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386.金属でできた魔物たち 〔無双劇78〕

ダンジョン27日目───

シフトたちは地下90階へと到達する。

この階層にくるまで迷路のような複雑な道を進みつつ、ドラゴンを始めとした魔物や魔獣たちと戦い、さらにより巧妙に仕組まれた罠を掻い潜りながらここまでやってきた。

シフトの空間には今までの階層で倒したドラゴンを始めとした魔物や魔獣たちの死体や戦利品の数々が収まっている。

「ついに地下90階かぁ・・・」

「終わらない?」

「あとどれくらい潜ればいいのやら・・・」

「地上が恋しくなってきましたわ」

「同感ね」

長時間ダンジョンに潜っていたせいか、ルマたちは少しずつ地上を恋しく思っていた。

「みんな、辛いか? もし、辛いなら探索は打ち切って地上に戻るけど?」

シフトとしてはライサンダーたちやレザクを探して決着をつけるよりも、ルマたちのほうがよっぽど大事である。

「いえ、大丈夫です」

「ベルも平気」

「この程度どうと言うことはない」

「まだまだいけるよ」

「この通り元気ですわ」

「無理しなくてもいい。 僕はみんなに何かあるほうが辛いんだから」

シフトの思わず出た本音にルマたちは自分たちの弱さを恥じる。

「ご主人様・・・私たちは本当に大丈夫です。 それよりも先へ行きましょう」

ルマの言葉にベルたちも首を縦に振る。

「わかった。 だけど、無理だと判断したら地上に戻るから」

「畏まりました」

「それじゃ、先に進もう」

シフトたちは下り階段を探しているとほかの階層と違い違和感を感じる。

最初に気付いたのはフェイだった。

「ご主人様、このフロア変じゃない?」

「フェイ、何が変なんだ?」

「魔物や魔獣たちが1匹も出てこないよ」

フェイの指摘を聞いたシフトたちは周りを見る。

この階層に下りてから魔物や魔獣たちと戦った記憶がない。

「ここが最深部なのか?」

「とてもそんな感じがしない」

「とりあえず下り階段を探そう」

シフトたちは下り階段を探して歩いているとフェイが地面に何か光っているものを見つけた。

「ねぇ、あそこに光っているのなんだろう?」

「[鑑定石]で調べてみるか」

隣にいたローザが[鑑定石]で調べる。

「なっ?! ゴブリンキングの魔石?!」

「なんだって?!」

シフトたちは周囲を警戒しつつ魔石のところまで歩いていく。

フェイが魔石を拾い上げる。

「この魔石・・・本物だ」

「わたしたちとは違う誰かがここでゴブリンキングを倒したということか?」

「こんな深い階層まで来て倒す?」

「ゴブリンキングを倒すほどの何かがここにいるってことではないでしょうか?」

「ご主人様、どう思われますか?」

「・・・憶測だけど僕たちと魔物や魔獣たち以外の第三者がこの階層にいる可能性はある」

ルマたちもそれは考えたが、別の疑問が生まれる。

「仮に第三者だとしてなぜ魔石を回収しないのでしょう?」

ゴブリンキングを倒したのになぜ魔石を回収しないのか気になっている。

「可能性としては3つ考えられる。 1つ目は持てる限界を超えてしまい魔石を持っていくのを諦めた。 2つ目は持っていくだけの価値がなかった。 3つ目はただゴブリンキングを倒したかっただけ」

「たしかにどれも理に適ってます」

「どちらかというとゴブリンキングの魔石がここにあるということは、この近くにゴブリンキングを倒した何かがいるということだ」

シフトの言葉にフェイが周りを注意深く確認する。

魔物や魔獣たちの気配は感じない。

しかし、風の流れから何かがいるのを察知した。

「ご主人様、ぼくたちが進もうとしているほうに何かいる」

「敵か?」

シフトの質問にフェイが首を横に振る。

「わからない。 この距離だと相手が何かまでは・・・少なくとも生物じゃない。 ただ、このまま進めば確実にその何かと接触するよ」

「ご主人様、どうされますか?」

これからの行動についてルマが質問してくる。

「その前に確認したいことがある。 フェイ、この先に下り階段はありそうか?」

「ご主人様、申し訳ございません。 このフロアが広すぎるのでどこに下り階段があるかまではわかりません」

「そうか・・・すまない・・・」

フェイが下り階段を見つけていないということは、この先に下り階段があるかもしれない。

「とりあえずこの先に行ってみよう。 みんな、敵が何者かわからない以上気を付けて進むぞ」

「「「「「はい、ご主人様!!」」」」」

シフトたちは周辺を警戒しつつフェイが感知した何かのほうへと歩いていく。

進むにつれて地面には魔石がいくつも落ちており、先に進むほどより多くの魔石が見つかった。

「ご主人様、この先に魔物の気配がする」

魔石を回収しつつ進むとフェイが魔物の気配を察知する。

『ギエエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーッ!!!!!!!』

それと同時に近くから魔物の咆哮が聞こえてきた。

「?!」

フェイが何かを察したのか驚いた顔をしている。

「フェイ、どうした?」

「魔物の気配が消えました」

「「「「「!!」」」」」

シフトたちはフェイが見ているほうを警戒した。

しばらく待つが誰も来ない。

「ここから先は警戒しつつ先に進むぞ。 フェイ、頼む」

「任せてよ」

フェイの案内で魔物の気配が消えたところまでやってくる。

そこでシフトたちは目の前の光景に驚いた。

その場にいたのは全身金属でできた魔物や魔獣たちだ。

金属魔物は剣、槍、斧、鎌、鎚、棍、棒、杖、爪、牙、籠手など色々な武器を手に持っている。

足元には大量の魔石が散らばっていた。

「・・・どうりで気配を感じないわけだね」

フェイが金属魔物や金属魔獣を見て呟いた。

普通の魔物や魔獣と違い気配もなければ呼吸もしていない。

ただ冷たい金属に仮初の生命を与えただけの存在だ。

フェイの【斥候】に引っかからないわけである。

「あの金属・・・オリハルコンでできた魔物か・・・」

金属魔物や金属魔獣たちはシフトたちを見て戦闘態勢をとると同時に動き出す。

その身体が金属でできているとは思えないほどの移動速度だ。

「みんな、くるぞ!!」

シフトの一言でルマたちも龍鱗の武器を抜くとすぐに動き出した。

ベル、ローザ、フェイは難なく撃破していくが、ルマとユールは龍鱗のナイフでは傷をつけることはできても致命傷には至らない。

「硬いわね」

「龍鱗のナイフでは倒すのに時間がかかりますわね」

ルマとユールは龍鱗のナイフを鞘に納めるとマジックバックからローザ特性のオリハルコンのナイフを取り出す。

「これなら!」

「どうかしら!」

ルマとユールはそれぞれオリハルコンのナイフで金属魔物を攻撃する。

同じ金属ならより威力があり洗練されたほうが勝つ。

この場合、ローザが鍛え上げたオリハルコンのナイフを持つルマとユールに軍配が上がった。

ルマとユールはそのあともオリハルコンのナイフで確実に金属魔物たちを1匹ずつ倒していく。

シフトはというと、【空間収納】を発動して銅や鉄、鋼を大量に取り出し、【念動力】でマシンガンのようにそれらを金属魔物や金属魔獣たちに飛ばす。

本来なら金属の強度で明らかに劣るが、弾丸よりも速いスピードでぶつけているため直撃した際の破壊力が凄まじい。

シフトの射線上にいる金属魔物や金属魔獣たちは成すすべもなく破壊されて金属片がそこら中に飛び散った。

このままでは全滅すると判断したのか金属魔物や金属魔獣たちは射線上から離れてシフトを攻撃する。

龍鱗のナイフを構えると襲ってきた金属魔物や金属魔獣たちを一刀のもと斬り伏せた。


それから30分が経った頃、シフトたちを襲った金属魔物や金属魔獣たちは全滅した。

「みんな、ご苦労。 怪我はないか?」

「私たちに怪我はありません」

シフトの質問にルマが代表して答える。

金属魔物や金属魔獣たちの残骸を見た。

「どうやらこのオリハルコンの魔物や魔獣たちは誰かによって生み出されたのだろう」

「これを生み出したということは・・・」

「ああ、この先にレザクがいるのは間違いない」

【金属魔法】を使うレザクならば金属魔物や金属魔獣たちを作り出して守りを固めることくらいするだろう。

「もしかするとライサンダーたちも一緒にいるかもしれないな」

シフトとしてはライサンダーたちがいるなら今度こそ倒してこの縁を断ちたいと切望する。

「とりあえず戦利品は回収するとして・・・」

ルマとユールが持っているオリハルコンのナイフを見て、これからの階層では先ほどの金属魔物や金属魔獣たちが立ち塞がると判断した。

「これからは龍鱗の武器では問題ありそうだな。 今の武器では難しいと判断したら、ルマやユールみたいにすぐにオリハルコンの武器に切り替えること」

「「「「「はい、ご主人様!!」」」」」

シフトは空間にオリハルコンや魔石などの戦利品を回収した。

それからフェイの【斥候】により下り階段を見つける。

「とりあえずまだ下の階層があるようだ。 みんな、気を引き締めていこう」

「「「「「はい、ご主人様!!」」」」」

シフトたちは階段を下りて次の階へと向かった。


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