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46.密会

「あれ? ギルドマスター? どうして王都にいるんですか?」

「Sランク冒険者として、国王陛下へ報告に来たんだよ。 シフト君たちは?」

「僕たちはここには観光にきました」

「あ、なるほどね・・・もしよければ相席いいかな?」

ギルバートに皆が注目していた。

それはそうだろう・・・この王都でギルバートを知らない人を探すほうが難しいくらいだ。

席に案内するウェイトレスもどうしようと迷っていた。

「どうぞ」

「失礼するよ。 あ、僕は日替わりケーキセットをお願いするよ」

「え、あ、は、はい! 畏まりました!! ご主人様!!!」

ウェイトレスは慌ててカーテシーをして厨房に向かった。

「突然声かけてごめんね」

ギルバートはシフトに頭を下げる。

「いえ、気にしてませんので」

「ところで観光と言ってたけどいろいろ回ったのかい?」

「昨日王都についたばかりで今日は北通りの商店街でショッピングです」

「なるほどね、なら明日時間あるかな? 東門側の滝と庭園がとても綺麗でね。 できればエスコートさせてほしい」

ギルバートからの申し出にどう答えるか迷った。

「みんな、どうする?」

「ギルバート様なら私たちよりも詳しいですし適任では?」

ルマが代表して答えるとベルたちも頷いた。

「・・・わかりました。 お言葉に甘えます」

「良かった。 断られたらどうしようかと思ったよ」

ギルバートは胸を撫で下ろす。

そして、しばらくの間お互いの近況報告をしていた。

もちろんザール辺境伯に関しては誤魔化した。

「今日は楽しかったよ。 明日、そうだな・・・日がある程度出たころに貴族街と平民街の境にある門のところに集合でいいかな?」

「はい、それで構いませんよ」

「わかった。 それじゃ明日また会おう」

「いってらっしゃいませ、ご主人様」

ギルバートは席を立つと7人分のお金を置いて店を出て行った。






王城・謁見の間にて。

扉を開けて門兵を担当している騎士の1人が入ってくると玉座の10メートル手前で立ち止まり膝をつき、最敬礼をする。

「報告します。 国王陛下、ギルバート様がお見えになられました」

「ギルバートが? 通せ」

「はっ!!」

騎士は立ち上がると扉に向かい出ていく。

10秒後に再び扉が開きギルバートが入ってくると先ほどの騎士がいた位置までくると立ち止まり膝をつき、最敬礼をする。

「国王陛下、ご多忙のところ時間を割いていただき誠にありがとうございます」

「ふむ」

国王陛下は右手を軽く上げると騎士たちが謁見の間から退室した。

「人払い感謝します」

「よい、それで今日は何用か?」

「はっ! 昨日の件ですが明日東門側の滝と庭園の観光をエスコートすることになりました。 国王陛下のご都合に問題はありませんか?」

「ここ数日なら問題ない。 しかし昨日の今日でよく約束にこぎつけたのぅ」

「本人たちに直接聞いたら王都には観光に来たと言っておりました」

「なるほど、観光か・・・わかった。 ご苦労であった。 伝令!!」

国王陛下の言葉に扉の外の兵が急ぎ入ってきてギルバートの位置までくると膝をつき、最敬礼をする。

「明日勤務予定の国王直属聖騎士団、王宮魔導師団および第二騎士団、第二魔法兵団の団員と観光庁の文官たちを至急招集しろ」

「はっ!!」

伝令を受けた騎士は扉を出て各団と観光庁の文官たちに報告しに行った。

10分後、謁見の間に国王直属聖騎士団、王宮魔導師団、第二騎士団、第二魔法兵団の団員と観光庁の文官たちが招集された。

「皆疲れているところ申し訳ない。 明日だが急遽東門側の滝と庭園に行くことになった!」

「「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」」

「各騎士団および魔法兵団は一般人及び冒険者を装い護衛任務! 冒険者を装ったもののみ帯剣を許可する!!」

「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」

「観光庁の文官たちは観光関連に至急連絡し明日1日は一般客を入れないよう手配しろ! ただし、そこにいるギルバートとその連れは入場を許可するように!!」

「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」

「以上だ!! 下がれ!!!」

ギルバート以外全員謁見の間から退室した。

「それでは明日は頼むぞ」

「はっ!!」

ギルバートは国王陛下に最敬礼をすると謁見の間から退室した。

「さて、どうなるかのぅ」

国王陛下は玉座に座り空を見上げるのだった。






王都滞在3日目───。

シフトたちは貴族街と平民街の境にある門に行くとそこにはギルバートが既にいた。

「遅くなりました」

「いや、気にしないで。 それじゃ案内するよ」

ギルバートはシフトたちを連れて東門へ移動した。

「ここがこの国で一番の滝だよ」

滝を見ると勢いよく水が落下し、川を流れていく。

途中水上に建設された東屋が滝や川をより神秘的に見せていた。

「はぁ・・・」

「うわぁぁぁぁぁ」

「・・・すごい・・・」

「・・・壮観だね・・・」

「スケールが大きいね」

「・・・」

シフトたちはあまりの絶景に目を奪われた。

とても人工的に作った滝とは誰も思わないだろう。

観光地で取り上げられるだけあり周りでは女性たちが滝を指さしては興奮していた。

「?」

シフトはこの光景に違和感を感じた。

どう説明すればいいのかわからないがとにかくおかしいのだ。

「ご主人様、どうしたの?」

フェイが声をかけてくる。

「いやなんでもない。 (気をつけろ、何かがおかしい)」

「変なご主人様。 (了解)」

シフトとフェイは聞こえないくらいの声で話した。

「シフト君、フェイ君、どうしたんだい?」

「ギルドマスター・・・あまりにも美しい光景に言葉が浮かばなかったもので」

「そうそう、ぼくもこんな絶景は初めて見たから驚いちゃってね」

「はは、そういってもらえると案内したかいがあったよ」

ギルバートは気分を良くしたのかこの後もいろいろとこの滝と庭園の見所を案内してくれた。


空を見上げれば太陽は真上まで昇っていた。

「ギルドマスター、そろそろお昼にしませんか?」

「そうだね、とっておきの良い店があるんだ。 その店に行かないか?」

「じゃぁ、そこにしようか」

ギルバートに連れられてきたのはオープンカフェレストランで回りを薔薇が美しく咲き誇っていた。

「綺麗」

「うん」

「ここで食事とか贅沢だな」

「大人の雰囲気をバンバン感じるね」

「見惚れてしまいますわ」

ルマたちが店内外の美しさに唖然としていた。

(やはりな・・・)

この店にいる客も違和感を感じたのだ。

(ギルドマスターが手を出さないということはそういうことか・・・)

シフトの中では誰かとギルドマスターはグルで今日ここに呼んだ・・・いや呼び出されたのだ。

(誰が・・・そんなのは決まっている! こんな手の込んだ招待状見たことない!)

「シフト君、あそこのテラス側の中央の席が丁度空いてる。 あの席にしよう」

ギルバートが歩き出そうとしたとき、

「いや、この店はやめましょう。 ギルドマスター、違う店に行きましょう」

「え? 何を言ってるんだい?」

ギルバートが不思議そうな顔をしてシフトを見たのだ。

いや、ギルバートだけでなくルマたちも見ていた。

気づいていないのかこの店にいる客もシフトを見ていたのだ。

そしていつの間にか喧噪な雰囲気が一変静寂に包まれた。

「だから、この店はやめてほかの店へ行きましょう」

「この店の料理は凄く美味しいんだよ。 味は僕が保証する」

「なら、ギルドマスター1人で食事を堪能してください。 僕たちは別の店に行きますから。 みんな行こう」

シフトはルマたちを催促して外に出ようとすると、

「・・・今出て行かれては困るんだがのぅ・・・」

店の奥から初老のスーツ姿の男性とその後ろに娘らしき人物が現れた。

「君たちが席に着いたら現れようと思ったんだがな・・・どこで気づいたのかこの老いぼれに教えてくれないか?」

「最初から全部。 ギルドマスターが観光案内を申し出たところやこの園内に1人も一般人がいないことも全てだ」

「え、そうだったんですか?」

「わからなかった」

「気づきませんでしたわ」

シフトの発言にルマ、ベル、ユールの3人は驚いた。

「彼女たちの手を見ればわかる。 あれは剣を何度も振ってできた剣だこだ」

「たしかに園内にいる女性が一般のそれとは違うのを感じたけど・・・」

「ぼくも感じてはいたけどまさか全員だとは思わなかった」

ローザとフェイはまさか全員が一般人ではないことに驚いた。

シフトは店のテラス側の中央にある空いている席を指さす。

「だいたいこんなに女性客がいるのに店の一番良い席がなんでガラ空きなんだ? 違和感しかないんだけど」

「・・・」

「ギルドマスターほどの人を使い走りにし、こんな回りくどい手の込んだ悪戯みたいな招待状ができる人物・・・それはこの国の国王その人だ」

「「「「「こ、国王!!」」」」」

ルマたちは初老の男性を見て驚いた声を上げた。

「国王その人が態々来るんだ・・・普通なら貸し切り状態が当たり前。 一般客なんて入れるわけないだろう」

シフトの答えに初老の男性・・・国王が愉快そうに笑いだした。

「ふ・・・ふふふ・・・ははははは・・・まさかこんなにも簡単に見破られるとは思ってもみなかった」

「満足したか? それなら僕たちはこれで失礼するよ」

「まぁ、待て。 まずはこんな幼稚な芝居に付き合わせたことを詫びよう。 本音を言えばそなたと話をしたかったのだ」

「その話も気に入らなければここにいるあなたの部下たちが一斉に襲いかかって僕たちの首を取る手筈なんだろう?」

「信じてはもらえぬか・・・」

国王は右手を軽く上げるとギルバート以外の客を装った騎士と魔法士たちが全て退店した。

「?! どういうことだ?」

「話し合いをしたいといったであろう? 余の名はグラント・クラム・ガイアール。 このガイアール王国の国王だ」

「シフトだ。 彼女たちはルマ、ベル、ローザ、フェイ、ユール」

シフトが紹介するとルマたちも国王に礼をする。

「話し合いの前に紹介したい者がいる」

グラントの後ろにいた娘が前に出るとベルが苦い顔をした。

「マーリィア・クラム・ガイアールと申します。 ベル様、ローザ様、フェイ様、昨日は助けていただきありがとうございます」

シフトたちに向けてカーテシーをするマーリィア。

「ベル様、今日は改めてお礼を・・・」

「一昨日いらないと言った」

「ベル様、私はあなたに命を救われたのです!」

「諄い」

「話を・・・話を聞いてください!!」

「ベルにはない」

マーリィアが勇気を出してベルに何とか歩み寄ろうと話しかけ続けるもそれを全て拒否する。

何時しかマーリィアの目には涙が溢れ頬を伝っていた。

「どう・・・して・・・私は・・・私はただ・・・ただお礼を伝えたいだけなのにっ!!!!!」

「・・・」

マーリィアはついにその場に座り込み両手で顔を隠して泣き出してしまった。

「ベル嬢、なぜそれほどまでに貴族を憎むのか」

「あなたには関係ない」

「ギャンザー伯爵」

「!!」

「どうやら原因はそれらしいのぅ」

「・・・」

ベルはグラントを無言で睨みつけるがそれを真っ向から受け止めいている。

「この国のことは大体余の耳に入ってくる。 そなたがどういう扱いを受けたのかも調べさせてわかっている」

「ベルはそんな人は知らない。 今のベルにはご主人様、ルマ、ローザ、フェイ、ユールがいる。 ただそれだけで幸せ」

「・・・そういうことにしておこう」

グラントはマーリィアの前にしゃがみこむと頭を撫でてやることしかできなかった。

落ち着いたマーリィアをギルバートが外へと移動させた。

今この場にはシフトたちとグラントしかいない。

「さて、シフト。 余はそなたと話がしたい」

「個人的にはないのですが?」

「そうつれないことは言わないでくれ。 余とて人の子。 傷ついてしまう」

「はぁ・・・それでこんな芝居までして何が目的ですか?」

シフトはとりあえず本題を聞くことにした。

「ザール辺境伯は知っておるか?」

「ザール辺境伯? ああ、知っていますがそれが何か?」

「6ヵ月前、自領であるヘルザード辺境伯領で殺されたそうだ」

「それで?」

「そなたらは何処にいたのか教えてくれぬか?」

「それならヘルザード辺境伯領にいましたけど? あそこで1ヵ月ほど魔物討伐に明け暮れていましたから」

「・・・なるほどのぅ」

グラントは自分の中で答えを見出したらしい。

「質問はそれだけですか?」

「彼女たちは奴隷みたいだがなぜ買ったのか?」

「それは僕の目的のため」

「目的? 目的とは何かな?」

「教えられない」

「後ろめたいことなのか?」

「どのような解釈をしてもらっても構わない」

それ以上の質問は無意味と悟ったグラントは最後の質問をする。

「最後の質問だがその強さをどこで手に入れたのか教えてほしい」

「この世の地獄で手に入れた」

「地獄? どこだね?」

「自分で探せばいい」

シフトは答えると背中を向けた。

それ以上は答える義理も義務もないという意思表示だ。

「長々と済まんかったのぅ」

「まったく、本当迷惑だ・・・ん?」

窓の外を見ると突然巨大なモンスターが見えた。

「僕からも聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「余に聞きたいこと? 答えられる範囲なら構わんが」

「なら聞くが・・・」

シフトは窓の外を指して尋ねる。

「僕が危険と判断したらあのモンスターを嗾けるつもりだったのか?」

「あのモンスター?」

グラントはシフトが指さしたほうを見る。

「な、なんだ! あれは!!」

「た、大変です!! 陛下!! 王都の至る所で謎の巨大モンスターが出現しました!!!」

その日王都中で謎の巨大モンスターが発生した。


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