める。

「彼がレアスキルの持ち主かい?」

「如何にも弱そうだな」

「失礼ですよヴォーガス。 荷物持ちだけでも役に立つかもしれませんのに」

「ルースこそ酷くない? そりゃスキルもロクに使えないんじゃ文字通りお荷物だけどねぇ~♪」

「・・・やってみないとわからない・・・」

「紹介するぞ。 『勇者』ライサンダー、『鉄壁』ヴォーガス、『聖女』ルース、『賢者』リーゼ、『剣聖』アーガスだ」

「シフトと申します。 ライサンダー様、ヴォーガス様、ルース様、リーゼ様、アーガス様」

「おう、よろしくな」

ヴォーガスは握手を求めてきた。

乱暴な口調だけど優しい部分もあるんだな。

失礼のないように握手をすると・・・

「く、あああああああぁーーーーーーーっ!!!」

ヴォーガスは骨を折らないように絶妙な力加減でシフトの手を握りしめた。

「あっはっはっはっは、この程度しか握力がないのかよ!!」

「ちょ、やめなさいよ・・・」

リーゼがヴォーガスを止めてくれるのかと思ったが、

「あたしが壊す前に壊すんじゃないわよ」

違った。

ヴォーガスもリーゼもシフトをおもちゃとしてしか見ていなかった。

いや、口にこそ出してないがライサンダー、ルース、アーガスもこの状況を楽しそうに見ていた。

シフトが壊れるのを楽しそうに。

「やめろヴォーガス! やるなら違う場所でやれ」

「ザールさんの言うとおりだ。 手を放してやれ」

「なんだよ、良いところだったのに・・・って、そんな睨むなよ。 わかった、わかったから・・・」

ヴォーガスはシフトの手を離した。

赤く腫れあがり鬱血していた。

その手を見てルースが声をかける。

「可哀想に今治してあげる」

笑顔だが目が笑ってない。

シフトが断るより前にルースは【治癒魔法】をかけた。

傷は治っていくがそれと同時に身体に異変が起きた。

この感覚は知っている。

これは神経毒だ。

それも今まで盛られた毒とは比較にならないほどの量だ。

「あああああぁーーーーーっ!!」

苦しんでいると脳内に声が響き渡る。

≪確認しました。 毒耐性(中)が毒耐性(強)へ進化しました≫

≪確認しました。 麻痺耐性(中)が麻痺耐性(強)へ進化しました≫

耐性が進化したところで痛みが和らいだ。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

シフトの痛みが和らいだことを直感で感じたんだろう、先ほどまでの笑顔が一変、般若のような顔で睨んだ。

「なぜもっと苦しまないのですか? これじゃつまらないでしょう」

「ルースやめろ。 ちゃんと直してやれ」

「・・・わかったわよ、ライサンダー」

ルースは【回復魔法】をかけると失った体力が一気に回復した。

シフトは助けてくれたライサンダーを見た。

「とりあえず必要な荷物だけまとめて玄関で待っててくれ」

ライサンダーは冷徹にそれだけ言うと手で追い払うような仕草をした。

シフトは一礼してザールの部屋を出ると自室に戻り数少ない荷物をまとめて玄関へと移動した。


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