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2.スキル授与

5年後───

愛情の欠片すら与えられないで育った赤子も無事とは言い難いが死なずに成長した。

髪の毛はボサボサで前髪が目を覆い隠し、背は低く、栄養が行き届いていないのかガリガリに痩せていた。

「はぁ、長かった。 本当に長かったぜ。 よく5年間我慢できたよなぁ」

「これで結果が伴えばいいんだけどねぇ・・・」

本来は満5歳になったときにスキルを与えられる。

王侯貴族では[鑑定石]があるため、すぐにスキルがわかるが一般のそれも田舎では[鑑定石]はない。

[鑑定石]はレアアイテムであり、その管理は国が行っているからだ。

王都や町なら年齢に達しさえすればいつでも聖教会で鑑定できる。

が、地方の村は年に4回聖教会から派遣される神父が[鑑定石]を持って村々を回るのが通例である。

国歴1845年、季節は紅葉から葉落ちる時期。

町から年老いた神父がネルス村にやってきた。

神父は教会の中に入り、代わりに熟年のシスターが外を出て大声で村人たちに呼びかけた。

「これよりスキル鑑定の儀を執り行います! 今年5歳になった子供たちは今すぐ教会に集まってください!!」

神父の到来に両親は今までにないくらい明るい声をあげた。

「やっと来たのかよ。 待ちくたびれたぜ」

「本当長かったわ」

彼らは善は急げと少年を連れて教会に向かうのだった。

教会には5歳になった子供とその親たちが今か今かと待っていた。

両親は少年を見た。

「いいか!! 絶対に良いスキルを引き当てるんだぞ!! わかったなあ!!!」

「そうよ! この日のために育てたのよ! あたしの努力を無駄にしないでちょうだい!!」

しばらくたつと[鑑定石]を持った神父と先ほどのシスターが壇上にあがった。

「それではスキル鑑定の儀を始めたいと思います。 一番先頭の子から壇上にあがってください」

先頭の子供が親と付き添って壇上にあがり、神父は子供に名を聞いた。

「少年、名前は?」

「僕の名前はアルスです」

「そうかアルス君というのか、良い名前だ。 ではアルス君、[鑑定石]に手で触れてごらん」

子供が[鑑定石]に触れると銀色に輝きだした。

そして[鑑定石]には少年のスキルが映し出された。

この村では読み書きができるのは教会関係者だけなので神父がスキル名を皆に伝える。

「ふむ、アルス君のスキルは【土術師】だ」

「【土術師】?」

不思議に思った子供が聞き返すと控えていたシスターが優しく教えてくれた。

「【土術師】とは土の耕作や、土魔法に長けた能力のことよ」

「具体的には?」

子供はわからないような顔をしたので代わりに親が尋ねると丁寧に教えてくれた。

「農作業なんかは適しているし、冒険者なら防御魔法を駆使して守りの要になる力を持っているわ」

「・・・なるほど」

「わからないことがあれば鑑定の儀の後にでも聞きに来てください」

「わかりました。 ありがとうございます。 神父様、シスター」

親子は頭を下げるとこれからどうするのか話しながら後ろの座席に移動した。

「では、次の方どうぞ」

それから何組かの親子が鑑定を行った。

子供によっては銀色や銅色に輝いて、その都度皆にスキルを伝えていた。

ついに少年の番が回ってきた。

「では、次の方どうぞ」

「おう、いくぞ」

少年は両親に連れられて壇上にあがると神父が名を聞いてきた。

「少年、名前は?」

「?」

「ん? どうしたのかね?」

不思議そうな少年に疑問を感じた神父は彼の両親に聞いてみた。

「この子の名前は?」

「名前? 何だったっけ?」

「さぁ? そういえば決めてなかったわね」

「な・・・」

神父は絶句した。

本来両親から名を与えるのが一般である。

王侯貴族であれば両親ではなく当主が命名したり、何代か前の当主の名をつけるところもあるだろう。

だが、彼らは少年が金になること以外まったく考えていなかった。

「そんなのいいからさっさと鑑定しろよ!」

「そうよ、名前なんてどうでもいいでしょ!」

「名前がなければスキルを授与できんぞ」

神父の一言に彼らは、

「めんどくせえなぁ・・・まったく、迷惑かけやがって!」

「本当、あたしらにどんだけ迷惑をかけるつもりよ!」

教会内のど真ん中で自分の息子に対して堂々と罵詈雑言を言い放つ。

神父やシスターだけでなくこの場の全員が呆れていた。

「んん・・・とりあえず適当につけとけばいいか?」

「名前つけてもどうせすぐ忘れるだろうけど・・・なんにする?」

「・・・じゃあ、『シフト』でいっか?」

「いいんじゃない? それじゃあ今日からあんたは『シフト』ね」

「おい、神父。 名前つけてやったぞ。 さっさと鑑定しろ!」

神父は真顔で彼らに文句を言った。

「お、お前たちは子供をなんだと思ってるんじゃ?!」

「んなもん、どうでもいいだろが!! さっさとしろ!!!」

「そうよ、さっさとしなさい!!」

彼らに何を言っても無駄だと悟った神父が少年に問いかけた。

「・・・少年よ、本当にこれでよいのか?」

「・・・」

神父の顔を見ながら少年は黙って首を縦に振った。

「そうか・・・ならシフト君、[鑑定石]に手で触れてごらん」

「最初からやりゃあいいんだよ!! ほら、さっさとしろ!!!」

「鈍間ね!!」

シフトは[鑑定石]に触れると今までは銀色や銅色だったのが()()に輝きだした。

「な、なんじゃこれは!!!」

()()?! 見たことないわ!!!」

「お、こいつは期待できるなぁ!!」

「やってくれたんじゃない?!」

[鑑定石]にはシフトのスキルが映し出された。

「【ずらす】? 初めて見るスキル名だのぉ・・・」

「あたしも長年鑑定の儀を見てきましたが金銀銅以外のは初めてですよ」

神父とシスターの話を聞いた彼らはというと、

「! ふ、ふふふ、はっはっは、やった! やりやがったぜ!! これで俺たちの将来は安泰だ!!!」

「これであたしたち大金持ちになれるわ!!」

彼らの頭の中にはシフト=金になっていた。

そんな彼らをおいといてシフトは神父に問いかける。

「神父様、僕のスキルってなんですか?」

「・・・えっと・・・君のスキルは【ずらす】というスキル名でのぉ・・・詳細はわしにも解らんのじゃ・・・」

「ごめんね、シフト君。 わたしも解らないスキルだわ」

「君のスキルだけど、一応上に報告させてもらうよ・・・」

「王宮の書庫を探せば解るスキルかもしれませんものね・・・」

「そうじゃな・・・陛下にも報告しとくか・・・」

神父とシスターはシフトの問いに申し訳なさそうに頭を下げた。

「これで銀以下ならぶっ殺そうと思っていたけど、よくやったぞ!!」

「本当、5年間の努力が報われたわ!!」

彼らは上機嫌にシフトを連れて後ろの座席に移動した。

その直後、彼らに声がかけられた。


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