387.古代文明の破壊兵器 〔無双劇79〕
地下90階より下は想像以上に複雑な構造になっており、1日に1階下りるのが限界だ。
ここまでシフトたちは多くのオリハルコンでできた金属魔物や金属魔獣を倒して進んできた。
ダンジョン36日目───
シフトたちは地下99階へと到達する。
今までの階層と違いとても大きな空間が広がっていた。
「うわぁ・・・迷路の階層より厄介だなぁ・・・」
「何かいる」
ベルとフェイの言う通り、この手の巨大な空間だと迷宮の主が現れても不思議ではない。
シフトたちはまっすぐ歩いて進む。
5キロくらい歩いたところで以前地上で見かけた全身金属でできた蜘蛛がいた。
「あれは!」
「地上で見た」
「オリハルコンでできた蜘蛛」
蜘蛛ロボットはシフトたちの気配を感じて目を開ける。
シフトを見るなり蜘蛛ロボットは1000匹に分裂した。
「この能力は!」
蜘蛛ロボットはキウンが所持していた【一騎当千】を発動する。
最悪なことに地上に放出された蜘蛛ロボット999匹は全滅していた。
「これがいるということは近くにレザクもいるはずだ」
シフトは周りを見渡すがそれらしい人物が見つからない。
そこにベルが話しかけてくる。
「ご主人様、あの蜘蛛ロボットの名前『レザク』って表示されてる」
「え?」
シフトは素早く自分が持っている[鑑定石]で蜘蛛ロボットを調べる。
名前のところにはたしかに『レザク』と表示されていた。
今になって蜘蛛ロボットがレザクであることにようやく気付いたのだ。
そして、蜘蛛ロボットの金属ボディに地上で見た【空間魔法】と【重力魔法】からキウン、メタム、スパッジャ、グラッビィの魂も含まれていることにも今更気付く。
「厄介な・・・」
シフトはすぐに【次元遮断】を発動して半径2キロを外界から隔離した。
もし、蜘蛛ロボットを1匹でも逃がせば同じことを繰り返される。
ここで絶対に逃がさないというシフトの意志が込められていた。
「みんな、ここで蜘蛛ロボット・・・レザクを1000匹絶対に倒すよ!」
「「「「「はい、ご主人様!!」」」」」
ここできっちり1000匹倒して後顧の憂いを断つ。
シフトたちはオリハルコンの武器を鞘から抜いてそれぞれ構える。
先手を打ったのはルマだ。
ルマは【氷魔法】で見える範囲のレザクたちを氷漬けにした。
呆気なくこれで終わりかに見えたが、氷の中にいるレザクたちの姿が次々と消えていく。
レザクたちは【空間魔法】を発動してシフトたちの周りに次々と転移してくる。
「この程度では足止めにすらならないですか・・・」
ルマは無傷で現れたレザクたちを見て次の対策をすぐに考える。
その間にシフトは【空間収納】を発動して銅や鉄、鋼を大量に取り出し、【念動力】でマシンガンのようにそれらをレザクたちに飛ばす。
同じオリハルコンでできた金属魔物や金属魔獣にも有効だったこの戦法はレザクたちにも効いていた。
弾丸よりも速いスピードでぶつけることでレザクたちの金属ボディを次々に削っていく。
最後には金属ボディが維持できずに崩壊した。
シフトの攻撃を回避したレザクたちだが、ベルたちがオリハルコンの武器を手にそれぞれ対応している。
蜘蛛の関節部分である基節、転節、膝節を破壊することでバランスを崩し、その隙をついて頭やボディに1撃を与えた。
このままやられっぱなしで終わらないとレザクたちも負けじと反撃に出る。
光弾を放ってシフトたちを攻撃してきたのだ。
シフトたちはすぐにその場を離れて光弾の直撃を避ける。
尚も追撃しようと光弾を放ったその時、砂塵がレザクたちを襲い光弾がその場で爆発した。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
自らの光弾に耐え切れず何匹ものレザクが爆散していく。
実はこの砂塵はルマの【砂魔法】による攻撃だ。
砂塵で視界を遮るだけのはずだったが、レザクたちの削られた金属ボディの欠片も巻き込まれた。
これにより光弾がオリハルコンの欠片にぶつかりその場で爆発を起こしたのだ。
発射口で爆発したため、金属ボディが耐えきれなくなり結果ほぼ自爆に近いような爆散へと繋がった。
シフトたちの攻撃により約半数のレザクたちが倒される。
そもそもこの戦いはシフトたちのほうが圧倒的に有利である。
理由としては蜘蛛ロボットの戦いを1度経験しているシフトたちに対して、分裂体の情報が入ってこないために初めての戦いを強いられるレザクたち。
もし、レザクが先に地上へ放った分裂体と情報を共有できていたら結果は違っていただろう。
レザクたちはこのままでは負けると本能で悟ったのか【空間魔法】と【重力魔法】を併用して攻撃してきた。
シフトはともかく今までのルマたちでは対処に困難していただろう。
だが、能力が限界まで上がった今なら自力で対処が可能だ。
転移されたら空気の流れを読み、多少の加重なら簡単に耐えられる。
シフトたちにとってレザクたちに対応するのは簡単だ。
逆にレザクたちは思考がなくなったことによりシフトたちの攻撃に対応できていない。
攻撃のバリエーションもシフトたちが多彩なのに対してレザクたちは単調なのだ。
武器も同じ強度のオリハルコン、シフトたちが繊細な攻撃に対してレザクたちは闇雲に攻撃するだけ。
これでは勝てる戦いも勝てないというものだ。
そして、戦いはシフトたちの一方的な攻撃が続いた。
残り3匹のレザクたちにシフトたちは一斉に止めを刺す。
「これで終わりだ!!」
シフトたちはレザクたちを同時に破壊した。
これにより【一騎当千】を発動することもできず、今度こそレザクたちは沈黙したのである。
シフトたちは倒したレザクたちの金属ボディを1ヵ所に集めた。
「みんな、レザクたちの生き残りがいないかこれから[鑑定石]を使って調査する。 チーム分けは僕とユール、ルマとローザ、ベルとフェイの3チームだ。 ベルとフェイはここに集められた金属ボディを、残りは結界内を調べるよ」
「「「「「畏まりました、ご主人様!!」」」」」
「それじゃ、行動開始」
シフトたちはそれぞれ分散してレザクたちの生き残りがいないか確認を始める。
どのように確認しようかと話し合った結果、外周から内周に向けてはシフトとユールが、逆に内周から外周に向けてはルマとローザが調べることになった。
シフトはユールを連れて結界の一番外側まで歩いていく。
「ユール、レザクたちの金属片を見つけたらすぐに[鑑定石]で調べること」
「畏まりました、ご主人様」
それからシフトとユールは外周を回り始めた。
調べること2時間、外周を回っていたシフト、ユールは内周を回っていたルマ、ローザと合流する。
「ルマ、ローザ、そちらにレザクたちの生き残りはいたか?」
「ご主人様、こちらはいませんでした」
「一応警戒していたが襲ってくる気配もなかったな」
「そうか、あとはベルとフェイのところにいるかだな」
ベルとフェイのところにシフトたちは戻った。
「ただいま、ベル、フェイ、レザクたちの生き残りはいたか?」
「生き残りはいない」
「ちゃんと全滅しているよ」
ベルとフェイが足元を指さす。
そこには砕かれた黒い球が大量に置かれていた。
その数1000個、レザクの1000匹とぴったり一致する。
「どうやらレザクを全滅させるのに成功したようだな」
「これで地上にこの蜘蛛が出てくることはもうないでしょう」
「そうだな。 これはこのまま放置せずに回収しておくか・・・」
シフトは【空間収納】を発動して黒い球とオリハルコン、あとはシフトが飛ばした金属をすべて回収した。
「これでよし。 あとはこのフロアをもう少し調べよう」
「「「「「はい、ご主人様!!」」」」」
シフトは結界を解除するとルマたちを引き連れて再び歩き出した。




