表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/394

56.無力化 〔無双劇6〕

執務室を出たシフトとアルデーツは廊下を歩いていた。

「手伝ってくれるのはありがたいが本当にいいのか?」

「構わない。 ここで止めなければガイアール王国と獣王国での戦争になるのは火を見るより明らかだ」

「なら前衛は任せたい」

「ああ、後方は任せた。 あなたの技量は僕も知っているから。 ただ、僕には当てないでくれよ?」

2人は淡々と役割分担を話し合う。

「それでは先に行ってる」

「僕も仲間(ルマたち)を引き連れてすぐに行く」

館を出ると2人は別々の方向に歩いて行った。


犬も転ぶ亭へ戻ると部屋ではルマたちとタイミューが雑談していた。

「あ、お帰りなさいませ、ご主人様」

ルマはシフトが戻ってくると慌てて出迎えるが、シフトは手で制した。

「みんな聞いてくれ。 今この都市に獣人が10000人ほど攻めてきている」

「「「「「「10000人 (ニン)?!」」」」」」

ルマたちとタイミューはあまりの人数に驚いていた。

「これから僕は獣人の無力化に行ってくる。 ルマ、ローザ、フェイは僕と一緒に、ベルとユールはこの部屋でタイミュー王女殿下を頼む」

「わかりました・・・って、タイミューちゃん、王女殿下だったの?!」

フェイがあまりにも素っ頓狂な声を出す。

ルマたちも驚いた顔でタイミューを見た。

「良い所のお嬢様だとは思ったがまさか王女殿下とはねぇ・・・」

ローザがちょっと呆れた感じで言うとタイミューは申し訳なさそうに頭を下げる。

「ゴメンナサイ。 ミブンシッタラタイドガカワルカモシレナイトオモッテ・・・」

タイミューはルマたちに謝罪した。

「別にいいよ。 それよりタイミューちゃん(王女殿下)を狙う輩がいた場合、ベルちゃんとユールちゃんだけでは戦力が心細いような気がするんだけど」

「たしかにそうだな。 ローザかフェイのどちらを残すか・・・」

フェイの言葉はもっともなことでシフトが考えているとその発言者であるフェイが手を挙げる。

「それならぼくだね。 室内なら【武闘術】と【闇魔法】を持っているぼくのほうが圧倒的に有利だからね」

「なるほど・・・わかった、それでいこう。 ここを襲撃するようなことがあれば対処はまかせる。 ただし、獣人が攻めてきた場合は殺さずに無力化してくれ」

「殺さずに無力化か・・・了解」

「わかった」

「任されましたわ」

シフトの命令にベル、フェイ、ユールは首を縦に振った。

ルマ、ローザはそれぞれ武器を身に着ける。

「ルマ、ローザ、準備はいいか? 行くぞ」

「「畏まりました、ご主人様」」

宿を出るとシフトたちはこの都市の西を目指した。


10分後───

パーナップ辺境伯領の西門に到着するとまだ獣人たちはここまで攻めてきていなかった。

そこではアルデーツが衛兵に指示を出している。

「待たせたな」

「いや、始まる前に到着して助かった」

「作戦は?」

「基本はシフトが前衛で、私が後衛から弓矢で獣人を無力化する。 他の者たちにも頑張ってもらうが最悪の場合は足止めに徹してもらうように指示した」

館で別れる前に話した内容通りに進めるらしい。

「そのほうがいいだろう。 下手に攻撃して殺しましたじゃ洒落にならないからな」

「私も鏃を非殺傷能力の物に変えて相手(獣人)の手足を攻撃する予定だ」

「了解だ。 ルマ、ローザも無力化できるならお願いしたいが無理なら足止めに徹してくれ」

「「畏まりました、ご主人様」」

西門外のほうから地響きが聞こえてくる。

どうやら獣人がここまで攻めてきたらしい。

「それじゃ、打って出る。 ルマ、ローザ、いくぞ」

「「はい!!」」

シフトは2人に声をかけると西門を出る。

遠目に獣人がこちらに走ってきているのがわかる。

先ほどの伝令の情報が正しければおよそ10000人の獣人が攻めてきたことになるだろう。

普通であれば脅威以外の何物でもないだろう。

だが、突出した力の持ち主がいなければこの程度ならどうということはない。

これがギルバートやアルデーツ級の実力者ばかりなら別であるが。

「ルマ、ローザはここで待機。 僕の横を通り過ぎて都市に向かった獣人を無力化してくれ」

「ご主人様、わたしたちも一緒に・・・」

援護射撃(アルデーツの矢)に被弾するといけないからここで食い止めてほしい」

「わかりました」

ローザは無理を言わずに引き下がる。

シフトは獣人の群れに突っ込むのだった。


シフトがナイフを構えると獣人たちは一斉に襲い掛かる。

いくら身体能力で人間を上回っていてもギルバートやダーク・ウルフ並みのスピードではないなら大したことはない。

いつものように【五感操作】で距離感や平衡感覚を狂わせては手や足をナイフで切りつけたり刺したりして獣人たちを次から次へと無力化していく。

「コノニンゲンツヨイ」

「アイテハヒトリダ」

「ゼンインデカカレ」

獣人たちは圧倒的な数でシフトを潰そうとする。

躱す、切る、躱す、突く、切る、躱す、突く、躱す、切る、・・・

シフトの攻撃で受けた痛みに耐えられないのか獣人たちはその場で蹲るしかできなかった。

シフトが対応できなくて横を通り過ぎる獣人たちはアルデーツが弓矢で対応している。

その腕は見事なもので正確に手や足を狙って矢を放っていた。

『必中』の矢は伊達ではない。(ナンゴー辺境伯談)

それでも獣人の全てを足止めはできず攻めてきた者たちはルマ、ローザや騎士、魔法士、衛兵たちが対応する。

ルマや魔法士たちは【火魔法】で牽制したり、【水魔法】の水球で足止めしたり、【風魔法】で手足を狙ったり、【土魔法】で壁を作って隔離したり、【光魔法】や【闇魔法】で視界を奪ったりしていた。

ローザや騎士、衛兵たちは獣人たちの手足を狙って攻撃している。

特に実戦経験がない者たちは2~3人で1人の獣人を相手にしていた。

しかし獣人たちも黙ってはいない。

弱そうな者を狙い次々倒していく。

人間を模倣して1対多で攻撃する者もいる。

多対多の乱戦になっている場所も何ヵ所かあった。

戦況は今はどちらに傾くかわからない状態である。

それから1時間経過し、2時間経過し、未だに獣人たちは尽きることなく攻めてくる。

シフトは疲れを一切見せず、スキルを最大限に生かして流れ作業のように急所を外す攻撃を次々と繰り出す。

「モウズイブントタタカッテイルノニイマダニタオセナイダト」

「アレダケコウゲキシテイルノニイチゲキモアタエラレナイトハ」

「バケモノカ」

「そろそろか・・・」

獣人たちを見てシフトは一言つぶやいた。

アルデーツも途中矢が無くなってしまったが補充が完了して今は攻撃を再開して援護している。

ルマやローザはシフトのスパルタ教育を受けただけあって問題なさそうだ。

騎士や魔法士、衛兵たちは疲労からか2交代制で対応していた。

このままいつまでも続くと思っていたがここにきて急に獣人たちの数が減っていく。

戦況がシフトやアルデーツに傾いていたのだ。

アルデーツは大声で騎士や魔法士、衛兵たちに現状を報告する。

「みんな!! もうすぐ獣人たちの攻めが終わるからもう少し耐えてくれ!!」

「「「「「「「「「「おおーーーーーっ!!!!!」」」」」」」」」」

アルデーツの一言に皆気合を入れ直す。

そしてついにその時が来た。


3時間後───

太陽は西の地平線に沈むころ。

戦場の最前線にはシフトだけが立っていた。

あとの獣人たちはそこら中でうめき声をあげている。

「ヒメサマ・・・タスケラレナカッタ」

「ワタシタチデハムリデシタ」

「タイミューサマ、モウシワケゴザイマセン」

多くの獣人たちが姫であるタイミューを助けたいがために危険を冒してまでここ(ガイアール王国)に攻めてきた。

そして中には違う考えの者も少数いる。

「ク・・・ヒメヲコロスゼッコウノキカイヲ・・・」

「コノママデハサクセンガシッパイスル」

「ナントカシナケレバ・・・」

「ほう、姫っていうのはタイミュー王女殿下のことか?」

「「「!!」」」

不穏な言葉を発していた獣人たちはいつの間にか近くにいたシフトに聞かれていた。

「! オマエハサッキノ!!」

「キカレタカラニハココデシンデモラウ!!」

「クタバレ!!」

先ほど無力化されて動けなくしていたが痛みに耐えて無理矢理攻撃してくる。

「無理はするな」

シフトは先ほど攻撃した部位をもう一度攻撃する。

痛みが倍増したのか獣人たちは芋虫のように転げ回っている。

そこに息も絶え絶えにアルデーツと十何名かの部下がやってくる。

「お疲れ、大丈夫か?」

「なんとかな・・・全然疲れてないようだが・・・」

「この程度なら問題ない」

「・・・化け物め」

アルデーツが呆れているとシフトが親指をさす。

「あいつらはタイミュー王女殿下の暗殺部隊らしい」

「なるほど、重要参考人か・・・それはこちらで厳重に護送する」

アルデーツは部下に捕縛し厳重に都市まで護送するよう命じた。

そのあとシフトとアルデーツは戦場を歩き回り反タイミュー派の獣人探しを行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ