49.ドラゴン再び 〔※残酷描写有り〕
ビュオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーー!!!!!!!
シフトはドラゴンと共に一応は転移に成功した。
今シフトたちは王都スターリインから5キロ以上離れた南西の砂漠地帯上空2500メートルのところで現在落下中である。
「寒い!!」
それは地上と上空の温度差が約17度に加え風圧がシフトとドラゴンを襲った。
なぜシフトとドラゴンは上空にいるのか・・・それはドラゴンが転移直前に身体を捻ったことでシフトの視界が上空に向いてそこにあった雲を見てしまいそのまま転移してしまったのだ。
雲間から抜けたのでシフトは周りを見渡すと王城が遥か先に見えていた。
とりあえず王都に被害が出てないことは幸いだが、今度はこの状態を何とかしないといけない。
このままだと砂とはいえ地面に激突は必至、ただではすまない。
シフトはドラゴンの背中をおもいっきり蹴ると距離を取り、少しずつ降りるように転移を繰り返した。
一方のドラゴンは錐揉みしながらそのまま砂へと衝突したのだ。
そのさい半径500メートル内に大量の砂埃が舞った。
ドラゴンが衝突してから3分後にシフトもなんとか地上に降りられた。
「ふぅ、酷い目にあった」
砂埃はまだ舞っていた。
「さて、ドラゴンは今どうなっているかな?」
少しずつ砂埃が晴れていき、ドラゴンの姿が見えてきた。
「あ゛」
ドラゴンは仰向けになって半ば砂に埋まっていた。
体勢を立て直そうとしても身体の半分以上が砂の中なので動くことすらできない。
首と前足を必死に動かしているが砂の中から這い出ることはできなかった。
どうしたものかと考えているとドラゴンと目が合った。
「「・・・」」
ドラゴンは灼熱のブレスを放ってきたがシフトよりも遥か上を炎が通り過ぎて行った。
「ここにいると危ないな」
シフトはドラゴンの頭のほうに移動する。
ドラゴンはなんとか攻撃しようと前足を動かすがそもそも頭まで届かない。
この瞬間ドラゴンの生殺与奪の権利はシフトが握った。
「ドラゴンの素材は貴重だからな・・・よし倒そう」
とりあえずはローザが作った鋼のナイフでドラゴンの脳天に攻撃してみる。
ガキイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!
刃は折れなかったが龍鱗に阻まれて攻撃が通らない。
次にナイフの魔石に魔力を流して火を纏わせてから再度攻撃するが結果は同じだった。
普通なら慌てるが今のシフトは落ち着いていた。
大陸最大のダンジョン『デスホール』で対峙したドラゴンは武器が破壊されて攻撃手段が無くなってしまったが、今回はあの時とは違い武器がある。
シフトは【空間収納】からミスリルの片手剣を取り出した。
万が一の備えとして購入しておいた物だ。
硬度的には鉄や鋼よりも固いので攻撃は通るはずだ。
ミスリルの片手剣を構えると三度目の攻撃をする。
今度の攻撃は効いたのかドラゴンは苦悶の咆哮を上げたのだ。
龍鱗に阻まれて傷はつかないが衝撃までは吸収できず確実にダメージは通っていた。
このまま攻撃していけばいずれ倒せるが時間がかかりすぎる。
仕方ない・・・あれを使うか・・・
≪スキル:★【ずらす】 レベル1:【即死】 【即死】を有効にしますか? はい/いいえ≫
戸惑いながらも≪はい≫と念じる。
≪スキル:★【ずらす】 レベル1:【即死】 【即死】を有効にしました≫
本当は危なっかしいから使いたくないけど今はそれどころじゃないからな・・・
「さて・・・お前には悪いがこの1撃で死んでくれ」
シフトは殺気を剣に纏わせるとドラゴンの脳天に四度目の攻撃が直撃して【即死】が発動する。
攻撃を受けた直後ドラゴンは自身に異変が起きたことに気づく。
最初に襲ったのは酸素をとりこめず呼吸困難に陥っていた。
次に身体が膠着し全身麻痺状態になる。
更に血液循環が止まり心臓が鼓動を停止した。
次々と起こる身体の異変にドラゴンは驚愕し苦しみ藻掻いていた。
最後には死神が現れて首を刎ねる幻覚を見た。
ドラゴンは断末魔の叫びをあげると砂漠の荒野に響き渡りそのまま息を引き取った。
あまりの音量に近くで聞いていたシフトの鼓膜が破けた。
[鑑定石]を取り出してドラゴンを調べると生命力:0と表示された。
「倒せたけど音が聞こえない」
シフトは【空間収納】を発動するとフルポーションを取り出し、代わりにドラゴンの死体とミスリルの片手剣を空間にしまう。
フルポーションを飲むと破れた鼓膜が復元されて耳が聞こえるようになった。
「ふぅ、まさか鼓膜が破けるほどの絶叫を聞くとは思わなかった」
ついでに【即死】攻撃を再び無効にしておく。
「それにしてもドラゴンはなぜ王都中心に現れたんだ?」
考えられる可能性としては、
1.自ら転移して王都にやってきた
2.誰かが召喚した
3.封印から解放された
4.別の場所から転移させられた
どれもありそうだけどおそらくは誰かが召喚したか封印石みたいな物から解放して現れたのだろう。
ここで考えても答えがでるわけでもない。
「それじゃ、王都に戻るとしますか」
シフトは【空間転移】を発動させて王都まで戻った。
王都に戻ると街中では復旧作業がすでに始まっていた。
とりあえず東地区の滝と庭園に移動するとルマたちがすでに戻っていた。
「ただいま」
「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」
「そっちはどうだった?」
「巨大モンスターの討伐が完了しました」
「暗躍者もやっつけた」
ベルは不機嫌そうに答えた。
「ん? ベル、服が変わってるけどどうしたんだい?」
「燃やされた・・・お気に入りだったのに」
ベルは悲しそうな声で呟いた。
シフトはベルを抱きしめると、
「ベル、無事でよかった。 服の替えはあってもベルは1人しかいないから」
「ご主人様~♡」
ベルもシフトに抱きつく。
「ご主人様、今は非常事態です」
「ベルだけでなくわたしも怪我をしたのだが」
「ぼくも」
「わたくしも・・・」
「ユールちゃんは怪我してないじゃん」
「う゛・・・」
名残惜しいがベルから離れる。
「ご主人様、あのドラゴンは・・・」
「とりあえず何とかなった」
「「「「「!!」」」」」
ルマたちはシフトが強いとは解かっていたがドラゴンを倒すとは夢にも思わなかったのだろう。
声を聞きつけたのかギルバートがやってきた。
「シフト君、戻ったんだね」
「ギルドマスター、お疲れ様です」
「それであのドラゴンはどうしたのかな?」
ギルバートは確信した目でシフトを見ていた。
「えーーーと、その・・・」
「誰にも口外しないから教えてほしいな」
「余も興味がある」
そこにグラントまで現れた。
「安心しろ、公式には謎の人物がドラゴンを倒したことにする予定だ」
「はぁ・・・他言無用でお願いしますよ。 実は転移できる魔道具を使ってドラゴンを移動させただけです。 そのあとは時間が来たのか消えてしまいました」
シフトは虚実を織り交ぜてギルバートとグラントに話した。
(今、僕のスキルを全て話すわけにはいかないからな)
「ふむ、本当かのぅ・・・」
「シフト君、陛下の前で嘘をつくと虚偽罪で捕まるよ」
「僕はあくまでも真実を述べているだけです」
あの場にいたのはシフトとドラゴンだけで本当のことはシフトしか知らないのだ。
仮に虚偽罪で捕まえようとするなら両親や勇者たちへの『復讐』は諦めて掛け替えのないルマたちと一緒に隣国に亡命することも考慮していた。
「その転移できる魔道具を見せてもらえないかのぅ」
「それはできない。 あるダンジョンで手に入れたもので悪用されると困るので丁重にお断りします」
「ふむ・・・」
グラントはシフトの言を見定めていた。
次の言葉を紡ごうとしたとき、1人の騎士がグラントの前にやってきた。
「国王陛下! 王都の襲撃者たちの詳細が判明しました」
「なに?! それで首謀者は?」
「はっ!! それが・・・様です」
報告した騎士が言い淀んだために名前が聞き取れなかった。
「すまん、聞こえなかった。 もう一度言ってくれ」
「ピーグス様です!!」
「な?! ピーグスが?!」
グラントはその名前を聞くとありえないといった顔をしていた。
「はっ!! 襲撃者の1人に自白剤を使って白状したので間違いありません」
「そうか・・・わかった。 ピーグスをひっ捕らえろ!!」
「はっ!! 失礼いたします!!」
グラントは額に手を当てると大きなため息をついた。
「あの馬鹿息子が・・・」
「陛下・・・心中お察しします」
「すまないのぅ、今回の件は余の身内の仕出かしたことらしい。 本当に馬鹿なことをしてくれた」
「ああ・・・なんかお邪魔みたいだから僕たちはこれで失礼するよ」
シフトは背中を向けると逃げるようにさっさと歩き出した。
後ろからギルバートとグラントの声が聞こえたがあえて無視するのだった。
ピーグスは王城の自室の中心で椅子に座りワインを片手に寛いでいた。
グラントには3男2女合わせて5人の子がいて、ピーグスは三男で王位継承権は第4位である。
(今頃、父上、義母上たちや他の兄弟姉妹は・・・)
父王であるグラントが今日出かけることを知り、今がチャンスとピーグスは部下に国王暗殺の指示を出したのだ。
巨大モンスターで王都を混乱させて、それに乗じて父王と兄弟姉妹、義母たちを暗殺する。
できなければ王都を危機に陥れた父王を糾弾し隠居できれば御の字だろう。
ピーグスは口角を上げてにやけていると扉がノックされる
『ピーグス王子殿下はおられますか?』
「何用だ?」
『はっ!! 緊急故直接お耳に入れたいことが・・・』
「入れ!」
『失礼します』
部屋付きの侍女が扉を開けるとそこには騎士たちが大量にいた。
騎士たちは無遠慮に入ってくるとピーグス王子殿下を囲んだ。
「貴様ら!! 無礼だぞ!!」
「ピーグス王子殿下!! 国王陛下暗殺の疑いで捕縛します!!!」
「!! 父上を暗殺? 何を根拠に・・・」
「殿下の部下が全て白状しました。 証拠も全て押収済みです。 諦めて縛に就いてください」
「私は何もやっていない!!」
「捕縛しろ」
騎士たちはピーグスを拘束すると鉄製の手枷をはめた。
「なっ!! ふざけるなっ!! 私を誰だと思っているっ!! この国の第三王子ピーグスだぞっ!!!」
「連れていけ」
「こらっ!! 放せっ!! 貴様ら、こんなことしてただで済むと思うなよっ!!! ふぐっ!!」
ピーグスは布で鼻と口を塞がれると急に眠気が襲ってきた。
「?! ・・・ん!! ・・・ん! ・・・ん・・・」
布には催眠効果がある薬品を染みこませていたらしくピーグスは深い眠りについた。
「・・・ん・・・ここは・・・」
ピーグスは目を覚ますとそこは地下牢だった。
何故ここにいるのか意識を失う前の出来事を思い出す。
「!! くそっ!! なんなんだっ!! 王子である私をこんなところに閉じ込めおってっ!!!」
「目が覚めたかのぅ」
ピーグスが怒りを露わにしていると牢の外からグラントが声をかけた。
「!! 父上っ!! これはどういうことですかっ?!」
「ピーグス、そなたの部下から今回の件について全て聞き及んでおる」
「父上っ!! 私は何もやっていませんっ!!」
「あくまでも白を切ると?」
「知らないものは知らないっ!! 今すぐここから出してくださいっ!!」
グラントは右手を軽く上げると1人の男が斧をもってピーグスの牢に入る。
その男は斧を左手に持つと右手でピーグスの腹に拳を打ちつける。
「がっ!!」
ピーグスは堪らず倒れこみうつ伏せになった。
男はピーグスの頭のほうに移動すると右足でピーグスの背中を踏みつけ斧を両手で構えた。
「ち、父上っ?!」
「残念だ、ピーグス。 表向きは『原因不明の病魔に蝕まれ別荘で休養している』と触れを出す」
「冗談・・・ですよね? 父上? ・・・父上っ!!」
「殺れ」
男は斧をピーグスの首の上に刃を置くと大きく振りかぶる。
ピーグスはなんとか逃れようと身体をくねらせるが動く気配すらない。
「くそっ!! ・・・やめろ・・・やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!」
男は斧を振り下ろした。
そしてピーグスは物言わぬ躯とかした。
「・・・馬鹿者が・・・」
グラントはピーグスを見るとその場で欷泣した。




